表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
飛竜と義弟の放浪記 -Kicked out of the House-  作者: ひつじ雲/草伽
三章 ドラゴンタクシーの日常
23/147

竜には竜の掟がある.4

 

 足音が、響いている。

 真っ暗な坑道を、一体どれくらいの間担がれていたのだろうか? まだ、十分と経っていないのかもしれないし、小一時間経ってしまっているのかもしれない。


 方角は、一体何処に向かっている? 恐らく、おおよそ南西の方だと思うのだけど……。何分(なにぶん)、何度か進路を変更している。暗さと時間感覚だけでなく、方向感覚もすっかり失われてしまった。



 どこか、開けた場所に出たようだ。それまで近くで反響していたおやっさんの足音が、遠くなった。

 ああ、暗闇のお陰で随分と聴覚が鋭くなった気がする。他に情報を得るための手段が無いからな。さすがの俺だって、それくらい感覚が鋭くなるさ。

 ……不謹慎な例えだけど、盲目の人の耳がいいって理由、何となく解る気がする。



 ここは安全だと判断されたのだろう。おやっさんの肩から漸く下ろされた。


 ~~~っ、あー……。頭に血が登った。ぼんやりする。

 え? ぼんやりはいつもだろ、って? まあ、そうだな。


 …………酷い。何も言うまい。


「ディオ、大丈夫か?」

「あ、ああ……ここは?」

「少し、待ってな」



 久しぶりのような気がするおやっさんの声。何処にいるのかさっぱり解らないけど、近くにいることは解る。

 暗闇の中待っていると、しゅっと何かが擦れる音がした。途端。


「うわまぶしっ……!」


 オレンジ色の柔らかな明かりが俺の網膜に突き刺さった。

 今のはマッチを擦る音か。普段なら弱々しすぎるマッチの光も、今ばかりは久しぶりの刺激が強すぎる。網膜を刺すような痛みに、目がしょぼつく。

 あー……効く。なんかこう、あれを思い出すな。その石しまってくれんか、ワシには強すぎる。……ってやつ。


 バカな回想していたら、小さな手提(てさ)げカンテラにその火は移されていた。うーわ、ますますそれっぽい。

 滅びの呪文、唱えちゃう? 唱えるしかない? 破壊の兵器乗せた王国、守るっきゃない?

 ……なんてな。



 明かりにやっと目が馴れてきて、辺りをぐるりと伺ってみる。荒削りの壁は入り口と変わらず、でも、小部屋みたいに見られなくもない。光源があるだけで、こんなにも見栄え違うのな。


「ここは、抜け道にある休憩所だ。まだ、抜けるまで暫くかかる。こんなことになるなんて、悪かったなあ」

「あーいや、こちらこそ足手まといになって申し訳ない。助かった」

「いや、ディオが気にする事じゃないさ」



 あっさりとそう言われては、俺の立場がない。いっそのこと、てめえ次から気を付けろよボケナス! って言われた方が、謝れたって言うのに。やるせない。


「それにしてもまさか、雪崩が起きるだけじゃなくて、雪崩が入り込んでくるなんて驚いた」

「ああ、その事だが……。恐らく、作為的なもので起きたのだと思う。そうでなくてもあの場所は、確かに雪崩は起きやすい。熱に溶かされた雪がぐずぐずになりやすいからな。けど、坑道に雪崩れ込んできたのは、はじめてだ」

「作為的……だったとして、誰が、何のために」


 そんな事を呟いてみて、無意味な質問だと思った。

 おやっさんにも、首を振られる。


「流石にそれは解らないな。だからこそ早く坑道を出て、山を迂回しないと」

「ああ、心配はいらないさ。山一つ分くらいであれば、エンマは呼べば来るから」


 作為的、だったとして、ラズとエンマは大丈夫だろうか。多分、雪崩には巻き込まれていないだろうけど、心配にはなる。



