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飛竜と義弟の放浪記 -Kicked out of the House-  作者: ひつじ雲/草伽
四章 ドラゴンタクシー、海を渡る
96/147

風の花とフォルクローレ .1 **

前投稿時より、大きく変更している箇所があります

 

「ああ~……つっかれたぁ! もう森はこりごりよ、プリファラン。貴女の背中はほんと、安心するわ~」


 干した布団のような、風の柔らかな晴天。さざ波は遠い。

 隣を悠々と飛ぶ飛竜(プリファラン)の背中にだらしなく寝ころんだリテッタは、大きく天に腕を伸ばしていた。


「あはは、リテッタ。女の子が大口開けてあくびなんてしてたらはしたないよ」


 ついつい笑ってしまったら、起き上がった膨れ面がこちらを睨んでいた。


「ちょっと、勝手に見てないでくれる? あたしは飛竜と飛ぶ自由な空が好きなの! 細かい事気にする男はモテないわよ」

「ええ? 周りに見てるやつがいないからって気にしない女の子の方がどうかと俺は思うよ?」

「んん? 何か言ったかしら、ディオ? ねえねえ、あたし早くエンマのお世話したいんだけどスカタン。さっさと最寄りの街に行きましょうよ、ねえ? のろまさん?」

「う……」

「あくびは自然現象よ。お腹すくのと一緒!」

「まあ……」


 これ以上突っ込むと反論が怖い。

 あまり彼女が気にしていることを突きすぎると、ちょっとお手入れさせろから、三日三晩のお世話……もしくは一週間世話させろとか平気で言い出しかねない。流石にそれは勘弁して欲しいってものだ。俺らだって、新天地でも顧客をそろそろ捕まえて商売始めたいのだから。



 まあ、リテッタがあくびをしたくなる気持ちは解らなくもない。

 あいつには悪い事してしまった罪悪感はあるけれど、今はそれ以上に森から解放された心地よさの方が勝っていた。鬱蒼とした森はとっくの当に過ぎ去って、茶化し合いでもしていなければ、ぽかぽかとした暖かな日差しに当てられてつい、舟を漕いでしまう程なのだ。


 眼下の平野では絶えず、背丈の高い草の海が波打っている。

 その中を、一本道が先に見える町へと続いていた。


 前方に伸びるその道に、荷台を引き連れた箱馬車がゆっくりと動いていて、なんとも長閑な光景だ。荷台の縁で女の子が足をぶらつかせている様子がまた、ゆったりとした時間を感じさせてくれて和む。



「おっ、あれがリシリカかな。見ろよ、ラズ! でっかい町だなあ」


 見えてきたのは、今までとは比較にならないくらいに大きな港街だった。

 街の外れに関所は設けられているものの、街を囲う塀そのものは見受けられない。この辺りは外部からの影響が少ないのだろうか。


 海岸線は真っ白な砂浜、三本四本と並ぶ大きな桟橋には漁船や交易の為の帆船が揺れている。黒塗りされた木造の街は漆喰に彩られていて、どこか積み木を組み合わせて出来ているかのように見間違う。


 急ぐこともなくのんびりと飛ぶエンマの背中から遠くを見やって、隣で不貞腐れている姿を手招いた。ぶすったれて椅子に座り込んでいた姿が、のろのろとこちらにやってくる。かと思うと体当たりするように抱きついて来るから、苦笑せざるを得ない。



 あの森を出てからずっとこれだ。多分、助けに来たはずだったのに、結局あいつの手を借りて事なきを得た事が悔しいのだろう。気にしても仕方ないだろって宥めても、俺はラズが来てくれて嬉しかったぞって伝えても、ご機嫌は斜めのままのようだった。

