いってきますと言えたのも大きな大きなヤツっすね
◆◆◆◆◆◆◆何の話?◆◆◆◆◆◆◆
小鳥のさえずりが聞こえる…
「ぐぎゃぁぁぁグリゅぁがぁぁごぁあ」
虫でした
空腹時における緊急信号音で起こされた俺
雨の音はすでに無く、あっつ〜い気温がある
窓の外は太陽がまだそんなに高くない
時間的にも早朝って所でしょうな。
腹の虫が収まらない俺
ぎゅがぁぁぁぐぅりゅぅぅ
この調子じゃ夜も鳴ってたな
とりあえず目を覚ました俺はクソ暑い部屋から出て家族団らん居間へ下りる。
その時にミコトの部屋が気になったけどそこは自制してな。
ってか朝からこの暑さって今日どんだけ暑くなんだよ。
居間へ着くと今までなら想像のつかない違和感を発見した。
「カグヤ?」
「あっ、おはよぅ瑞樹くんっ」
そこにはキッチンで得意げに料理をする不思議記憶喪失精霊美少女カグヤ
昨日のタンクトップエロえろスタイルとは違い『クリスマスは巻きで』と書かれた意味不明な白地Tシャツを着ている
これはミコトの服なのだろう
だって短いし。
カグヤの身長と胸じゃミコトの服では収まり切らない。
だからなんとまぁーおへそ様がちらりちらリズム
エロい!
そして相変わらずミコトの服のチョイスが意味不明だ。
うん、意・味・不・明だ
「どうしたんだ?こんなに朝早くから」
ちょっと寝ぼけ気味だった俺だが完全に目が覚めた。
「あの〜ちょっとお腹がすいちゃって」
てへっと少しの恥ずかしさを見せ
グギャゅぁがぁァァァァキャァァァァァ!!
壮大な腹の虫
途中悲鳴が聴こえた気が…
「うっ…」
カグヤは腹を押さえて赤面戦隊に変身
朝一発かわいいありざーす
「カグヤも腹減ってたのか——」
そしてタイミングを見計らった様に
じゅぎゃぁぁぐぅぅぁじゃぁぁ!!
「実は俺もなんだ、なはははは」
いやー照れる〜
「あははは瑞樹くん優しい」
朝一発のナチュラルスマイルいただきました。
ごっそっさんです。
「あっ、今朝ごはん作ってるからくつろいでて」
「おぅ、ありがとなカグヤ」
俺はお腹いっぱいっすけどね
いつもはミコトに占領されているソファに体を預ける。
やっと本来の使い方をされてソファは嬉しいだろうな、すまんないつもミコトが真面目に座らなくて。
物に感情移入する私瑞樹
物にも感情はあると思ってる俺は無機質なソファにも優しいぜ。
あ〜人形とか動かないかな〜、誰も居ない時にこっそり動いてたり。
そんな淡い想像を働かせる内に俺の思考はカグヤに向かっていた。
一人黙々となれた手つきでフライパンをパパンパン。
カグヤの行動力は普通じゃないな。
昨日出会ってその次の日には台所に立つ、腹が減ったからと断りをいれずに勝手に作り出す。
俺だったら人ん家の台所になんか行けねーよ。
少しも謙遜しない、少しも臆さない
カグヤには日本人の本能的思考が無いのかな?見た目は日本美を代表する美少女なのにな。
まぁ別にいいけどね、朝食作ってくれんのはこちらとしても手間が省けてありがやーだし。
…なんかこれだと嫌味っぽいな
カグヤは行動力バツグンの気が利く少女って事でどうっすか?
テレビの占拠者であるミコトがいない為に今は俺がテレビを自由に扱える
リモコン〜オン!
映る画面は朝のニュース番組『VIP』
ちょうど今始まったらしい。
司会とその他勢でお決まりの決まり文句
「「「「ビップ〜」」」」
いやー朝だね〜浅田ね〜
これを見ると一日が始まったって感じるわ〜
普段の俺はこんなに早起きしない、だから新鮮な始まり。
日々に変化をつけると周りが新しく見えるもんだ。
俺の変化は美少女が我が家に住み着くってゆー超変化だったけど
すると何気無い日常の声がキッチンから届く
「瑞樹くん、いつも朝ごはんは誰が作るの?」
「作るってゆーか、ふりかけ?」
何せ時間が無いもんで
「へ〜ふりかけ」
少し微笑みながらそう一言
「ふりかけ知ってんの?」
記憶喪失の度合いが全く意味不明だ
うん。意・味・不・明だ
「おめでたい時に食べる食材だよね」
どこ情報だ。ベンジャミンか?
