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神秘の魔法、使ったのは一ノ宮。

◆◆◆◆◆◆◆◆めんどかった◆◆◆◆◆◆◆◆



学校に着いてまずしたのは数学プリント

特に面白くないんで割愛します

まぁめんどかったっす、はい。

まぁ提出できました、はい。

まぁ答え見ました、はい。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆ご乱心◆◆◆◆◆◆◆◆◆



らんっらんらららんらんらん

らんらんらららーん♫


午前中の授業を完膚なきまでにスルーしてやってきました。昼休み!


俺のルンルンさはすごーいよ

何たって…言わなくても分かるよな?


窓側にある自分の席から眺める景色はいつもと違いとても素晴らしい風景だよ。

…いつもと同じだけど、そこは心の持ちようよ。


「おっ、瑞樹、今日はいつにもましてルンルンパッパしてるな」

はい来ましたーヒロでーす。


「分かっちゃうー?いやーにじみ出るもんがあるんすかねー」

「そりゃ分かるわ、いつにもましてキモい顔してたからな」

「・・・・・・・・・・さーて、食べようかな」

俺は机の横にかけている手提げカバンから二つの風呂敷を出す。

その間にヒロはイスを引っ張り出していつもの様に向かいに座る。


「あれ?二つもあんのか?」

おっほっほ驚いておる驚いておる。


「そうなんだよ、今日はミコ——はっ!」

慌てて口を塞ぐ。

ヤバい、流れで言いそうになったわ。

もしおれが美少女と同居しているとばれたらかなりヤバい事になる、人生破綻道一直線だよ。

二人ともいわく付きの美少女だし。

曰く付きって何か背徳感があっていいな。


「どうした?トビウオが跳ねたみたいな顔して」

「どんな顔だよ」

よかったーヒロは追求してこないタイプだ

追求するタイプってウザいもんな、俺とか。


「今日も愚痴るのか?ヒロさんよ」

毎日の様に行なわれるしょうもないヒロの愚痴シアター。

それを聞き流すか聞き届けるかで俺の昼休みは終わりを迎える。

だが今日のヒロは昨日とは違い薄暗いオーラは感じない。清々しさを感じる。


「いーや今日は珍しく愚痴がなーい!ふははははは」

「それはそれはようござんすね」

「よーござんすよーござんす。理由聞きたい?」

ヒロは食いつくように黒ぶちメガネ顔を近づける。

キモいからやめろよ、ミコトなら大歓迎だけど。


「愚痴が無いのに理由なんかあるのか?」

普通は何かあるから愚痴るんだろが。


「あるのよ、あるからあるのよ。愚痴を解消した理由ってもんがさ」

ニヤつき更に近づく。

やめろよ、キモいから。カグヤなら大歓迎だけど。


「それはだな瑞樹くん」

「それは?」

ウザいから早く終わってほしい、飯が食えねーだろが。


「それはだな」

「それは?」

もう言えよ、後近づくんな。


「それは」

「それは?」


「それ」

「どれだよ」


「ふははははは」

意味不明なりき!!

ヒロは笑うと満足したのか俺から離れ普通に座る。

ようやく離れたか変態。


「いやなユーちゃんに会ったんだよ」

「なに⁉ユーちゃんに⁉」

今度はこちらががっつく、だってユーちゃんだぜ?ユーちゃんだよ?


