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TS娘の観察記  作者: 山木 深
TSは唐突に
2/6

3月26日のシャワー

短いですすみません

会話ばっかですすみません

「で、結局なにがあったんさ。神さま? 憑依? 入れ替り? 病気? どれ」


「俺が言うのもなんだがまるで疑わないのかお前」


「いやだってこんな美味しいイベント逃すとか馬鹿だろ。仮に嘘でも亮の弱味を握れそうだし、ほんとならご褒美以外何物でもないし」


「えっ? 俺を信じてるから、とかじゃなの?」


は、何言ってんの? みたいな顔をしてみれば、あ、こいつこんなやつだったよなとでも言いたげに額に手を当てて首を横に振った。

そりゃ普通に考えてよくわからんこと言ってる男なんて信じないよ。同じくよくわからんこと言ってる可愛い女の子なら信じる。そんなことは当たり前のことだ。

そんなことはともかく、亮がTSしてしまったのなら一応原因と戻る方法を探らないといけない。いくら僕が生粋のTS大好きマンだとしても親友が困っているのを見て手を貸さないほど薄情ではないつもりだし。

でも、戻るまでは亮()遊んでいいと思うんだよね。


「っ!? お前、今なに考えた?」


「ん? どうやったら亮が元に戻れるかなーって。何、変なことでも考えてるとでも思った?」


「ああ、思った。まだそう思ってる」


「信用ないな、僕」


「日頃の行動を思い出せ」


「はてさて何かしたっけか」


「おい」


ジト目で僕を睨んでくる亮の視線をどこぞの柔道家のごとく受け流す。しばらく怖くないどころかむしろ萌えを感じる睨みから顔をそらしていると、諦めたのか、はぁ、とため息をついた。


「とりあえず、そうだな。水被ることから始めてみようか。あ、でもまだ寒いしお湯にしとく? どっちがいい?」


「何で水かお湯を被るのが決定事項みたいに話す」


「お前知らねぇの? 某拳法TSマンガでやってるだろうが。結構前に勧めたろ」


「あー、そんなのもあった気がする」


「だろ。んじゃさっさと風呂場行けよ」


そう言ってしっしっと手を振れば、大人しく風呂場へと向かって行った。やっぱり体がいきなり男から女に変わるってのは堪えるのか、やけに素直に言うことを聞く。もう少しわちゃわちゃしてくれた方が僕としては嬉しいが、それは今後の楽しみにしておく。

とりあえず亮が放ったらかしにしていった掛け布団を片付ける。よっこらせと布団を畳み両手で持ち上げる。15歳としては平均的な身長の僕では夏用ならともかく冬用の布団は片手では持てないのだ。

そのままえっちらほっちらと亮の部屋まで運んで行く途中。

ふと、あることに気付いた。亮は、今TSしてるんじゃなかったか、と。そして、亮は今風呂場へ向かったじゃないか、と。

そこに気付くと、僕は布団を亮の部屋へと放り込み、風呂場へと駆け出した。ドアをノックしてみても、返事はこない。


「入るぞー」


返事を待たずに勝手に入る。

そこには理想郷(アヴァロン)が展開していた。

パジャマの裾を掴み、お腹がはっきりくっきりしっかり見えてしまうくらいまで上げて固まっている美が頭に付いても良さそうな少女がいた。

少女というか亮は下から脱ぐ派なので、既にズボンを脱いだ後。年頃の女子はまず履いていないだろうやや着古された感のあるトランクスが頼りなくヒラヒラと舞っている。

そしてドアが開いたのに気付きこちらを見る亮。みるみるうちに赤くなっていき、口を鯉みたいにパクパクしている。

そんな光景に、中身が亮だと分かっているからこそ生まれる性的ではない純粋な萌えを感じた。


「…………で、出てけこの変態野郎‼」


「いや待って物は投げるなよ!?」


すぐ近くに放置されていた風呂桶をひっ掴み投げてくる亮から逃げ出した。萌えを楽しむにしてももう少し慣れるまで待つべきかもしれない。

三次元でTSを見れるとあってやや箍が外れていた気もする。考えたら中身男子とはいえ外見はまるっきり女子になっている今の亮相手にさっきのはなかった。普通に痴漢、覗きの類いだった。


「……はぁ。これは僕、いきなり対応ミスったなぁ。これじゃあR18に出てくるTS相手を襲う親友ポジだぞ。…………それだけはやだし頑張んねぇとなぁ」


一人反省会をしてみた。

もう少し節度を保つ努力をせねばという思いを固めたところで、耳を澄ます。

すると聞こえる聞こえる亮の声。

僕の把握している限り変なところで初心な亮が女子の裸を見るのは生まれて初めて。つまりは童貞な訳だ。

そんな亮がいきなり何の事前準備も知識もなく裸を見るを通り越して洗うというのだから、きっとわちゃわちゃしてくれるはず。そのために僕は聞耳をたてる。


「まったく、夏生は何であんなにTSTS言うんだよ。普通にしてれば眉目秀麗才学非凡なくせにやたらTSいうもんだから彼女の一人もできないんだよ、絶対。……まあ今回は頼りにするつもりだからあんま言えないけどさぁ。つかいくら自分の家って言っても目、閉じたままだとしんどいな。えぇっと、こっちが水、だよな?…………うわぁっ!? 間違えた‼ ぎゃ、逆だったか、って、あぁ! 見てない見てない何も見て──」


ちょっとニヤニヤが止まらなくすぎてヤバくなったので休憩。鍛えに鍛えた妄想力が火を吹きまくってつらい。そして力亮の狙ってるんじゃないかってくらいのお約束の履行っぷりがすごい。

けど、これくらいにしておく。多分こんなことはこれから幾つもあるだろうし、そしたらまず間違いなく僕に泣きついてくるだろうから今は信用を得る方が急務だと思う。

というわけで僕は静かにその場を離れるのだった。

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