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転生魔王の英雄物語  作者: 陽山純樹
第四章

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作戦骨子

「作戦そのものの骨子としては、偽物の魔王ヴィルデアルの退路を封じるところにある」


 ノルバはまずそう語り出す。


「あの偽物自体が我らが宿敵である可能性も否定できず……そのため、取り逃がすことは絶対に避けたい。だから彼の逃げ道を塞ぐことから始めている」

「……もし宿敵でなかった場合は? 個人的にはその可能性の方が高いと思っているけど」

「宿敵だと考えているのは、とある情報からだ……魔王ヴィルデアルは、神族とも戦う意思を示し、なおかつ切り札があるらしい」

「切り札……?」


 それは一体――と問おうとしたところで、さらにノルバは話す。


「その切り札……どうやら千年以上前に存在していた兵器らしい」


 兵器――俺の頭の中にいくつか候補になりそうなものが浮かぶ。


「私の記憶が確かなら、勇者フィス……あなたの前世でそうした兵器は駆逐していたはずだ」

「まあ、うん……徹底的に破壊したつもりではあるけど、地中に埋まっていて残っているものとかもあると思うが……」

「その兵器を扱えるというのが問題だ」


 なるほどな……例え魔王であっても、知識がなければ千年以上前の兵器なんて扱えない。けれど例外はある。それは魔王自身がヴァルトであった場合だ。


「宿敵が陛下の偽物に教えたのでは?」


 と、マーシャが一つ質問。もっともな疑問だが、ノルバは首を左右に振る。


「まだ確定したことが言えないため兵器の詳細は語れないが、恐ろしい効果であるのは確かだ。その使用法を教えたりしたら……場合によっては宿敵に反旗を翻すかもしれない」

「危険すぎるため、陛下の宿敵は教えたがらないというわけですか」

「そうだ……魔王なんてものは誰もが自分こそ最強だと自負する存在だ。宿敵は魔王にとっては単なる情報提供者。その実力を魔王に示すわけでもない以上、わざわざ兵器まで提供するとは考えにくい」

「思い通りに動かなかったら兵器で魔王を処理しなければならないからな」


 俺の言及。それにノルバは首肯した。


「現在得られる情報を統合した結果、魔王ヴィルデアルの偽物が宿敵であると判断した……もし傀儡のように操作しているにしても、魔王級の力を持つ者を遠隔操作というのは、厳しいだろう。よって、近くにいる可能性が極めて高い」


 なるほど、ノルバの説明からすれば、ヴァルトがいる可能性は十分にあるな。


「ここで表に出てきたのは何故だと思う?」


 俺はノルバに質問してみる。それに彼は、


「今まで表舞台に出てこなかったにも関わらず、こうして公に姿を現そうとしている……要因はいくつかあるはずだ。まず本物の魔王ヴィルデアル……つまり、天敵である存在が消え失せていること」


 実際は生きているけど。まあヴァルトも転生しているなどという予想は無理だろうな。


「次いで度重なる魔王復活を考えれば、何かしら準備が整った……勇者フィスが語っていたように、それは千年魔王の復活かもしれない」

「……あの魔王は別格だ。制御できる自信があるのか?」

「ここまでいくつもの魔王を復活させてきたことで、何かしら情報を得たのだと思う。彼は魔王ヴィルデアルの本物が滅びて以降、準備を進めてきたのだろう……それが今になって結実している。ただ勇者フィスの存在は疎ましく思っているはずで、警戒の対象に入っているみたいだけど」


 ……ふむ、なるほど。ということは、


「俺が目立って行動すれば、かく乱になるか?」

「そうは言っても、変に行動すれば国側に目をつけられることになるだろう? よって今後の方針としては、核となる作戦を密かに行い、それが露見しないよう私達と勇者フィス達で上手くかく乱するということ」

「そうか……ノルバの語った作戦の詳細を聞こうか」

「魔王ヴィルデアルが逃げられないよう、彼が根城にしている地方一帯に結界を構築する。といっても馬鹿正直にそれをやったら相手にすぐ察知される。よって、仕込みを行う」


 もし魔王ヴィルデアルが逃げそうになったら発動……ってことか。


「ただ、地上に出ているのが傀儡である可能性は否定できないので、地底なども調査した上での話だ。よってこれからやることとしては、地上におけるかく乱に加えて調査の時間稼ぎとなる」

「時間稼ぎ……か」


 口元に手を当てて考える。それにノルバは、


「どうした?」

「現在、俺の前世における部下達が色々と動き回っている。現段階でそうした者達が偽物の軍門に降ったという話はないが……そうなったら俺は戦わなければならない。そういう事態は回避したくて、できる限り魔王との戦いを性急に進めないといけないんだが……」

「相反する、というわけか。ならこちらも調査を急ぐとしよう」

「いいのか?」

「他ならぬ勇者フィスの頼みなら……それと、もう一つ」


 と、ノルバはさらに主張する。


「そういうことであれば、こちらの策が完了したら場合によって正体を明かしても、いいんじゃないか?」

「俺が魔王ヴィルデアルの記憶を保有していること、か」


 ただ、それをやるにしてもタイミングが重要だよな。事実をそのまま伝えたとしても、信じてもらえるのか微妙なところだし。


「この辺りについては、どうするか検討させてもらうよ……それと今後もこういう形で話をするのか?」

「いや、作戦の打ち合わせは今回限りのつもりだ。これ以上北へ進めば偽魔王の監視の目がキツくなる。その中で神族と勇者が話し合っている状況を見られたら、余計に警戒されるからね」


 それもそうか。


「今後、やり取りがあるとしても核となる作戦ではなく、あくまで勇者と神族という関係の上で話をさせてもらう。この件は、二人の胸の内に留めておいてくれ」


 俺とマーシャは同時に頷く――神族側も態勢を整えつつある。決戦まではそう遠くなさそうだ。


「かく乱と言ったけど、勇者フィスは自分の赴くままに行動してくれればいい」

「ああ、わかった……話はこれで終わりか?」

「そうだね……今回の戦いは色々と裏があるかもしれない。宿敵の目的を暴く意味でも、絶対に失敗はできない」

「そうだな。表舞台に出てきたのならば千載一遇の好機……ここで、終わらせようじゃないか」


 俺の言葉にノルバは頷く。そうして主神との話は終わり、俺達は宿へ戻ることとなった。


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