「おいおいそんな近づくなよキモいだろ〜」

「・・・・・・・・・・で、どうだったんだ?」

昨日の昼休み愚痴シアターの重要人物ユーちゃん

ヒロをふった彼女だ。

昨日は俺が適当に嘘をついてヒロをなだめたが、まさかユーちゃんに会うとは……

でもヒロは嬉しそう、え?とゆー事はまさか…


「そのまさかだよ瑞樹くん、ユーちゃんと改めて付き合う事になったぜーいやぁぁ!!」

「マジかよ!やったじゃん!」

ヒロの心を読む問題にはもう触れないスルーします。


「付き合う事になったのも、瑞樹が俺を元気づけてくれたからだよ」

「え?って事は俺が嘘をついてたのも—」

「あぁ、知ってたわ」

マジか、知ってたんかい。うまく騙せたと思ってたのは俺の思い込みだったのか

でもまぁいいか、寄りを戻したんなら途中式がどうであれ結果オーライだ


「って事は俺は恋のキューピットか」

悪い気はしない。何かいいな。


「キューピットとは似つかないけどな」

当たり前だ、似ついてたら逆にヤバいわ、俺は羽の生えた幼児か。


「とにかく瑞樹のお陰だ、ありがとな」

「改まんなよ照れるだろ」

「照れる瑞樹キモいー」

悪びれもなくカグヤとは正反対の事を言われたよ。

まぁここでかわいいって言われる方が問題だけど。


「ユーちゃんはどんな感じだった?」

ユーちゃんユーちゃん言ってるけど俺はヒロの話以外じゃユーちゃんの事を知らない

ただヒロをふって寄りを戻したってだけだ。


「いつも通りに弁当を持って行ったら。いつも通りに接してくれたわ」

そのいつも通りが俺には分からんけど、ヒロがいい顔してるから別にいいか、追求する奴もウザいだろうし。


「そっか、なら恋愛マスター悪しからずの汚名返上だな」

「だな」

にぃっと効果音が出そうな悪魔的スマイル

あ、一応言っとくけどヒロはイケメンっすよ?

金髪メガネなイケメン

こんななりだから初対面は不良だと思った

でも体つきと顔があってないんだよな。

イケメンって体とかスマートじゃないっすか、でもヒロの体は筋肉もりもーり。超強そうな体

何ともアンバランスな奴っすよ

どっちかに合わせろって話だ。

だから多分、この性格をしてなかったらかなりモテるとは思う。


「俺の恋は絶対成就するわー、さぁ瑞樹も一緒にがんばりましょ」

この混じりおネェ性格じゃなかったらな

ってかこんなんでよく彼女できたな。


俺はそんなどーでもいい謎を脳の片隅に追いやり、水玉の風呂敷に手を付ける


「いいなー瑞樹は二つも弁当があって、てゆーかそもそも何で二つ?もしかして片方は彼女にあげる分?」

ヒロも黒い風呂敷を開けながら俺にニヤニヤ問う


「遠からず悪しからずだ、答えは作って貰った」

「へー瑞樹に弁当を作ってくれる人なんかいたのかー」


「・・・・・・・・・・・・・・・・」

やってしまったぁぁぁぁぁぁ!!!

何か普通に聞かれたから流れで話しちゃったぁぁぁぁぁぉぉぉぁぁぁぁ!!!

ガンガンガンガンガンガンガンダムガンガンガンガンガンガンガンガンガンタンクガンガンガン少年ガンガン


「おい大丈夫か⁉とにかく頭を机に打ち付けんな!!死ぬぞ!!」

知るかー!!もうヘッドアタックだよ!

ガンガンガン机に頭をぶつける音が響く。


「おいやめろよ瑞樹!みんな引くだろ!」

知るかー!!もうお終いだお終いだぁぁ!!!