 まあ、来てくれて嬉しかったって言った時は、唇こそ尖らせていたから、ラズ自身も満更じゃなかったのだろう。ちょっと、褒められ足りないせい、と言えばいいだろうか。

 これなら放っておいてもいいだろうって判断だ。


「リテッタ。そろそろ降りる支度しようか」

「ねえ! あれ何かしら?」

「……うん?」


 言葉通りにエンマに高度を下げてもらおうとした時、リテッタの問いかけに吊られて視線を落としたら、()()は目に止まった。



 草原の中を掻き分けるようにして、泳いでいる何か。二本、三本四本と、あちらこちらから放射状に、ある一点を目指しているようだった。

 上から見ている俺らだけに解るような、細くて真っ直ぐな線だ。その延長線を辿ってやると、間違いなくあの箱馬車を目指しているようにしか見えなかった。


 多分、箱馬車の方からその姿は確認できないのだろう。変わらずのんびりと進む様は、危険なんて微塵も感じていないようだ。

 ……いやいや。何も必ずしも危険があるって決めつけるのはよくない、よな。魚の群れが()()を泳いでいるって言うこともある。



 ――――と、思おうとした。だが。


「あっ…………」


 程なくして馬車も異変に気がついたのだろう。荷台にいた女の子が荷物の影に身を縮めているのと同時に、完全武装した黒い鎧甲冑の騎士らしきヒトが、馬車から飛び出してきた。箱馬車は止まらない。


 同時に長く線を描いていた姿達もまた、茂みから飛び出してきた。その数、十人は軽い。

 賊か何かと言ったところだろうか? 誰もが統一された灰色のインバネスに身を包み、覆面までしていれば怪しいに決まっている。動きに無駄がないのは、何かしらの訓練を受けているのだろう。


 とても騎士一人で捌ける数ではないか。加勢するタイミングを伺っていれば、真っ先に飛び出した姿を躊躇いなく切りつけてその動きを止めていた。すぐさま次に向かっていくところを見ると、下手に手出しするとかえって邪魔になるんじゃないかとすら思えてくる。



 手を出すか出さないか。ハラハラしながら見守れば、騎士の方に直ぐ様変化があった。一瞬だけその足元が光ったかと思うと、明らかに騎士の移動速度が上がっていた。


 その速さのまま飛び出してきたヒトカゲを二つ、三つと切り裂いて、流れ作業のように、馬車後方を取り囲む賊の姿に向かっていく。その速さは、とても騎士だけの能力で、どうにかなっているものには見られなかった。

 恐らく騎士は、魔術も扱えるのだろう。能力としてはとても優れた人物だって、俺でも解る。だからこそ、一人であの馬車を守っているのだろう。



 だが追跡者達だって、やられるだけではない。

 集団で動くことに慣れているのだろう。大半は得物を抜いて騎士を取り囲むようにし、少数が馬車の影に隠れるようにして馬車を追っていた。


 切り結ぶ騎士が、馬車に迫っている危険に気がついている様子はない。騎士は高速で打ち合い、その姿達を捌いていく様は圧巻の一言に尽きる。


 きっと、その場で全ての追跡者を押さえられているならば、それでも良かっただろう。でも今正に、動く箱馬車へヒトカゲが乗り込んでいったところだった。

 途端、危なっかしく馬車が揺れているのが解る。荷台にいた少女が、怯えたように物影でより小さくなっているのを見てしまった。



「ねえ、あれ、マズくない?」

「……くそっ」


 ――――ああ、もう!


 何も出来ないくせに、いっぱしにどうにかしたいって思ってしまった自分はバカではないだろうか。『今助けに』 は、ちゃんと実力を持ったやつしか口にしてはいけない言葉だ。半端な正義感で下手な事に頭を突っ込んでいいわけがない。


 でも。



「………何、兄ちゃん。言いたいことあるなら言えばいいでしょ」


 しがみついている姿に一瞥をくれると、隠しているつもりなのか、チラチラとこちらを伺っていたラズが頬を膨らませていた。ラズは言えばいいでしょって言うが、どちらかと言うと『言って欲しい』 って、顔に書いてある。

