猛獣注意
『人がこの森に向かってるみたい〜』
『そうだね、でも、聖域には入れないから安心だよ』
風が人の気配と音を伝えてくれる。
聖域に入れるものはそういないだろう。
そう!入れない!
人かぁ、転生後初の人。
ちょっと、気になりますよね~
見に行ってみる?
でも、私は動けない。
どうしよう?
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プカプカプカプカ
『ふぅ、こっちかな~』
いろいろ考えた結果、森の安全を守護する者として(いつから?)偵察に出かけることにした。
決して、単なる興味本位ではない。
レンちゃんは危ないのでお留守番です。
現在、私は再び黄金の実の中にいる。
私の特訓の成果である念動力がとうとう役に立った。
我が身を浮遊させることで、移動を可能にしたのだ!!
聖域と外との境を越える。
やはり聖域の内と外とは違う空間だ。
六甲のおいしい水と水道水って感じか・・・ちょっと違うね。
風が音を運んでくる方へ進む。
「――――・・・ぅ」
段々、音が近くなってくる。
「さっきと同じか・・・やっぱり迷いの森の奥には行けないのかな」
10歳ぐらいの男の子が、枝に結んだ紐を見て唇を噛む。
ふむ、外人さんですね。
茶髪に緑の瞳、日焼けした小麦色の肌にそばかすが散っている。
彼を仮にトムと名付けましょう。
木の陰からトムの様子をうかがう。
ジーーーーーーーーーーーーーーー
ワウッ!!
トムの足元にいた毛玉がこちらに向かって吠えた。
むむ、私の気配に気付くとはやるなこの毛玉!
え、ちょっと待って、なに踏ん張って助走を付けようとしてるの?
キャーーー
パタリ。