「何がお終いなんだよっ!!」

「何がってそりゃ!…あれ?何がお終いなんだ?」

そういやそうだな、別にお終いじゃないな。

別に俺ん家に同居人が居るってばれたわけじゃないし。

一気に冷静になるわたくし瑞樹


「そうだよ、まったく死ぬかと思ったわ、お前が」

「いやーサーセン、マジで死ぬかと思ったわ、俺も」

額をさすりながらのんきな俺

微妙にぬるっとしてるのは愛嬌で


「ま、そうゆー事もたまにはあるさね」

安心したのかヒロは弁当箱を開け食べ始める

「そうだな、俺にだって乱心はあるわな」


「「ははははは」」

はい、この小さな事件は終わりです。笑って流します



◆◆◆◆◆お前の、うまそうだな◆◆◆◆◆



落ち着いた所で俺は再び水玉の風呂敷に手を付けてほどく

まずはカグヤの弁当から。

冷蔵庫の食材すべて使い作られた何か色々詰まってそうな弁当


見慣れない金属感丸出しの二段式弁当箱が目に映る。

いやー冷たそう。いや絶対冷めてるわ


俺は弁当箱の両端にある金具を外してその中身をあらわにする。



「おぉ…」

感嘆(?)の声が出る

普通にうまそうな奴がある

いや俺が食い慣れた奴がそこにはたんまり入っていた

いやでも——


「冷凍食品…」

見た目ですぐに分かる、これは冷凍食品だと

時間がない時はとっても便利な冷凍食品

そうアレだ、冷凍食品だ。

冷凍されていた食品だ。

それをレンジでチンした食品だ。

うん、冷蔵庫に貯蔵していた冷凍食品だ。


いやーこれには意表を突かれたわ

でも考えてみればわかったもんだ。

だって俺の冷蔵庫には冷凍食品ぐらいしか入ってなかったんだし、必然的にこうなったはずだ。


「おっ、瑞樹の弁当は冷凍食品オンリーか、瑞樹、今日は時間がなかったのか?昨日はサンドウィッチ持参してたけどな」

いや、カグヤには時間があった、でも冷凍食品を選んだ。それは冷凍食品しか冷蔵庫になかったから。

朝食に使った食材が最後の生き残りたちだったんだ。その後に残ったのが人の手により加工された食品……


でも期待したよ、すっげー期待したよ

だって女の子が作ってくれる弁当って手作りじゃん。

いやこれは俺の偏見かもしれないけど全校の男子高校生がそう思ってるはず。

だからこれを見た時に微妙に感嘆しちゃったんだよ、微妙にがっかりしちゃったんだよ。


あっ!いや別に冷凍食品でもいいんだけどね!

だって冷凍食品は間違えないし!美味しいし!

バレンタインと同じだよな!

予め完成されたチョコを湯煎してちょこちょこっと固めて「手作り!」みたいにプレゼントするアレの様なもんだもんな!

それなら下手に作られるよりよっぽどマシだし逆にそっちの方が「ごめんっ!カカオ豆とジャックの豆を間違えちゃった、てへっ」みたいな全然かわいくない生命に関わる失態をされずにすむからいいし!


そもそも大事なのは作ってくれたキモチだ!

カグヤはこれでも頑張って作ってくれたんだ!

だって「精一杯作ったからね」って言ってたもん!精一杯レンジでチンしたって言ってたもん!


「どうした?瑞樹…今日のお前変だぞ…?」

そんなトビウオが跳ねたみたいな顔しないでくれよ〜自分で言っててどんな顔か分からんけど。

とにかくヒロは弁当を食っている

あ〜ヒロのは手作りだ、自分で作ったのかな


「別に大丈夫だから」

ようは味だ、弁当はやっぱり味だ

味さえよければ冷凍食品でも関係ないよねっ


冷凍唐揚げをパクリとな


「うん、普通にうまい」

慣れ親しんだ味ってやっぱりいい

変わらぬ味っす、うん


他の冷凍食品も全てが全て慣れ親しんだ味

もうおふくろの味感覚だよ。

あ、ちなみに白米は冷凍食品じゃなかったっす。

白米だけは炊いてあった奴でした。

うん、白米うめぇ…



カグヤの冷凍食品弁当を食い終わったわたくし瑞樹

次なる使者はミコト弁当

まだまだ腹には余裕がある、いけるぜ


「二つ目の弁当は彼女からの弁当か?この羨ましい奴めー」

弁当を食い終わったヒロはウザくこちらをウザく小突いてくる。

俺には彼女がいないんだが彼女だって事にしておく、勘違いしてんならそっちの方が都合がいい。

同居しているとばれるよりこっちの方がマシだ


おれはヒロのウザい行動を無視して何かしらの文字が書いてある白地の風呂敷に手を付ける。

ほどけば何て書いてあるか分かる

そんな期待もしながら結構丁寧に包んだ風呂敷をほどく


「「おぉ…」」

俺とヒロの共鳴

これには感嘆した

いやマジで

まぁ悪意は感じたけど…


ほどいた風呂敷を広げてみるとそこには筆で書かれた達筆な一行

『バレンタインは全て湯煎!』

ミコトは予知能力もあるそうだ


「お前の彼女さんって…何か…凄いわね…」

「そうね…改めて知ったわ……」

ミコトは飽きない!