「おめでたい時に食べるかどうかは知らないけど食材って言うのはあってるかな?」
ふりかけって食材だよね?食材に分類されるよね?
何か疑わしいな。
ふりかけって食材って感じがしない
「ミコトちゃんが『めでてー時にはふりかけに限るー』って昨日教えてくれたんだ」
ミコト情報だったのね。たくっ、誤った情報を教えんなよ。
記憶喪失だからって遊ぶなよ
「多分そのバグった常識はミコトだけだと思う」
「えっ?そうなの?」
「普通ふりかけは朝食べるもんだと俺は思う」
“俺”はな、他の人がどうかは知らんぜ
「でもミコトちゃんはそう言ってたよ」
信じて疑わないんだ
そりゃそうか、誰だって最初に聞いた事を信じる。
そうやって自分の世界を作ってくんだからな
——じゃあ俺が“情報”を流したら
思い立ったが吉日
「惑わされるなカグヤ!それはお前を誘導する罠だ!」
声を張り上げて役者な俺は演技を行う
「え⁉罠⁉えっ⁉」
慌てふためくカグヤ
料理の手を止めキッチンを右往左往
罠って言っただけでこのリアクションとは、さすがとしか言いようがない。
「ミコトはお前を洗脳し自分の手下にするつもりなんだ!」
即席の嘘っぱちはクオリティが低い
わけわかめな状況
「え⁉…洗脳って…なに?」
記憶喪失出たー!とんでもタイミングだよ!
「えーっと…」
説明ベタな俺はいい言葉が出てこない
よし、諦めよう。
「とにかく!ミコトはお前にヤバい事をする気なんだ!」
よし、上手くまとめた、俺すごい
「ヤバい事って…」
かぁ〜っと顔が染め上がるカグヤ
そっち想像しちゃった
俺はキライじゃないぞ、うんうん
あ、俺は変態じゃないからな
「夜のアレは私にアレをさせる為の…」
夜のアレ⁉
何それ⁉聞いてへんで⁉
「じゃあ、昨日のあの時のアレもアレをする予行アレ…」
ほんのりと染まった頬に手を当て思い返す様に浸るカグヤさん。
ミコトなにしとくれてんの⁉手出すなよ!!
微妙にカグヤがいい顔してんだけど!
昨日は二人で何をしたんだぁぁ!!
一人仮想妄想する私瑞樹
妄想絶えずに脳がショートしそう
「なら私もミコトちゃんのアレを受け止めてあげないと…」
一人小さくガッツポーズするカグヤ。
その顔は何かを決意したアレなアレだった
「ありがとぅ瑞樹くん、私ミコトちゃんのキモチが分かったよ」
ニッコリと紛れもない笑顔
「あ、あぁ…そう?なら良かったね…」
その笑顔の裏に何を決意したのか
俺は好奇心があったが自制心が勝った
てか、踏み入れてはならない二人の聖域的な気がしたんでいいです。妄想で十分っす
「こらー!!カグヤ!!」
ドタバタギャーギャーと騒がしい足音が近づく
もう皆さんお分かりの例のアノ人っす
キキーっとスポーツカーのドリフトを感じさせる見事なブレーキ音
現れるはミコト
右手に携えるは昨日のスマホ型バグ探査機
その服は『大晦日も巻で』と書かれた白地Tシャツ。
セットなのかな?それにしても何かこのTシャツには悪意を感じる…
どしどし歩いて来てソファに座る俺を無視してキッチンへ
「これやったのカグヤでしょ!!」
そうやってカグヤの目の前に掲げるスマホ。
何をやったのか全く分からない
俺からの場所じゃ何も見えない
ただ怒ってるぽいミコトと困惑するカグヤが居るだけ。
「え?これって?」
「だからこれっ!」
更に近付ける
「おいおい、近過ぎると逆に見えねーぞ」
遠距離からの助言。
それを聞くや否やスッと顔から遠ざける。
今日は物分りがいいミコトさんなのかしら?