 ……甘えているのは俺の方だよなぁ、って、痛感した。


「解った。ラズ、エンマ。馬車の方に加勢するよ。出来れば生け捕りにしよう。その方が後から役に立つ」


 甘い事言っている自覚はある。こんな時でさえ、ふたりの手は汚させたくないって思ってしまっているのだから。


「しょうがないなぁ、もうっ」


 でも、ラズ達が気にした様子はなかった。

 しょうがないといいつつも、ラズがぱっと、その表情を輝かせたのは仕方がないだろう。エンマからも同意が返ってきて、直ぐ様早急にそちらへと急旋回する。


「リテッタはここにいてくれ」

「え? あ、ちょっと、ディオ?!」



 リテッタの声は無視して、気持ちをあちらに切り替える。

 ざっとその上空を横切ってもらうと、エンマの影が大地に落ちた。それに気がついた何人かが顔を上げたが、それを好機と捉えた騎士の容赦ない一撃が襲いかかっていた。


 うわあ、えげつない。追跡者達に、さらにラズが追い討ちと言わんばかりにエンマから飛び降りて行ったから合掌した。彼らに襲いかかったのは、純粋な暴力と言える。うん、致し方なし。


 鎧騎士は俺らの登場に少しばかり驚いた後に、こうしちゃいられないと、箱馬車を振り返っていた。「いけない」 と、微かに聞こえたくぐもった声に、俺は大層驚かされた。だって、声が男のものとは思えないほど高かった。


 ああ、うん。気にしている場合じゃない。



 騎士は箱馬車へと急ぐ。ここは俺らに任せるって事なのだろうか。それとも構っていられない、という事なのだろう。

 ならばちゃちゃっと片付けてしまった方が良さそうだ。先の少女の事だって、もちろん気になるのだから。


「ラズ、ここを頼む!」

「うん、解った!」


 一言頼めば嬉々とした声が返ってきて、何も言えなくなる。殺すなよって、喉まで出かかったが、余計な一言な気がして黙ってしまった。今さら言わなくても、ラズなら解っているだろう。


「エンマ」


 こちらも呼ぶと、意を得たりと速度を上げてくれた。向かうのは馬車の元だ。


 俺らと騎士。どちらが先にたどり着くよりも先に、小さな悲鳴が上がっていた。

 恐らく、先に空から見た彼女のものではないだろうか。


「くッ……」


 驚くべきことに、エンマの速度の追いついて隣を駆けていた騎士が、息を詰める。同時に、ぐっと一歩を強く踏み込んだかと思うと、また一気に加速した。


 どんっ、と、鈍い音がしたかと思えば、踏み固められた大地に足跡がくっきりと残されている。突風が遅れて吹き抜けた。


 思わずその足跡を振り返って、まじまじと見てしまったのは、仕方ない事だって思う。

 ……ええと、いや、一体どんな脚力しているのですかって、心から訪ねたい。

 最もそんな余裕なんてものはなく、俺らもまた先を急いだ。



 追い付く事はそれほど困難ではなかった。馬車は止められ、数える程度の覆面がいるだけだ。

 少女はまだ、『一応』無事。馬車の端に追い詰められながらも、辛うじて捕まっていない状況だった。


 騎士が最速で突っ込んでいった勢いのまま、打ち倒せたのは一人だけだ。少女を捕獲しようと迫っている姿を除いた三人ばかりが、騎士の前を阻んでいる。

 けど、先ほどの一瞬の隙をついて勝てる相手ではないのか。よく解らないけど、手練れといったところなのだろう。逼迫(ひっぱく)した空気がそこには出来上がっていた。でも、俺らには関係ない。