実食ターイム

さぁさぁ開けますわよ、その黒々とした二段階層の身を開けますわよ?


果たしてミコトはどんな料理を作ったのか

あの無に等しい量の食材から何を作りだしたのか

そもそも食品が入っているのか

見ものである


はいオープン


「・・・・・・・・・・・ふっ」

それを見た瞬間わずかな笑みが出てくる、そしてじわじわと浸透する様にそれは広がる


「なかなかやるやないか、ミコト」

それは手作りだった。完膚なきまでに手作りだった

ふざけていた自分が恥ずかしくなる、だが代わりに笑みが生まれる

やっぱりミコトは飽きない


「おー、おにぎりかうまそうだな、ってか手作りだな」

ヒロは笑っている


「そうだな、手作りだ」

息をはくように笑う俺

ミコトに感嘆しているんだ


ミコトが作ったのはおにぎりだった

あの韓国のりと白米でおにぎりを作ったんだ。

まぁそうだよな、のりがあればおにぎりが作れる、そんな簡単な考えに俺は気づかなかった

でもミコトはその単純かつ明快な答えにたどり着いていた、だからあんなに自信たっぷりだったんだろうな


「その弁当かわいいな、お前の彼女も技術者だな〜」

弁当にあるのはただのおにぎりじゃない

弁当に敷き詰められているのは小さなおにぎりベビーたち

それが黒い弁当箱を白に埋めている

いや所々色が違う、これはふりかけだな

ミコトに言わせればめでたい時に食うふりかけ

これを作るのには骨が折れたろうな

何せ小さい。しかしおにぎり一つ一つにちゃんとのりがつけられている


その内の一つを箸でつまむ

その形はしっかりと三角になっている

口に運ぶと

「きゃーうまいー!」

手作りっていいな、素朴な味がいいよ


「そんなにうまいのか?」

ヒロはいかにも食ってみたいオーラをかもし出す

いや醸し出すじゃねーよ、もはやムンムンだよ


「ちょっとおくんなんし」

どっかの女中みたいな言葉をはくと許可も得ずに口に放り込む

まぁ、あげるつもりだったからいいけどね


「おお?、ふつーにうまいな」

「そのハテナは何だ?俺のリアクションで期待しすぎたか」

「確かにそのとーり」

「でもな俺はそれがとてつもなくうまく感じたんだよ、何たって手作りっすから」

「おー俺にも分かるぞ瑞樹、手作りの素晴らしさが、ユーちゃんが言ってくれたからな、手作りに勝る料理無しって」

本当にお前はユーちゃんの話の時はいい顔するよな


「あっ、瑞樹くんにヒロくん」

おっとー?この声はもしや


「相園さん」

そうみなさんご存知のポニーテール優しい系かわいい女子代表の相園さん

下の名前は知らない


「やっぱり今日も二人で食べてたね」

「当たり前だ!瑞樹は俺の相方だからなふはははははは」

おいやめろよヒロ、相園さんが突然の高笑いに戸惑ってんだろーが


「ふ、ふはは、はははは」

相園さん⁉何故に高笑い⁉

いや戸惑いながらもぎこちないながらもやってくれるなんてやっぱいい人!

ってコレはやんなくてもいい奴だよ!


「ふはははははは」

ってもうやんなくていいよ!

あ、ちなみにこの三つ目の高笑いをした人はヒロでも相園さんでもましてや俺でもないよ


さぁ問題、一体誰がやっているでしょーか

はい終わりー、え?早い?