「カグヤでしょ」
「え?だって別に言われ——」
「うるさーい!うるさいのだー!」
わーわーギャーギャーと喚き散らす。
ミコトが邪魔したせいで最後まで聞こえなかったじゃんよ。
「とにかく、カグヤのせいだからね!」
ズバッと言い切ったミコトは踵を返してこちらに向かっててくてく歩く
「何の話しだったんだ?」
好奇心旺盛な俺はミコトにソファを明け渡しながらに聞く。
「ん?どーでもばなし」
相も変わらずなミコトはソファに座らず床に座る。
あぁゴメンよソファ、ミコトが来たからしょうがないんだ。
俺もいつもの定位置。ミコトの左側側面に座る
「どーでも話しの割には切羽詰まってたぽかったけど」
左耳から入るテレビの音を無視してミコトに意識を向ける。
「何の話しだったんだ?」
俺が話の核心を聞こうとすると、ミコトはあの青い瞳を僅かに震わせた
それも分かるか分からないかの境界線上にあるほんのごく僅かな揺れ
ふふふ、これは何かあるぞ。
「何の話しだったんだ?ミコト」
その揺れの隙を突き更に核心に迫ろうとする
すると突然
「これっ!」
声を張り上げて左手をブンっと俺の眼下に突き出す。
その突然過ぎる反応と声に思わず
「すいません!」
と言っちまいました。
まぁその事は完璧にスルーされたけど
「これがカグヤにこわされたのだっ!」
手には黒いヤツ。分かるよね?Gじゃないよ
「こわされたって…スマホを?」
「うむ、そのとーりなはははは!」
仰け反り盛大な高笑い
成る程ね、その話だったのか納得〜
とは問屋が卸さないのよ
「それのどこが壊れてるんだ?」
そしてミコトの高笑いが消えた。そのまま固まっている
そう、そこにあるのは無傷のバグ探査機。
壊れてなどいない、これっぽっちも。
「怪しい…」
あの反応といい嘘といい、何か裏を感じる
そして数秒後
俺があくびをしたその時に
バキッ!
何かの破損音が鼓膜に届いた
「⁉何だ今の」
驚くも特に変わった様子はない
「ミズキ、壊れてるぞ?」
得意顔のミコトの手にはバグ探査機
それも悲惨な姿と化した残骸だった。
「・・・・・・・・・・・・え?」
状況を飲み込むのに少々タイムラグが
いやいや今だってよく分からんよ
でもこの現状。先ほどまで無傷無根なあいつは無残悲惨な姿に
「ミズキ、壊れてるぞ?」
二回言わんでも分かっとるわ
ってか
「今壊したよね」
「ん?なんのコテ?」
キョトンなミコト
おいおいおい、ばれないとか思ってんの?
このままやり過ごせるとか思っちゃってんの?
「バキッて、バキッて音が、完璧に人の手が加えられた音したんだけど」
「元からだけど」
「いやだって…」
動かぬ証拠
「机かけてるし」
四つ角の内の一つの角がごっそり削られている。
それが意味するのはもちろん
「ぶつけたよね?」
「あっ、あぁ、これね。えーっとこれは…あっ!、そうそう、私がさっき机にいたGをたたき殺した時に壊したんだよ!なはははは」
誤魔化し方が神がかってんな。逆の意味で
「へーそっすか」
「そっすそっすそーゆーコトなのっす」
「じゃあ、この破片どもは何だ?」
動かぬ証拠その2
机の下に散らばる破片
木製では無く金属製
それが意味するのはもちろん
「壊したよね」
テレビの音が一瞬場を埋める。そして
「はぁ?ミズキナニイッテンデスカー?ニホンゴワカリマセーン。アイドンノーウヒーヒムヒズヒズーベンジャミンミンゼミー」
胡散臭いエセ外国人やめろ。
いや、こいつは異界人だったか
「あははは、ミコトちゃんかわいいっ」
キッチンからヤジが飛んでくる
「ワタシハカワイイデース」
ナハハハハハ
もうミコトも無理やり誤魔化す方向に。
まぁ、ミコトが話したくないなら別にいいか
「ア、ソウデシターミズキーヒトツイイタイコトガアリマース」
読みにくいから止めろ
俺は「何?」と一言
「これ壊れたから請求書よろしくね☆」
「なんとぉ⁉」
星マークが怖ろしいっ!