 ……て、言うか、作為的つったら、俺らかおやっさんの為じゃないだろうか?

 むしろ、おやっさん? ここの坑道を普段、どれだけのヒトが利用しているのかは知らないが、そういう事ではない、か?


 ああ……、もうやだな。考えたくない。

 耳を澄ましても、もう雪崩の音は聞こえない。安堵に胸を、撫で下ろす。



 山から降りたあとくらいは、ゆっくりだらける事の出来る宿があれば最高だ。風呂も入りたい。お湯が恋しい。手足が霜焼けたみたいで、腫れぼったくなった指がじんじんと熱い。痛(がゆ)い。


 少し、ほっとしたのも束の間、どん、どん、と、遠くの方で大砲でも鳴らしているかのような音がする。……なんだろうか?

 それはおやっさんにも聞こえたらしい。


「外で、何かが暴れているらしいな」

「何か? なんだよ、それ」

「考えられるとしたら、イエティ(雪男)が山を下りてきて、入り口にイタズラしてしまったか、あるいは……」

「イエティ……?!」


 不安を煽るようなおやっさんの言葉につい、その表情をまじまじと伺ってしまう。ただ、その先は言うべきでは無いと判断したのか、首を振っていた。


 って、いうかいるんだ。イエティ。あれってヒマラヤに住む人獣、だったよな? 本当にいるか居ないかは別として、それがこっちにいるってびっくりだよ。


「まあ、ここでくっちゃべっていても仕方ない。さっさと出よう」

「ああ」


 それには俺も、賛成だ。早くラズ達の無事を確認したいし、俺の方も大丈夫だったと教えてやりたい。きっと、心配している。



 その先は特筆することもなく、ただ黙々と、薄明かりの中歩き続けた。夜目が効くと便利だなー、なんて、一時の感覚を思いながらただ、歩く。

 途中、おやっさんに抱えられてまた走られたり、足元のでこぼこに足を取られて助けられたり。まあ、(もっぱ)らおやっさんの足を引っ張っていた。

 うん、自覚はある。



 漸く前方に見えた光に、ああ、日が登ったのか、なんて勘違いする。ずっと昼だよ、だなんて突っ込みが、今にも聞こえてきそうだ。でもそれほど長くいた訳ではないだろうに、体感の時間を狂わすには十分だったようだ。


「っ――――――……」


 洞窟を出た。雪上の乱反射がめちゃくちゃ眩しい。マッチの明かりが目を刺して来た時よりもずっと強く、射ぬかれた、みたいな痛みに錯覚する。


 目が馴れてきて見えてきたのは、うっすらと雪化粧している森だった。坑道に入る前の森と比べると、随分と緑が濃い。

 そして何より驚いたのは、空気の温度が柔らかくなった気がする。先程暗雲立ち込めていた空も、白い雲が千切れ、薄水色している。


 遠くの梢に、空と雪以外の色を見た。鮮やかな赤。あるいは黄色。あるいは――――……いちいち例に上げるのもバカらしいか。色彩豊かな布が、風にたなびいているのが見える。

 ああ、あそこに、竜の住む里とやらがあるのかと、納得する。



 見惚れている場合じゃない。おもむろに指をくわえて、俺は高く吹き鳴らした。

 その音は、天に響いて連山に木霊する。その余韻が心地よい。これでちゃんと山の反対側に届いてさえいれば、エンマは来てくれる筈だろう。


「山の反対だからなあ、しばらく俺はここにいるよ」

「ああ、待ってやっていな……と言ってやりたいが、お前も里まで来た方がいいぞ、ディオ。この辺りに住んでいるのは何も、気のいい竜だけじゃないからな。出会い頭にぺろり、なんて、ざらにある話だぞ?」

「ええ?」


 冗談なのか本気なのか。ここに一人でいるのは危険だと示唆(しさ)してくれるのはいいけども、もうちょっとオブラートに包んでほしい。


「うえ~……冗談よしてくれよ……」

「ははは! まあでも、ついてきて損はないと思うぞ。何分、あの里は比較的閉鎖的だ。紹介なしの余所者には、その土地すら踏ませてもらえないぜ?」