どうせ分かるはずないから止めたんだよ

答えは


「一ノ宮もいたのか」

「何だその言い方は!私が省かれてるみたいじゃん!」

そう言って俺の首をしめてくる気丈な女。

そう正解は一ノ宮だ、下の名前は知らない、忘れた。


一応この女の説明はした事ある。めっちゃ短い説明だけだけどちゃんと読んでくれているあなたなら分かったはずだ、え?知らない?

ちゃんとよめーい!!

あ、やば死にそう


「死ぬ…止めてん……」

酸素が酸素がぁぁぁ…

「ぐふっ…」

「千夏ちゃん瑞樹くんがのびてるよ!」

「しおりんが言うんならぁやめる〜♡」

ぽいっとゴミを放り投げるように手を離しそして流れる様にそのまま相園の腕に抱きつき肌をすり寄せている。

くそ…このやろー…ぐぶっ…ムカつく女め……

まぁとにかく助かった。


「ありがとう相園さん…ナイスアシスト……」

死にかけの顔からのできるだけスマイルでグッドラック

のりのいい相園さんも小さくグッドラック返し

あの一ノ宮って女の下の名前は千夏っす、思い出しました。


「ははははははは」

未だに高笑い中のヒロは置いといて新キャラ恒例の情報公開に入りましょうかね。



一ノ宮千夏

そうそれは言うなれば変態

そう言うなれば相園ラヴのレズ系少女

でもレズとは違うらしい、一ノ宮曰く

「私が愛してるのはしおりんだけだ!」

と言うトンチみたいな事をぬかす系少女っす。

ちなみに相園さんの下の名前は詩織です、思い出しました、はい。


じゃあ次は容姿説明

髪は綺麗な銀色で肩くらいまでのびるセミロング。染めてるかどうかは知らない

ヒロの金髪が地毛だから多分一ノ宮も地毛なんでしょうな。


胸はふつーにデカい

ってかこの学校にいる奴で胸が小さいほうが珍しい。

一ノ宮は見事に相園さんの腕に胸を押し付けている、くそっ羨ましいぜ相園さん。


目は灰色がかっている、日本人か?こいつ。

そして切り目

変態だが美人だ。

いっちゃまずいけど俺的には一ノ宮の方が相園より美人だと思う。

ないしょねこれ!


はい終わりー

分かったかな?一ノ宮が美人で変態だって事。


「おっ、うまそうな弁当があるじゃん。もらうぞ」

おい、言い切る前にとるなよ。せめて断ってからとれ。

まぁ、あげるけどね。


「おーうまいなー」

相園さんに抱きつきながらそう一言…

え⁉一言⁉もっと感想は⁉味だけじゃなくてこのおにぎりを見ての感想とかは⁉


「このおにぎりかわいいね、手作り?」

一ノ宮を抱きつかせたままミコト弁当を覗き込む

いや〜さすがみんなのポニーテールかわいい系女子代表の相園さんだよ〜分かってらっしゃる


「でしょ?かわいいでしょ?」

何か自分が褒められてるみたいで気分がいいな


「食べてもいいかな?」

「どうぞどうぞ」

相園さんは嬉しそうにミニおにぎりを口に放り込む、結構大胆な食い方しますね。

そうゆーのいいっすよ。


「うんっ、美味しいっ」

女の子の笑顔を見るとぽわぽわするよ〜。

すると相園さんは急に下を向いて


「お礼に…あの…私のお弁当食べる?」

戸惑いながらも俺にしっかりと伝える。

いや〜戸惑いは相園さんの特許っすね。もう戸惑いの扱いがうますぎ!


「うん食べるぅ〜♡」

これは俺じゃないぞ、こんなにがっつかない。


「千夏ちゃんにもあげるからね」

苦笑いの先には一ノ宮

何でそんなに相園にくっついていられるんだ、暑くないんかこの変態は

はっ!まさか愛さえあれば暑さまた涼しだと⁉そうゆー事か!そうゆー事なのか!!


「そうゆー事だ少年」

くそー!勝ち誇った顔しやがって!

