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転生魔王の英雄物語  作者: 陽山純樹
第三章

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島からの帰還

 ――翌朝、俺は甲板へ移動し確認すると、大きかった魔王の島は、もうほとんどなくなっていた。


「終わったな」


 色々な意味で……ディリオンはどうしているのか連絡をとろうかと思ったが、俺は止めた。そもそも居所がわからないので魔力を無駄に拡散することになる。俺の行動で怪しまれることはないと思うけど、念のためだ。

 ディリオンとは別の場所で落ち合うことになっている……ひとまずそれで十分だ。


 それからクリューグの指示により、船が動き始める。いよいよ海中に沈む島を眺めながら、俺達は魔王のいた場所を後にする。


 海中などを警戒しながら俺達は進み……陸地へと戻ってくる。出迎えは見張りの兵士。そこから砦へ向かい報告を行い――やがて歓声に包まれた。


「ここでの仕事は終わりだな」


 そう俺が呟くとメリスは小さく頷いた。


「なんというか、あんまり役に立てなかったけど……」

「そういう時もあるさ。また新たな特性を抱える魔王が現われた。今後も精進が必要だな」


 その言葉にメリスは頷く。で、隣にいるチェルシーは笑い、


「生真面目だねえ。戦いが一つ終わったわけだし、羽目を外してもいいと思うよ?」

「そうもいかない」


 メリスの言葉にチェルシーは肩をすくめる。なんだか呆れている様子。


「そういえばチェルシーはどうするんだ?」


 ふいに疑問。そこでチェルシーは笑い、


「どうするのか……まだ決めていないけどね」

「また旅を続けるのか?」

「あー、そうだねえ」


 と、メリスに視線を送る。


「そういうフィス達はどうするんだい?」

「ひとまずマーシャのいる屋敷に戻ろうかと思うけど。魔王の情報なども得たいからな」


 俺はチェルシーと視線を合わせ、


「ついてくるか?」

「その選択肢も一つだねえ」

「ま、当面はこの周辺に滞在するし、ゆっくり考えればいいさ」

「すぐには帰らないのかい?」

「まだ魔王の残滓が残っている可能性があるからな」


 俺の言葉にメリス達は表情を引き締める。魔王は確かに倒したが、大陸へ侵攻しようとしていた以上は何かしら準備をしていてもおかしくない。

 また準備の影響により、何かしらあってもおかしくない……実際は何もないわけだが、そんな風に説明しておいた方が無難だろう。


 無論、ここに滞在するのには理由がある……魔王ディリオンの本物と会話をするためだ。


「とにかく、この周辺の調査を行って、異常がないことを確認した後、戻ることにする」


 その決定にメリスは異存ないようで「わかった」と警戒に返事をした。






 そこからクリューグ達は城側とやり取りを行い、俺の見解と同様に他に異常がないかを確認してから都へ戻ることとなった。ただ彼の指揮により――何より彼自身が魔王を打ち破ったことにより城側の評価はうなぎ上りらしく、恩賞などはかなりありそうだった。

 俺はクリューグに脅威がないことを確認するまで残ると伝えると礼を述べられた。よって俺とメリス……そしてチェルシーについても砦に残ることに。ちなみに他の冒険者達は早々に去った。


 で、砦に滞在する間にチェルシーは俺達と共にマーシャの屋敷へ向かうことに決定。色々と段取りが決まっていく中、俺は調査と称し一人でとある場所へ向かう。それは、魔王ディリオンが待っている場所だ。

 そこはキサラ女王の墓標がある村近く。日付指定もされていたので、たぶん今日までディリオン側も色々と動いていたのだろう。


 当該の場所を訪れると、既にディリオンは待っていた。なおかつその傍らには彼の身辺護衛などを務めるメルもいた。その見た目は以前と同様だが、格好が冒険者風に変わっている。


「待っていたよ」

「無事か?」

「もちろん。そもそもフィス達と戦っていたのは偽物……分身だし」


 分身……相当力を入れ込んだのがわかる。でなければメリスやチェルシーは気付いたかもしれない。


「さて、私は晴れて自由の身というわけだが……」

「マーシャには既に連絡はしてあるし、そこへ向かえば色々と対応してもらえるはずだ。けど、この国を離れる前にやることがある、だろ?」

「そうだ」


 頷く彼。その目的は女王キサラの墓にある、暗号を解き明かすことだ。


「それじゃあ行こうか……えっと、メルさんもついてくるってことでいいんだな?」


 コクリと頷く魔王の従者。ちなみに彼女は魔王と女王との関係をどう思っているのか……ま、口を挟む理由もないか。

 というわけで俺達は墓のある村へと向かう。その道中で打ち合わせを行う。


「今後のことだが……フィスはまだ旅を続けるのか?」

「そのつもりだ。宿敵と呼べる存在の気配がある以上は、そいつを倒すまで旅が終わることはなさそうだ」

「長きに渡り生きていると、色々と宿業があるものだな」

「まったくだ。道半ばにして果てるなんて真似もできないから、大変だよ」


 そんな軽口にディリオンは笑う。


「……私としては協力したいところだが」

「協力? いいのか?」

「ただ宿敵の影響を受けているかもしれない以上、どこまでやれるのかはわからないけど、支援くらいはするつもりでいる」


 それはありがたい。まあヴァルトの動きについて色々わからない部分もあるし、実際に動き出すのは敵の正体をきちんと把握してから、かな。


「わかった。こちらとしてもよろしく頼むよ。ディリオンがどういう形で手を貸すかは俺が判断するから、当面は新しいすみかをどうするかなど、自分のことに終始してもらえれば」

「了解した……さて、目当ての場所は?」

「もうすぐだ……見えたぞ」


 墓標のある村へと到着。俺に見覚えのある村人が小さく会釈をしてこちらもそれに応じる。

 迷わず墓標のある方角へ向かい、程なくして辿り着く。そしてまずディリオンは再建された墓の前で立ち止まった。


「……こうして墓参りできるとは、思わなかったよ。キサラ」


 呼び掛けは感傷に浸っているようにも、あるいは純粋に良かったと思っているのか……複雑な感情がないまぜになった言葉だった。

 俺は後方から黙って見守ることにする。従者であるメルもまたディリオンの様子を口を開くことなく見守っている。


 そして彼は横手にある古い石版に目を向ける。それこそ俺が発見した、当時の物。


「……暗号で私宛てだと彫られている。どうやら、私に残した物で間違いないようだ」


 そうディリオンは口を開き……やがて石版の文字に没頭していった。


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