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転生魔王の英雄物語  作者: 陽山純樹
第四章

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魔物の技術

 俺達の進路を妨害する敵と戦い始めた矢先、その能力を明確に理解するのだが……まあそれなりといったところ。確かに騎士や兵士が相手をするには荷が重い存在であることは確かなのだが、俺やメリス、チェルシーからすれば如何ほどのものでもない。


「楽勝、というわけではないが」


 と、チェルシーは剣を振るいながら告げる。


「思っていたよりも強くない、ってところかねえ?」

「俺も同意だ。けれど前線部隊は量産するために能力が低くなっているだけという可能性もある」


 正直、戦いについては三人対多数なわけだが、俺達が一方的だった。これまで旅をしている間にそれぞれの剣術についても習熟し、連携も容易になっていたことも圧倒している要素の一つだ。


 なので、俺達は互いの死角を補う形で剣を薙ぐ。例えば俺が攻撃すれば当然隙が生じるわけだが、そこをメリスやチェルシーが穴を塞ぐ。無論、俺も攻撃する間に反撃されるようなことはされないよう動くわけだが、数が多く囲まれつつあるこの状況では、完全に隙をなくすというのは単独においては難しい。よって、そのわずかな綻びを残る二人が埋めてくれるわけだ。


 それは俺も同じであり、メリスやチェルシーが攻撃したことによって生じた穴を俺が未然に防ぐ。時折無謀にもその隙を見極めて突撃してくる個体もいるのだが、俺は難なく対処する。

 ただ、この事実は小さな隙を見繕って攻撃できるだけの能力を持っているという証左に他ならず、なるほど見た目通り武術的な要素を大いに含んでいるようだ。


「魔王は力ではなく、技術で人間を上回ろうとしているのか?」


 俺はそんな疑問を呈する。メリスやチェルシーは剣を振りながら一考した様子で、


「魔物に技、か……人間の専売特許であるそこを突いてくるというのは、確かにいやらしい手法ではあるねえ」


 チェルシーがコメント。うん、俺も内心同意する。

 蹂躙するだけなら、それこそ魔物の能力を引き上げてしまえば終わることだ。というよりそうした方がたぶん魔力的なリソースを消費させずに済む。しかし目の前の敵は俺達の剣を捉えて反撃しようとする節がある。それはつまり、同じ舞台に立って上を行こうとしている。


 俺も魔王だったから、これがどれだけ面倒なのかわかる。単純に蹂躙するだけではない……何か、目的があるのか?


「それに、ずいぶんと統率がとれている」


 と、メリスは目の前の魔物を屠りながら告げた。


「これだけ兵数を減らされれば当然、どこかで狼狽える面々も現われる。けれどそういうこともなく、理路整然とこちらへ押し込もうとしてくる」


 ……強さをそれなりと言ったことは、撤回しなければならないかもしれないな。単独の能力はそれなりでも、連携によって相乗効果を狙っているか。

 しかし、こんな技術を与えた目的は一体――そう考えたところで、ピィィ、と笛の音のようなものが聞こえた。何事かと耳をそばだてた矢先、別の隊がこちらへ接近する様子が。


「一つの隊ではどうにもならないから、援軍を呼んだということか」

「ずいぶんと的確な判断じゃないかい」


 チェルシーはどこか皮肉を込めて呟いた。


「いや、むしろ人間と比べて合理的だと言ってもいい。ほら、人間は時に足の引っ張り合いなんかをするだろ? あるいは、功に焦って足並みを乱す輩だっている。けど、魔物達にはそれがない」

「確かにそうだな……ずいぶんと面倒だ」


 技術を教えている点もそうだが、命令系統をこれだけ大規模に浸透させているというのは……これもまた、ずいぶんと魔力を消費するものだ。

 人間を圧倒するだけなら力を高め突撃でもさせればいいはずなのだ。けれどそういうことではなく、まるで人間の真似をしている……ヴァルトならそういうことをやりそうだけど、果たしてその目的は何なのか。余計わからなくなってきたな。


「援軍が来る前にさよならするかい?」


 チェルシーが問い掛けてくる。正直まだまだ余裕なのだが……それに、俺達なら素早くこの戦場を離脱して、結界のある場所にまで到達できる。

 ただ、結界を強固にして退路を断つというやり方だって否定できない……ふむ、もしそうなったらさすがにやられたりはしないけど面倒くさい。よって、ここは――


 そんな風に考えていた時だった。俺は向かってくる援軍の中に魔族がいるのを把握する。そいつは戦斧を構えており、見た目も完全に人間の騎士……。


「……お仲間、じゃないのか?」

「違うねえ。ま、姿を変えていたとしたら、私達に近づいてきた時点で声を掛けるだろ」

「――ずいぶんと、暴れているじゃねえか!」


 荒々しい声が聞こえてきた。ただその声色は記憶にない。偽魔王ヴィルデアルの純粋な配下、ということか。


「どうする、会ってみるか? それとも逃げるか?」


 俺は確認する。他にそれらしい魔族の姿はないのだが――


「会おう」


 メリスが提言。何かしら考えがあるのか?


「倒せば、今度は同胞が現われる可能性もある」


 うーん、微妙だと思うけど……やり取りをしている間に魔族は近づいてくる。ふむ、移動速度もなかなかだし、これはもう遅いかな?


「止まれ」


 そこで魔族が声を発した。すると、周囲にいた魔物達の動きが止まる。


「これ以上兵数を減らされるのは、勘弁して欲しいからな」

「……前線指揮官か」


 こちらの言葉に魔族はニヤリと笑う。


「ああ、そういうことだ。偵察だけじゃ飽き足らず、こちらの戦力をたった三人で減らそうって感じだな。よほど腕に覚えがあるようだ。ま、勇者についての情報とか詳しく知らないが、たぶんそうした称号を持っているんだろ?」


 ふむ、俺達のことは認識していないのか……情報に格差があるな。まあ目の前の前線指揮官はそういう情報に対し、単純に興味がないだけかもしれないけど。


「なら、ちょっと遊ぼうじゃねえか。そろそろこいつに血を吸わせたいと思っていたところだ」


 戦斧を構える。正直、鈍重な武器だし俺達ならあっさり捉えられる……と思ってしまうのだが、ヴァルトの息が掛かっている敵だとしたら油断はしない方がいいな。

 ただこっちの技術とかを披露して警戒をもたれるのも面倒だ。何も知らないのであれば一気に倒すに限る……そう心の中で呟くと、メリスやチェルシーより一足先に、俺は魔族と対峙した。


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