「あ、あぁ……」
机に体を預けぐだーっとする
いくらするんだろ…これ……
「ミコトちゃんかわいいっ」
今回ばかりはかわいくないよ…
「とほほ…」
「リアクションふる」
冷めた目で俺を見るなミコト
元はと言えば全部ミコトのせいなんだがもう怒る気力がない。
朝っぱらから寿命が縮んだ気分っす
「大丈夫?瑞樹くん」
俺の後ろからかかる声
その言葉が結構辛いっす。
「朝ごはん食べて元気だそっ」
明るい声に励まされ少し気が晴れる
そして机に何かを置く音。
顔を上げてみて見るとそこに置かれていたのは
味噌汁、ホカホカ白米、目玉焼き
ザ・朝ごはん
「やったー!朝ごはんー!」
ミコトの無邪気な嬉しそうな声
これには俺もテンションが上がりそうになる
なんたって何もせずに朝食が出るんだぞ?
超貴重な体験だよ。
いや、まてよ…カグヤが家に住むとゆー事はそれがずっと続く⁉
「はいやぁぁぁァァァォァ!!」
何か思わず奇声上げちゃったよ
「瑞樹くんは今日学校だよね?」
カグヤは机にそれぞれ料理を置き終えて俺と対面する位置に座り何気なしに聞いてくる。
その声はどこか嬉しそう。
「そうでーす。あぁ…宿題があった…」
思いだしちゃったー、やな事思いだしちゃったー
着いたらやらなくちゃー
「うなだれんなーミズキ!早く食べないと冷めるー!」
箸を持って目をキラキラさせて料理に食いつくように見ている。
かわいいな〜
「そうだな、折角カグヤが作ってくれたんだし食うか」
「それじゃーみなさんお手を拝借」
ミコトの号令に俺とカグヤは従い準備
「いよ〜おっ!」
パンッ
「終わっちゃったじゃん!」
「「いただきまーす!」」
俺の渾身のツッコミは完膚なきまでにドライブスルーされる。
もういいもんっ!
二人の冷たい反応を振り払いほっかほっか朝ごはんを口に運ぶ。
「うまい」
自然と感想が漏れる
やっぱ手作りっていいな。手作りってだけで何でもうまく感じる、人の心を感じるぜ。
「うめー!カグヤの料理ミズキのよりうめー!」
それを言わんでくれ、確かにそうだけど
でも落ち込んだりはしない。そんな気が起きなくなるほど、この料理からは人の手が加えられた暖かさがあった。
「ありがとぅミコトちゃん瑞樹くん。始めて作ったから心配だったんだけど」
「えっ⁉始めて⁉」
そんなー、始めてでこれかよー、始めてで俺を抜かすのかよー。
凄すぎて拍子抜けするっすよー
「おかわりっ!」
ミコトは早くも味噌汁を食べ終え、元気にその手をカグヤに突き出す。
おい、俺の時はそんなんしないだろ、普通に食って終わりだろ。
それだけカグヤの料理はうまいって事か
「はい、ミコトちゃん」
鍋はカグヤの横に置いてあり、よそった味噌汁が渡されるとミコトは再びがっつく。
俺は少食なもんでおかわりはしない。
何たってミコトの幸せそうな顔を見てるだけでお腹いっぱいだよ〜うふふ
「瑞樹くん、お弁当作っておいたから」
お母さんか!
あ、突然すいません。でも言わせて下さい。
このポジションお母さんか!
「ありがとなカグヤ」
いやーカグヤが気が利く美少女でよかったーあとナチュラルエロでウハウハー
「冷蔵庫の上に置いてあるから」
——常識がバグってるけどそれは愛嬌だ
「カグヤの作ってくれた弁当か、楽しみだな」
早よ昼にならんかしら
「そんなっ!過度な期待はしない方がいいよ!」
謙遜とは謙遜とは謙遜とは謙遜とは謙遜とは
この子は萌え要素の塊かっ!!