 拮抗を全部ぶち壊すように、エンマが咆哮する。至近距離のせいで空気は震え、下方の人たちを驚かすには十分だった。騎士が周りをどうにかしてくれることを期待しよう。


 次いで――――あとから怒られそうだと解っていても、その背中から荷馬車に向かって飛び降りる。

 狙いは少女に迫っている覆面だ。


 危なっかしく揺れながらどうにか着地を決めて、解ったことが一つある。人の上に着地すると足をくじくってことだ。真面目に。いやホント、真面目な話だ。

 生憎相手を気絶させられるほどの勢いがなくて、相手はまだぴんぴんしていた。お蔭で地に伏せかかったそいつに身体を起こされて、こっちが尻餅をついてしまう。


「痛ったたぁ……サイアク……」


 ゆらりと影が落ちて来た事にハッと見上げると、そいつの頭上で陽の光を受けた()()がぎらりと輝いた。

 いやいやいや! 冗談じゃないぞ!


 逃げようと動こうとして、途中で聞こえた空を割く音に慌てて頭を抱えて身を縮めた。途端、荷車に降って来たのはエンマのしっぽで、覆面を強打しながら荷車を叩き割った。

 割られた勢いに、前に放り出されて転がる。エンマに叩きつけられた事で今度こそ意識のない覆面の上に、俺は仰向けに投げ出された。


「きゃっ!」

「ぅ……!」


 そして続くように、『助けないと』と思った筈の少女が降ってきて、身動きが完全に取れなかった。重くはないが、運悪く肘打ちを脇腹に食らって涙が出た。


 頼むよ、エンマ……。そろそろ()()、俺に向かってやるのやめて欲しい。今絶対、半分くらいは俺を狙っていたと思うんだよな?



 恐る恐る目を開けて見上げれば、バカを見るような冷めた目をした()()()()がそこにはいらっしゃった。

 ええと、うん。やる気出すのはいいけど行動はしてくれるなと、多分そういう事なのだろう。

 俺が動くと邪魔にしかならないってか。……切ない。


 まあ、まあ、結果オーライだ。すぐにこちらを襲ってくる奴は戦闘不能になってくれた。あとはあの騎士か、もしくはエンマがどうにかしてくれる。


 でも、悲しいかな。

 大丈夫? って声をかけるよりも先に、彼女は俺から飛び退いた。翡翠の目が、心配そうにこちらを覗き込んでくる。


「っ……あ、ごめんなさい! 大丈夫ですか?!」


 うん、それ。できれば俺が先に言いたかった。

 世の中思うようにならないとままならなく感じながら、なんて事もない風を精一杯装って笑いかけた。


「うん、俺は大丈夫だよ。それよりも君の方は、怪我はないかな」


 ぞわっとした。口にしてから、自分の発した言葉とは思えないほどうすら寒さを感じた。

 …………うん、やっぱりないわ。若干気持ち悪さすらある。



 この際だからはっきり言おう。俺、ヒーローって柄じゃないわ、やっぱり。

 こんなこと普段から息でもするようにやってのける正真正銘の『主人公』って、ホント心から尊敬する。


「あ、はい。わたしは何ともないです」

「なら、いいんだ。その……荷車、壊してしまってごめんね」


 申し訳なさから謝れば、キョトンとしたことにくすっと吹き出されてしまった。

 うん。笑われるくらいの方が、ホッとする。


「平気です。ありがとうございますっ」


 花が咲くように笑うってこういう事か、なんて見惚れてしまったのは内緒だ。

 年は十代半ば程度に見受けられるその少女。ピンクブロンドのつややかな髪をサイドに流して、組みひもと共にゆるく編み込んでいてかわいらしい。


 もう少しラズの髪が長ければなあ……なんてついつい思った俺は、なかなかの弟バカではないだろうか。っていうか、とってつけたようなヒーロー気取るのやめれば、意外と余裕の自分に驚く。



「プリファラン、足止めて!」


 そんな声が上から降ってきて、周りに漸く目を向けてやると、いつの間にか逃げ出そうとしていた姿達があった。そいつらに、空に居た筈のプリファランが強靭な尻尾をお見舞いして打ち取った。