いや、べつに争ってないけどね、うん。そして一ノ宮も何気に心を読む人なのね。


「俺にもくれまいか」

ヒロだ、うん、ヒロだ。席に座っているヒロだ。

いつの間にかヒロは片付け終わっていた

早業っすね。


「もちろんあげるよ」

相園さんはどこからともなく出現した弁当箱を俺の机の中心に置く

マジシャンかな?相園さんは


その弁当箱は何と俺の真っ黒弁当箱と同じ物でした

まぁ特にその事には触れませんけど。


「おっ、瑞樹と同じ弁当箱じゃん」

ヒロよ、俺はその事に触れないって言ったんだけど。俺の心読めよ

「あ、すまんそん」

今気づかなくていいわ、一々説明するこっちの身になってみろ。


「あっ、本当だ…私と…おそろいだ…」

相園さん特許乱用しすぎ

でもそれが相園さんの利点だから許す!


「何っ!しおりんとオセロだと!」

どっちも黒だわ

「おそろいね」

一応訂正しておく


「しおりんとオセロだとは…こいつ隙がない…潰しておかなくては……」

ジメジメした狂気のオーラをすっごい感じるんすけど。

ってか声に出てるし。


「はっ!、早く食べよ!」

相園さんは俺の身の危険を察してくれたのか気を紛らす一言

ナイスアシストっグッドラック


「そうね、早く相園さんの弁当食べたいわ」

それを聞いた一ノ宮は


「私が先にたべるからな!」

と俺への意識を遠ざけてくれる

よしよしナイスアシストだヒロ

そのおネェ言葉は大事にしな。



ついにやって来ました相園さんの弁当。

みんなすごい食いついて見てる、俺もだけど。


「それじゃみんな召し上がれ」

開かれたブラック弁当箱


「うおっ⁉」

「超うまっ!」

「しおりん好きー♡」

おいっ!最後の何だ!いやヒロは食うの速すぎるわ!


「あ、ありがとう…」

相園さんも苦笑いやないか!ってか一ノ宮くっつくな!



この三つの反応の中で一番合っているのは言うまでも無く俺だ、この驚くと言う反応が一番合っている。

相園さんの料理は凄い事にノブライトニングしていた。

感覚的にではなく視覚的にだ。

教室の天井にまでその光を届かせている


まばゆく光ながらもそれは目を痛める光じゃない。

そう、それは食材が嬉しがっているかのようだった。


言ってる意味分かる?