 げんなりとして言えば、あっけらかんと笑われてしまう。そして自分についてくれば、漏れなく激レア観光が出来るぞと、そういうことか。

 思わず気持ちも揺らいでしまう。山の反対側から来てくれているであろう姿を探して、遠くの空に目を凝らす。……うん、まあ、行かないなんて選択肢、始めからなかった。


「うん……じゃあ、その、お願いしても……」


 同行してもいいですか、と。お願いしようと視線を彼に戻したら、里の方から黒いヒト姿が一つ、真っ直ぐにこちらに向かって来ていることに気が付いた。


「マーヤセレルさん、あのヒトは……?」

「ん?」


 俺の言葉におやっさんは怪訝そうに眉を潜めた。やがて、ふっとその表情を和らげる。


「ああ、あれは――――大丈夫、おれが懇意にしている竜だ」

「竜? あれが?」


 何処からどう見ても、俺にはヒューマン系にしか見えないのだけど、本当にあれが、竜?

 浅黒い肌。編み込んで結い上げていると言うのに、腰まである真っ黒な髪。精悍な顔立ちが、赤い目でこちらをじっと伺う。その胸が人並みに豊かでなければ、確実に男か女か解りかねていた。

 年は……俺と同じか、それよりも若くみえるけれども……どうだろうなあ。何せうちの弟の例があるから、きっと年上何だろう。

 引き締まった体は、俺より筋肉あるんじゃないだろうか? …………へこむ。


 そんな彼女にどう声をかけたものか一人で戸惑っていたら、おやっさんは気さくに話しかけていた。


「やあ、リューシュ久しぶり。また竜鱗を分けてもらえるかい?」

「マーヤセレル」


 やってきた彼女が発する言葉は端的で。落ち着きを伴った声でそう告げる。表情も、あまり動かないタイプらしい。

 でも、不思議そうに首をかしげた。


「……指笛がした」

「ああ、そりゃこいつだよ」


 とん、と背中を押されて、嘘だろ?! て、思ったのも仕方がない。

 ここで俺を出してくれるのかよ! いや、確かに指笛吹いたけども!

 ことりと首を傾げている姿には、まだ少しだけ、あどけなさがあるような気がする。そうやっていると、ホント、年齢不詳だ。


「誰?」

「え? あ、俺は……ディオ。マーヤセレルさんをここまで送りに来た、運送屋です」

「そう」


 そう、って。俺がおやっさんを運べるの? なんて突っ込みすらないのな。どう考えても『運送をする格好』 じゃないことははっきりしているって言うのに。

 だがまあ、彼女にとってそんな事は大した事でないらしい。


「リビヒッタシャーリンメリューシュ」


 その証拠に、先の言葉は自己紹介としてちゃんと受け取られていたようだった。でも端的に言われたそれが彼女の名前だと、すぐには気が付かなかった。


「リューシュって呼んでやるといいぞ」

「あ、はい。よろしく――――」


 おやっさんに言われてから、『あ、前にこんなやり取りやったわ』 なんてデジャヴにハッとさせられる。マジで、竜の名前って長いのな。

 ……そして、どうしよう。言葉が端的すぎて、不安になる。いや、多分本人は全く気にしていないんだろうけど、俺の方は彼女が黙ってしまうような事をしてしまったかとひやひやしてしまう。


 そしてリューシュさんは遠くに目を向けていたと思っていたのに、気がつくと何故か、じっとこちらを見ていた。目が合った瞬間、ずんずんとこちらに寄ってきて、襟首を捕まれる。


 え、何、何?! 俺、なんかした?! 殴られる?!


 ……なんて、思っていたら。すんすん、と鼻をならして、服の匂いを嗅がれました。

 えー、ええ~……どういう状況よ、これ。状況が理解できなさすぎて、冷や汗がだらだらと出る。


「おいこら、リューシュ。何している。ディオが困っているだろう?」