 インバネスをまとう姿が、成すすべなく弾き飛ばされる。地に落ちた姿は潰れたカエルみたいな声を出したかと思うと、痙攣して動かなくなった。……死んでない、よな? 後でちゃんと確認してやらなくっちゃ。


「皆、無事?」

「助かったよ、リテッタ」


 降りて来たリテッタは、そいつらの生死よりもこちらが気になっていたらしい。心配の声に、苦笑せざるを得ない。



 ついでに言うと騎士のヒトもこちらにやってきた。その銀の刀身には血糊はついておらず、颯爽と振って納刀する様子に、思わずおおと声を上げてしまった。有り体に言えば、かっこいい。


 くるっと踵を返してこちらを向いた様子でさえもキレがあって、威圧されたように感じずにはいられなかった。途端。


「リ――――……っ、ご無事ですか?!」

「ありがとう、エニス。わたしは平気よ?」


 すっ飛んできたかと思うと叫ぶように上がったのは、やっぱりどこからどう聞いても女の人のような声だ。男のものと思うにしても、高い。

 鎧甲冑がうなだれたその様子に、少女だけが苦笑していた。


「申し訳ありませんでした、私がついていながら……」

「エニス、それよりも先にいうことがあるでしょう?」

「あ……、はっ!」


 思い出したと言わんばかりに顔を上げたかと思うと、ぐりんとこちらにフルフェイスの兜が向く。例えそれの中身が女の人であると解っても、怖いと感じたのは仕方がなかった。


「撃退協力まことに感謝いたします、竜使い殿方。お蔭で大事に至らないで済ます事が出来ました」

「いえ…………え、ええ?! 竜使い?!」


 まさかそんな大層な事言われるとは思ってもいなくてついポロリとこぼせば、向こうもきょとんとして小首を傾げてしまう。


「あたしたち、そんなんじゃないわよ」


 冷静に切り返したリテッタに、「え、では?」 とおろおろしている鎧甲冑がちょっと面白い。焦っている姿を見ていたら、つい、笑ってしまった。


「いや、俺はヒトの運送を専門に行っているディオっていいます。こいつは相方のエンマに、あっちはラズ。それから連れのリテッタとその相棒のプリファランです。ええと……通りかかったところを見かけてつい、手を出してしまったけど……」


 よかったのだろうか、なんて伺い立てれば、大いに安堵されたような気がした。そして、なぜかそのヒトは踵をそろえて佇まいを正していた。


「あ、っと、失礼いたしました」


 兜を取って胸にこぶしを当て、騎士の礼を取られたところで唖然としてしまう。

 中から表情を晒したのは、金髪碧眼の妙齢の女性だった。ストレートヘアがさらりとこぼれて目を引いた。


 このヒトどうして騎士なんてやってるんだ? ドレス着てバラの庭でティータイムしているほうがよく似合うような気がする。

 騎士の女性は先ほどの少女に目配せしたかと思うと、少女が背筋を正していた。



「申し遅れてすみません。わたしはメル・アルマ、各地に残る詩吟を求めて旅をしております。こちらはわたしの護衛を引き受けてくれた騎士、エニス・レイバールです」


 外套の裾を引いてぺこりと礼をする様子は、どこか優雅さすらも感じたから不思議だ。途端に、自分の自己紹介が恥ずかしくなってきて、慌てて立ち上がってしまったのは仕方ない。


「えっと、あ……ご丁寧にありがとうございます」

「いいえ、お気になさらずに。この度は危ない所を助けて頂き、誠にありがとうございます」


 とどめのような謝辞の言葉。メンタルが撃沈したような気がした。



 ……うん、だめだ。

 咄嗟に感じたのは、それだけだった。


「ぷっ、カッコ悪いわね、ディオ」


 わざわざリテッタに言われなくても解ってるっつの。

 対人レベルの格の違いを思い知った気がして、俺はあいまいに笑い返す事しかできなかった。彼女は気にするなって言ったけれど、正直穴があったら入りたい。泣きたい。


 陽気な空が、途端に恨めしくなった。

 

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