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転生魔王の英雄物語  作者: 陽山純樹
第四章

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討伐戦

 仕事である魔物討伐の場所は、街道沿いに存在する森林地帯。そこに周辺にいる兵士や騎士。さらに冒険者達が集い、一つの隊を成して戦っていた。


「規模はそれなりだな……で、早速お出迎えか」


 俺達が到着すると同時、騎士が近づいてくる。そこで話し掛けると、彼らは俺達の素性を把握していた。

 俺達の旅よりも情報が先に回っていたようだ。騎士は少々申し訳なさそうな表情をしながらも、魔物討伐の協力を依頼してきた。こちらは快諾し、戦場へ。


 森を少し進むと川が現われた。やや傾斜のある底の浅いもので、川に入ってもある程度は立ち回れそうな雰囲気。その少し向こうには小高い山があるのだが……早速川沿いに魔物を発見した。

 姿は猪みたいな感じ。遠目から確認する限り、魔王の魔力なんて感じられないけど……じっと様子を窺っていると、魔物が吠えた。


 野太い声が周囲に響く。すると、それに呼応するように茂みの奥から複数体の魔物が。


「応戦を!」


 ここで騎士が叫び、周囲の兵士達も動き始める。理路整然と動いており、ここでの戦闘により練度が高まっているようだ。

 では俺達も……そう心の中で呟くと同時、メリスとチェルシーがいち早く駆けた。


 とにかく魔物の質を確認するってことか……俺はマーシャに視線を移す。


「どうする?」

「ひとまずメリス達に」


 戦闘が始まる。猪の群れは突撃されたらかなり面倒な相手となるはずだが、メリス達は機先を制する形で魔物の懐へと飛び込んだ。


 敵の対応は完全に後手に回り、どう対応するか判断し動こうとした矢先、メリスの剣が魔物へ入る。斬撃は猪の頭部に当たると……そのまま倒れ伏した。

 次いでチェルシーが脳天へと斬撃を叩き込む。それにより魔物の頭は両断され、あっさりと撃破。


 そんな二人の活躍ぶりに周囲の兵士達はどよめきを上げながらも戦い始める。武器は槍。魔物が突撃によって兵士達へ飛び込むより早く、槍の先端が敵へとかざされる。

 それにより魔物も動きを止める。そこへ騎士や冒険者が前に出て、剣戟を叩き込んだ。


 さすがに一撃とはいかず、幾人かが連携して魔物を倒す。怪我人はなし。メリス達のように単独とはいかないが、兵士達を牽制役にすることで上手く敵相手に立ち回っている。


「――凄まじい、ですね」


 近くにいた騎士の一人がこちらへ声を掛けてくる。


「勇者フィスと従者の方は……後詰めですか?」

「周辺の気配を探っているんですよ。他の場所から魔物が現われても対応できるように」


 こちらの言葉にマーシャは頷いて同調。すると騎士は「なるほど」と声を上げ、


「ここで幾度となく戦っていますが、周囲に気を配る余裕はまだできないくらいです……正直、いつ部隊がやられるか戦々恐々としています」

「魔術師が二人か三人ほどいれば、フォローできると思います。そうした要請は?」

「増援要請はしていますが、現状で来る可能性は低いでしょうね……」


 苦しい表情で語る騎士。主戦場は北部であるため、こればかりは仕方がないか。


「よければ、道具を差し上げましょうか」


 と、ふいにマーシャから提案が行われた。


「周囲の魔力を検知できる物です。それを使えば大ざっぱではありますが、索敵もできます」

「道具、ですか。しかしお代などもほとんど出せませんよ?」

「構いません。その代わり、いくらか情報が欲しいのですが」


 上手く交渉に持っていったか。二人のやり取りを見ている間に戦いは趨勢が決まった。メリスとチェルシーの容赦ない斬撃により、数ではそれなりだった魔物が最早風前の灯火だった。


「……わかりました。索敵などできるのならこちらとしては大変ありがたい。ただ、情報というのは?」

「魔物についてです。ああした形状の魔物は以前からも見ましたか?」


 マーシャの質問に騎士は一考し、


「そう、ですね……仰る通りいましたね」

「強さなどの質はどうですか? 変わりましたか?」


 色々と聞き始めるマーシャ。それに騎士は逐一答えていく。


 戦いのいよいよ終盤に差し掛かる。数が少なくなったことで兵士達も魔物へと猛攻を仕掛ける。川岸ということもあり足場が多少は悪いのだが、転倒するようなこともなく対処できているようだ。

 一方でメリス達もそれに続く。どうやら魔物には増援もいたようだが、形勢をひっくり返すような数ではないみたいだし、そもそも倍とかに増えてもメリス達なら対処できるだろう。問題はなさそうだ。


「わかりました。ありがとうございます」


 マーシャが礼を述べ、騎士は移動する。彼が少し離れた時、俺は彼女へ尋ねた。


「どうだった?」

「魔物の質などは変わっていないようです。しかし魔物の数が増え、なおかつ凶暴になっていると」

「……魔物の数そのものはたぶん変わってないだろうな。魔王の魔力に当てられて興奮した魔物達が、動き回るようになったといったところか」

「はい、それで間違いないかと」


 ……気付けばマーシャの口調が魔王の俺に向かうそれに変わっている。まあメリス達は離れているから、いいか。


「ということは、現状で魔王の配下はゼロってことか」

「まだ北部に魔物を含め戦力を集中させているようですね。しかし、間違いなく魔物が暴れている状況を利用しようとしているでしょう」

「国内各地で騒動が起きているからな。これに乗じて……と考えるのは自然か。ただ魔王の配下はいないわけだし、実際に何かをする場合でも、地方ではなく首都近辺とかになりそうだな――」


 そんな会話をしていた時、俺は山のある方角から、何か気配のようなものを感じ取った。

 いや、距離があるのでそれは俺の単なる勘でしかないのだが……ふむ、しかし――


「マーシャ」

「はい」

「山の方向から気配みたいなものを感じた。俺の直感なので当てにならないかもしれないが、調べてもいいか?」

「わかりました。メリス達には上手く説明しておきます」

「頼む……もし俺達を監視しているとかいう魔王の配下がいたら、俺達の動きが捕捉されていることになるな」


 それは俺達の動向を最初から調べていたか、それともギルドの依頼により情報を得たか。もし後者なら、人間の組織からも情報を手に入れることができるということ……人間社会に根を張っているということだ。

 マークされるのはまあ至極当然なのだが、もしそういうことなら面倒な展開になるかもしれないな……そう胸中で思いながら、俺は戦場を離れ一路山へと向かった。


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