とにかく見た事ないくらいにうまそうって事だよ


「う、うまどんやぁ」

ヒロなんか泣いてるし、え⁉泣くほどうまいの⁉

じゃあ俺も食ってみよう

料理の内の一つの何かをとる。いやどれもこれも光ってるからどんな料理か見えないんだよね。

パクッとな


「う、うまやぁ」

うまいのやぁうますぎるのやぁ、食の神様が見えるよぉ、食のGODが見えるんだよぅ


不覚ながらこれは今まで食った中で一番うまいと思ってしまった。ミコト弁当より何倍も。そう何倍もだ。

ミコトとカグヤの料理勝負は突然の乱入者相園さんによりその行方を固めた

言うまでもない、相園さんの勝ちだ。


「おっ、何々?何やってんの?」

やって来たのはクラスのお調子者くん

前触れもなくやってくんな、説明お粗末になるから。

まぁ別にいいか。


「すげぇ!超うまそうじゃん!相園、ちょっとくれない?」

お調子者特有のノリ、結構ウザいぞ


「え?あ、うん、どうぞ」

さすがみんなのポニーテールかわいい系女子代表相園さん、拒む仕草すらしない、一瞬戸惑ったけど。


「うまっ!何これうまっ!」

仰け反り盛大なアピール

まぁ、うまいだろうね、まずい訳がない


「え?そんなに美味いのか?」

「私にもくれない?」

「私もー」

「俺にも」

ん?何だ何だこの人だかりは。

いつの間にかクラスメイトに囲まれていた。

凄いなみんな、隙を突いて入ってきやがった。

「マジだ!超うめぇ!」

そいつは口から光りが漏れていた

ちゃんと食ってから感想言えよ


「うまいっ!」

耳からライト


「デスティニー!」

髪が発光


相園さんの料理ヤバいな、人の体質を変えたよ。

どんどん来る人間。押し寄せる波の如く。

俺の机なのに保持者である俺が使えない惨状。

くんなよテメェら


「おい!貴様ら!そこをのけぇぇ!!」

突如の怒号

それに驚いた奴らは一歩も二歩も引き机の回りに空間ができる。


俺じゃないよ?俺にこんな事できるか

怒号の発生源は何とまぁ相園さんにベタベタの一ノ宮


そこで聴こえるヒソヒソ声

「一ノ宮さんだ」

「ヤバいカッコいい」

キャーキャー


これは女子の声だ。え⁉女子⁉何キャーキャーやってんの⁉


そんな女子の反応を尻目に

「しおりんの弁当は私がしおりんと食べる!」

独占っすか。まぁ俺はいいけどね。他の人がどうだか知らないけど。


「代わりに私の弁当を食えっ!」

ドンと俺の右隣の机にスイレンが描かれた弁当を置く


「え⁉いいの一ノ宮さんっ」

これは先ほどの女子様だ


「私のなら無くなるまで食うがいい!」

弁当箱を勢いよく開ける

そこには至って家庭的な料理が並んでいた、相園さんのに比べたら霞んでしまう料理だ。


「じゃあいただきますっうまっ!」

この女子様も感想が速いっすね


「私も、うまっ!」

「じゃあ俺も、うまっ!」

「わいも、うまっ!」

どれもこれも反応は同じだ、でも何故かやけにうまそうに感じた。

俺はこっそり卵焼きをとると食べてみる


「うまっ!」

何だこれは、うまいぞ、この庶民一般の味はとてつもなくうまいぞ。

相園さんの料理は次元が違ううまさだったが一ノ宮の料理は同じ次元上のうまさ。

どっちがうまいって言われたら俺は一ノ宮の料理を選ぶ。

庶民の味の最高さが染み渡る料理だ。

こんな料理が作れるとは一ノ宮もやるやないの


と俺がどーでもいい説明をしている間に一ノ宮の料理は大盛況になっていた

「うまっ!」

「うまっ!」

「うまっ!」

「うまっ!」

「うまっ!」

「うまっ!」

「うまっ!」

「うまっ!」

「うまっ!」

「美味っ!」

「旨っ!」

「馬っ!」

「上手っ!」

「甘っ!」

もはや流れ作業と化している

一ノ宮の計らいのお陰でおれの席が戻ってきた、いやーサンキューサンキュー

右横に立っている一ノ宮にお礼を言おうとすると


「ありがとう…千夏ちゃん」

相園さんのヒソヒソ声、それも嬉しそうな。

ん?何で相園さんは一ノ宮に感謝してんだ?


「しおりんが困ってたら見過ごせないよ、はい一緒に食べよーかね、むふふふ」

しおりんが困ってた?

そう言うと俺の机を占領して二人で食べ始める。

場違いな気がしたからそっと席を離れる。


すると教台の所で腕を降るヒロ

いつの間にか移動していたようだ。


「千夏の料理はどうだった?うまかったか?」

ヒロの所に着くや直ぐに聞かれる。


「見ての通りにうまかったよ」

見に映るは一ノ宮の弁当を食べる為に群がるクラスメイト。

いつの間にか場所が変わって廊下側に密集している。

魔法にかけられた様に次々に人が集まる。

でも弁当はつきそうにない。

どんだけ中身あるんだよ、四次元弁当箱か?


