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転生魔王の英雄物語  作者: 陽山純樹
第四章

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結界内にて

 俺達が結界内へ侵入した瞬間、すぐに魔物達が襲い掛かってくる……という風に心構えをしていたのだが、予想とは異なり俺達が入り込んでも魔物は来なかった。


「指揮する魔族達は監視していないのか?」


 疑問を告げながら俺は隠れながら進む。


「そういうことなら俺達としてはやりやすいからいいけど……」


 ということでこちらは慎重に、魔物に見つからないように少しずつ移動を行う。


「とりあえず結界の外側から状況を窺うことはできない……けど、少し進めばわかるかな?」

「意図的に結界外から見えない以上、そういうことなんだろうね」


 俺の呟きにチェルシーは律儀に応じる。


「とはいえ、だ。そこまで深く陣地に足を踏み入れれば当然、敵がわんさかやってくる」

「怖じ気づいたか?」

「まさか」


 そんな軽口で応じながら、俺達は進む……結界から少しばかり進んだ後、俺達は軍勢が固まっている箇所を発見できた。


「あれか……数はまあまあといったところか」


 そんな評価を下す。まあ目の前に見える一団は魔王軍でも一部だが。


「メリス、チェルシー、魔王ヴィルデアルの……えっと、偽物じゃない方の部下はいるのか?」


 俺は目を凝らす。とりあえずこっちも確認してみるが……。


「パッと見る感じ、いないっぽいけどねえ。ただ魔物の群れの中にいてもおかしくない」


 チェルシーが返答。彼女に加えメリスも注視し、敵の中に同胞がいないかを探す。


「陛下の下にいた者達はその多くが人型だったからねえ。巨大な存在もいたにはいたけど、そいつらも魔法を使って姿を小さくしていたし」


 ……城の中でデカいままだと、暴れられたら面倒だと思ったので小さくしていたのだが。


「外観上、同胞がいるかはわからないね。ただこうなると、どうするんだい?」

「さすがにあの中に突っ込んでいくことはできないからな……ふむ、ここは別の部隊を見つけてそちらも観察していくか」


 仮に突撃するにしても、もう少しばかり情報は欲しいところ。俺は別所に移動を開始し、少し離れた場所に別の部隊を見つけることに成功した。

 ただ、画一的な装備と見た目により、違いはほとんどない。人間とは異なり魔王は地力で魔物を生み出せるわけだが、さすがに個体ごとに別の特性を積んでいたら生成にも時間が掛かる。よって見た目などを含め大体統一されるのだが……基本人間の騎士をベースにした魔物で、人と同様手足を持ち、鉄製と思しき鎧を身にまとい、腰には剣、右手には槍、左手には盾という武装。


 こうなると正面から激突する場合、白兵戦ってことか? 国側の騎士や兵士からすれば、人間と戦っているように立ち回ればいいので、やりやすい気もする。


「……指揮官らしき存在はいるけれど」


 ふいにメリスが口を開く。


「同胞とは大きく違う……見た目を変えている可能性もあるけれど」

「わざわざそんなことをする理由がないからねえ」


 と、チェルシーはメリスに応じた。


「同胞がいるのなら、彼らを利用して以前城にいた者達をここに呼べば戦力増強にもなるからね。姿を変える必要性などどこにもないさ」


 うん、確かに……ただ、そうだな。ヴァルト自身が総大将なら、あまり俺の配下だった存在を引き入れたくはないと思うかもしれない。

 それは下手するとボロを出す可能性もあるから……と、ここまで考えて俺は口元に手を当て熟考する。現状、同胞がここにいるのかもしれないが、ヴァルトが魔王ヴィルデアルとして活動しているのなら、その扱いはあまり良いものではないだろ。


 いや、ぞんざいな扱いをすれば同胞が寄ってこなくて「あれは敵だ」と認定するか……? いかん、なんだか頭の中が混乱してきた。ここは下手に考えない方がいいか。考察は同胞がいるのかを確かめてからでも遅くはない。


「……別の一団がいるな。そちらに近づいてみるか?」


 こちらの問い掛けにメリス達は首肯。うん、それじゃあこのまま――

 そう思った矢先のことだった。ピィ――と、口笛のような音がどこから聞こえてきた。


「……ん?」


 声を発し周囲を見回す。そこで俺は、一番最初に見つけた一団が俺達の方角を見て何やらザワザワしているのが見えた。


「あー、これは見つかったか?」

「そうみたいだね」


 どこか悠長にチェルシーは応じる。


「たぶん外敵がいないかを、魔法で定期的に確認していたんだろ?」

「かもしれないな……周囲に人影がいないかを索敵魔法か何かで時間をおいて発動させる。周囲は魔物とかの魔力が充満しているから、魔法を使っても気付かれにくい」


 迂闊だったか……ただ、俺を含めここにいる三人に露見せずして、というのは引っ掛かる。

 もしかすると魔王ヴィルデアル――ヴァルトが考案した魔法とかか? だとすれば俺の感知をすり抜ける可能性は否定できない。


「どうする? 図らずともこちらに来そうだが」

「戦うにしても、複数の部隊がこちらに来るだろうねえ……あの数を相手にひたすら戦い続けるのは、キツくないかい?」


 んー、とはいえ雑兵クラスならいけなくもないだろうけど……一度戦って戦力がどの程度かを把握しておきたいしなあ。それにある程度戦力を減らしておけば人間側としても少しくらい有利になるだろうし。

 そうこうする内に俺達のいる場所へ迫ろうとしている兵士が。たださすがに隊全てというわけではない。あ、これならなんとかなるな。


「……遮蔽物のある場所で、かく乱しながら戦うか。幸い敵は戦力を逐次投入するつもりのようだし、退却しながら交戦すれば逃げ道も確保できていけるだろ」

「なら、そうしようか」


 チェルシーは同意。メリスも承諾し……俺達は移動を開始。とはいえ敵の速度の方が上であり、そう遠くない内に交戦することになるだろう。

 俺達はそのまま結界の外へ向かおうとする。だが今度は別の隊が進路を塞ぐように兵を動かし始めた。挟撃される形になるが……遠目から確認した段階で兵士の能力は俺達にとってみればそう厳しくはない。問題はなさそうだ。


 いよいよ魔王軍との戦いになるが……もしこの戦いの中で同胞と遭遇したら、どうすべきか――ま、逃げ道もあるし気絶でもさせて抱えればいいかな?

 場合によってはもう少し情報を得たいところだが……再度潜入できるくらいの余裕はあるだろう。今度はバレないよう対策して……と考えたところで、退路を塞ぐ敵と交戦を開始した――


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