生き物を拾ってはいけません。
村でした。
一応入口に低めの櫓的な見張り台があり、村人1と村人2がいた。
畑が広がる横に各家々が点在している。
あまり大きくない畑の横にウィルの家はあった。
そう!!なんとトムはウィルだった!!
村人2にウィルと呼ばれていたのだ。
まあ、大きい意味ではトム=ウィルだと思うが、仕方がないのでウィルに改名することにする。
ウィルは森から走り通しだった。
森から村までは10分ほどで着いた。
見張り台はあったけど、この辺りの治安は比較的いいのかもしれない。
バタンッ!!
ウィルが家の横の物置に駆け込む。
「チビ!!」
ウィルが呼ぶと、グッタリしてデローンとなったチビが奥から出てきた。
かなり弱ってるみたいだ。
私にはこの異世界の常識はない。
しかし、この内緒でこっそり飼ってる感に満ち溢れたチビが、所謂「世話もできないのに拾ってきて、捨ててきなさい!!」的な子犬の立ち位置にいてもいいのだろうか?
これ、スライムだよね!?
「チビ!!これを食べて!!」
ウィルが私(黄金の実)をスライムに差し出した。
スライムと私の目が合う。(お互いに目はないけどね)
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『精霊様?』
『ん~~そうだよ』
適当に肯定してみた。
『ぐったりしてるけど、具合悪いの?』
『冒険者に襲われて逃げだしたんですけど、この近くで力尽きて・・・そしたらウィルが拾ってくれたんです』
『あ~冒険者ね~やっぱり魔物を倒すと能力が上がるの?』
『はい、魔物も同じなので襲ってきます。みんな強くなると僕なんて襲いませんけど』
なるほど、やっぱり恒常的に戦闘があるんだね。
一応この世界に順応したつもりだったけど、私大丈夫かな?
『で、私のこと食べるの?』
『精霊様は食べられないです』
『黄金の実ってやっぱり薬的な感じなの?』
『味もすごく美味しいみたいですが、病気もケガもなんでも治るそうです』
ふ、私ってやっぱりすごいね!!
完璧な木の実だね!!(ちょっとむなしい気がするは気のせいだと思う)
「チビ早く食べなよ!!」
食べようとしないスライムをウィルが急かす。
『食べていいよ』
『え、お腹壊します!!』
このスライム・・・丁寧なふりして失礼な!!
逆に食べちゃうよ!!
不味そうですけど!!
『精霊様の魔力は強すぎます。僕死んじゃいますよ』
ああ、そういう意味ね。
強すぎる薬は毒になるってことね。
『当然私はここから出るよ。食べられ体験なんてしたくないし』
『それなら・・・でも・・・』
私が広い広い心ですすめてあげているのに、スライムは気乗りしないらしく言いよどむ。
『食べないとウィル君が悲しむよ。苦労して採ってきたんだから。恩人を悲しませたらダメでしょう』
『そ、そうですよね』
ちょろいね、スライム君。
情にもろい魔物は果たして長生きできるのかな?
頑張れ、スライム!!
『じゃあ、私は行くから』
『ど、どこにですか?』
『(親)木に戻るよ。離れててもつながってるから一瞬で移動できると思う』
さ、帰るか。
あんまり探訪できなかったな~