「……懐かしい匂いがした」


 懐かしい匂いって何?! どゆこと?! 古くさい匂い、って、事か? ……ちょっと、傷つくわー。

 なんて事を一人思っている間にも、リューシュさんは匂いを嗅ぐのを止めようとしない。


 うーわあー……マジで勘弁して。ヤバイって、まずいって。変な妄想始めちゃうからやめてー!!


 ほんとは全力で振り払いたかった(建前)。

 嘘だ。むしろ、なんだこのラッキー(本音)。


 ……じゃなくて! 馬鹿な事言うのはやめろ、俺! 落ち着け!



 けれど変に緊張し過ぎて、身動きとることが出来なかった。直立不動を強いられた俺は、そんなリューシュさんをじっと眺めているしか出来なかった。

 あれ、でも、よくよく考えたら、これ、ふつーに美味しいシチュエーション?! それってつまり、楽しむべき? 美味しく食べるべき?

 ……って、何不埒な事考えているんじゃあ! ぼけぇ!!


 うん、自分でもバカだと思う。

 一人内心で騒いでいたら不意に、ばちりと音を立てたんじゃないかってくらいの距離で目があった。じいっと、こちらを見るばかりで、どうしたらいいかも解らず、反らすことも出来ない。


「えっと、何でしょ――――――」


 沈黙が気まずくて、へらりと笑いかけてみる。誤魔化しきれないどぎまぎに硬直していたら、リューシュさんの上げた顔がこちらに近づいてきた。

 えっ? えっ?! マジでどういう事ですか?!


 ええい、ままよ!

 なんて、つい、目をきつくつむっていたら、首筋に何か固いものが当たった感覚がした。……これは、牙、か? と、首を傾げていた直後。


「いっ――――――!」


 はっきり首すじに噛みつかれ、ぶつっと音を立てて皮膚が切り裂かれていた。ぺろり、そこを舐め上げられて、一瞬で離れていく。緊張が抜けたせいで、その場でへたり込んでいた。


「……気のせい。味が違う」

「おい、リューシュ!」


 ぽかんと見上げてしまったのは、もはや仕方のない事だった。


 ええー、マジで何よ。もう驚きすぎて呆然としてしまって、何も言えなかった。おやっさんが、彼女の行動をとがめてくれているが、当人にはまるで何事も無かったかのように、顔色すら変わっていない。きょとんと、また、首を傾げている。

 えー……。それ、リアクションとしては俺の方だよな、ふつー。


「大丈夫か?」


 何が一体どうなっているんだと戸惑っていたら、おやっさんに目の前で手を振られてハッとした。

 いや、うん。女の子にキスされたって思えば嬉しいけどな、なんか複雑な気分だ。『残念、ハズレだわ』 って、言われた気分。切なくなってきた。


「普段はこんなことするやつじゃないんだがなあ――――……」


 なんだか悪いな、なんて言っている、おやっさんの言葉もろくに入ってきやしない。

 意味もなくハートブロークン。ラズ、エンマ。俺はこんなにもお前らに会いたいと思った日はないよ……。もてあそばれた――いや、リューシュさんにもてあそんだつもりはないのだろうが――心が痛い。



 ふと滲んだ涙を誤魔化そうとして空を見上げたら、遠くに飛んでいる飛竜の姿が目に留まった。見間違える筈がない、エンマの姿。

 よかった、あいつら無事だったのか!


 なんて安堵したのも束の間。その後方に、本当の竜の姿もあった。黒っぽいような、青っぽいような。そんなのが、エンマに付きまとっている、よ、う、な…………?


「エンマ……!」


 ついその名を叫んだら、エンマがこちらに気がついたような気がする。あくまでような、だったけれど。

 って、言うか、まさかあいつ、追われている?! あの竜に?!

 えええええ! そんなバカな! なんで?!


 なーんて思っていたら。


「飛竜。今夜、御馳走」