「どんな感じにうまかった?」

「何か相園さんとは違って庶民一般のおいしさだったな」

「そうか、そこが千夏のいい所だよな」

ん?何か一ノ宮の事を知ってるような口ぶりだな。


「いい所って?」

人に追求するのが大好きな俺はやっぱりヒロに追求する。

するとヒロは遠くを見て思い出す様に話す。


「千夏は周りの人を見る事ができる、人が困ってたり悲しんでたりしたら真っ先に気づくタイプだ。そんな千夏だから誰にでも好かれる料理ってのが作れるんだ」

根拠が謎だが、まぁヒロがそう言うんならそうか。


ヒロはこちらに振り向き

「ほら相園さんが困ってた時も千夏が助けただろ?」

「ん?相園さん困ってたのか?」

いつだよ。


「あなたは人を見てないわね、全くもって全くよ」

やれやれと言った風なヒロ。

しょうがないだろ、最近まで人なんかまともに見なかったんだから。

そうやって生きて来たんだから。


「相園さんの料理を巡って人が大量発生したでしょ?その時の相園さんかなり困ってたのよ?」

「え?マジで?」

気づかんかったー、相園さんの料理しか見てなかったよ不覚不覚。


「相園さんは色々と断れないタイプなのよね、良く言うと優しい。悪く言うと人に合わせる便乗娘ってところかしらね」

確かにそうだな、昨日のヒロの謎の行動に付き合ってくれたし、今日も何故かヒロの高笑いに付き合ったし。

って事は相園さんは単に優しいんじゃなくて断れなかったからそれをやったのか。

断る強気なココロが無かったから合わせたのか?

って事は昨日の事は全て強制的にやらせてしまったのか?

相園さんの本心を知らずに?

もしそうなら謝っとかないといかんぜよ。

何たって私は律儀な高校生っすから。


「それで千夏が声を張り上げて追っ払ったって訳、自分の弁当をエサにしてね」

「エサって言い方ひどっ」

「でも事実でしょ?」

そうっすね、俺たちはエサに群がるハトポッポっすね。


「千夏は誰にでも優しいけどね、それが仇をなした時もあったの」

「仇って?」

群がるクラスメイトの真逆側で、俺の席を囲んで楽しそうに話している相園さんと一ノ宮。

本当に仲が良さそう。


「仇ね…」

その言葉を反復したヒロはどこか悲しそうな目をしていた。


「千夏はね、周りに気を使う余りに自分を大事にしなかったの」

へーそんな偉い人がいるんですねー

俺なんかエゴイストだからな、その心意気がよく分からんぜよ。


「まぁ、今は平気そうだからいいけど」

ふーん“今”はね、どんな人にも辛い過去ってのはあるんだよな。

それはヒロだってそうだし相園さんもミコトもカグヤにだってある、もちろん俺も。

俺たちはそれを経験して成長するもんなんだよな。

心におった傷も時間の流れで大抵は癒される。

人生は長いから癒されない傷はない。個人差があるだけだ。

そうやって俺たちは生きている

未来に向かって……

『ココロの強くなる本』引用


「今を大事に生きてんならそれでいいだろ?過去なんかいつまでたっても過去のままだ、追っかけてくるわけじゃあるまい」

それを聞いたヒロは少し驚いた風にこちらを見る。


「それさえできてんなら一ノ宮なんかへっちゃらだろうよ」

「ふっ、そうだわね。今を生きてるのが一番よね」

ヒロは柔らかく頬笑む。

それはヒロにも辛い過去があった事を示唆させるがそんなんどうでもいい。

だって今を精一杯生きてんだから。


「それにしても瑞樹からこんな言葉がでるなんて思いもよらなかったわ」

「俺もだよ、ヒロからそんな話が聞けるとは思いもよらなかったよ」

「人は第一印象で人を決めつけるからね」

「お前の第一印象は不良だけどな」

「あっ!ひど〜い、なら瑞樹の印象は友達なしお君くんだよ」

「まんまじゃねーか」

「付き合って行けば印象は変わる物よ」

「かもな、で、ヒロよ」

「ん?何かしら?」

「そろそろおネェやめてくんない?みんなみてるから」


これから変な噂が流れたのは言うまでもない。




八話っす。

空き時間が少なくて更新が遅くなりました。

もう時間ギリギリなんで終わりにします。

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