「いやいや、リューシュ! ありゃディオのものだ。あいつを止めろって!」


 とんでもない単語が聞こえた。マジでやめてー!!

 竜にとって飛竜が御馳走とか、そんな事聞きたくない!


 そうなの? みたいな視線をリューシュさんは投げてくるから、全力で頷いた。


「お願いだリューシュさん。俺の()()を殺さないでやってくれ」

「家族…………」


 自分でも都合のいいくくりで訴えている自覚はある。でも、リューシュさんはちらりとその姿を見上げて、何かを思ったらしい。


「解った」


 やはりそれだけだったけれど、頼りに出来そうな気がしてならない。

 途端。ふっと、目の前からその姿が消えた。みしっと、何処からともなく音がする。瞬間移動、などではない。それならこんなにもくっきりと、地に足跡は残らない筈だ。

 すなわち、先程の音はリューシュさんが地を蹴った音と、そういうことだ。


 えー……、なにそれ。あんなに緩慢な動きや反応だったっていうのに、怖い。

 竜ってほんと、どいつもこいつも身体能力高いのな。羨ましい。



 エンマを再び見上げた時には、リューシュさんがエンマとその竜との間にいた。

 少なからず追っ手の竜は不意を突かれたようで、エンマとの距離があっさりと開く。


「エンマ、こっちだ!」


 そのままこちらに呼び込めば、一目散に飛んでくる。

 なんか、つい、ほろりと来てしまった。兎に角無事そうで、何よりだ、と。


 滑るように着地した姿に俺もつい、慌てて駆け寄る。怪我はないかと心配よりも、安堵が先に口を突いて出ていた。


「無事で良かったよ、エンマ!」


 諸手を上げて迎えれば、嬉しそうに唸られて頬擦りされた。かわいい奴め。後ろに転ぶだろ。


 そしてふと、違和感に気がつく。


「エンマ、ラズはどうした?」


 普段ならきっと、飛び降りてくるであろうその姿がなくて、急に不安になってくる。

 エンマがどこか申し訳なさそうに見返してきた後、ひょいと、俺を(くわ)えてきた。



 えーと? これは、どういうこと、だろうか。背中に乗せられる訳でもなく、咥えられるなんて……。


「お、おやっさん!」


 通訳を頼もうとして、眼下で首を振られてしまった。


「その目で見て、判断してきな。エンマちゃんでは手に負えないそうだ。おれも行こう」


 言われて、一抹の不安が過る。判断しなって、一体何について?

 同時に提案されて、少しだけほっとした。


 お願いしますと、頭を(首根っこ押さえられたまま気持ち)下げれば、エンマはおやっさんを背中に乗せていた。

 ……何故だ。何故、俺は宙ぶらりんのままなんだ。


 どん、と、またえらく遠くで爆発が起きたような音がする。もしかして、だけど。まさか、あの音の元にラズがいる、なんてことも無いよな?


 ………無い、よな?


 一瞬、未だに竜を説得してくれているらしいリューシュさんに一瞥(いちべつ)をくれ、諦めた。今、お礼を言っている余裕もない。ならば。


「エンマ頼む! ラズの所へ連れてってくれ」


 ぐるおぉん、と帰ってきたのは同意の咆哮。ばさりとその羽を震わせていた。頼もしい。


 けど、さ。エンマに聞きたいことがあるのだが。

 ……どうして俺は、エンマに咥えられているのでしょうか?



 アンサーを希望。しかし、正解もない。まあ、それもそのはず。答えが出るはずもない。

 ああ、この緊急時だって言うのに、なんか、納得いかねぇんだけど。


 なんて事を考えながら、ただは今、ラズの無事を祈るばかりだ。無事を祈るとか言いながら、注意力散漫とか聞きたくない。


 ……ラズ、何があったかは知らねえけど、どうか無事でいてくれ。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