「いやだってカグヤの料理はすごいうまいよ、あー昼にならないかな」
カグヤは少し目を落とす。照れ隠しなんだろうな。わずかに笑っている
このかわいい奴めー。食べちゃいたいわー
——とそこで意外な声が
「私の作るご飯もうまいしっ!」
何故かミコトがこちらを睨んでくる
恐っ!くはない。その表情もかわいい〜
「そうだね〜うん、ミコトの料理も美味しいよ〜」
ミコトのこうゆー表情は貴重だから何か気が抜ける〜むふふふ
「むぅ〜」
ミコトは小さくもはっきりと唸る
萌え要素あるね〜カグヤに引けを取らないよ〜むふふふ
「怒るミコトちゃんかわいいっ」
同感やカグヤ。お前とは気が合いそうだな
「もー!二人とも私をバカにしてー!!」
かわいい声を精一杯荒あげるミコト
もうダメだ…朝でこのパワーとは…自然に能力が発動しちまうよ
「カグヤに果たし状をもうしこむ!」
ドーンと指を突き出す。
果たし状は申し込むもんじゃないぞ
「えっ?何?ミコトちゃん」
戸惑いは見せずにかわいいモノを見る様な優しい目でミコトを見る。
「どっちの料理が瑞樹の舌をうならせるか勝負!」
いきなりだな!
「勝負って?何をするの?」
カグヤは首を傾げながらもミコトのいきなり果たし状を受けてくれるそう
「ふふふ…それはもちろん!べんとーだ!!」
デーンと大々的に言い放った俺の昼飯
って俺の昼飯で勝負すんのかよ!
「私はもう瑞樹くんのお弁当作り終わっちゃったけど」
困った風に冷蔵庫の上を指差す
多分カグヤはフェアじゃないと踏んだのだろう。
何せ冷蔵庫にある食材を好きに使えたんだからな
遠慮無しのカグヤなら冷蔵庫の食材を思いっきり使っただろうし
「だから今から私がミズキのべんとーを作る!」
いち早く朝食を食べ終えたミコトは食器を流しに置きに行くついでに冷蔵庫をオープナー
「あ、あ…ああ」
この世の終わりを見たかの様にガクガクと表情が固まる
やっぱ無かったか。俺としても冷蔵庫に貯蔵するほど食材は入れてなかったし、カグヤが使った分で終わってたのか。
でもカグヤ、食材を使い切るとはお前はどんだけ遠慮無しなんだ。
「これしかない」
カタカタと小刻みに震えながら取り出したのは
韓国のり
「・・・・・・・・・・・・・・・」
すまん、あまりに意表を突かれたもんでコメントが出ないっす。
不思議な無言の鎮圧
『いやータツノオトシゴの酢の物はやっぱり美味しいですね』
空気読めないニュース司会者のコメントが場を埋める
「わ、私をなめるな!これさえあれば勝てるっ!なははははは」
控え目な胸を張り上げて気丈に振る舞う
何かかわいそうだな…
「えっ⁉それ食べ物だったの⁉」
カグヤよ…そこからっすか……
って事は韓国のりが食材って知ってたら使ってたって事か。
カグヤの記憶喪失っぷりに救われたなミコト。
いや、逆にミコトは追い詰められたのか
一つだけ残されるというある意味残酷な状況。
ナチュラルにたちの悪いカグヤ。
「ミズキよ楽しみに待っているがよい、私がミズキの舌をベロンベロンにしてやるからな!なはははは」
後ろ向きに考えないその姿勢は流石っすミコトさん!
「あぁ、楽しみにしてるぞミコト。お前の料理は好きだからな」
久々にミコトの飯が食えるのか、いいな
「なっ!」
突然顔がヒートアップするミコト
「どうした?」
「別にっ!ミズキは部外者だから部屋に戻ってて!」
早口で言い切る
「部外者って料理を食べんのは俺だぞ?」
「料理中は部屋に居てほしいんじゃないかな?ほら狐の嫁入りみたいに?」
カグヤのアシストで理解
あと鶴の恩返しだからな。
「でも暑いんだよな〜俺の部屋」
「いいから瑞樹くん、部屋にこもってて」
「いや、生命に関わる暑さだから」
「大丈夫だよ、瑞樹くんの屍は踏んで行くから」
ニコニコしながらおっそろしい事言われた。
やっぱ何気に残酷ね、カグヤさん。
「分かったよ、じゃあ家出る時にまた来るから」
よっこらしょと立ち上がり愛しの居間から立ち去る。
あ、食器を流しに置きに行くの忘れてた。
振り返って見ると
「よいしょっと」
俺の分の食器を持って流しに向かうカグヤ。
やっぱカグヤはいい奴だ
俺は何か胸に熱いモノを感じながら蒸し暑い自室に向かって足を運ばした。
それってめっちゃ暑いじゃん!
◇◇◇◇◇◇◇◇◇文句◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「あぢぃ〜」
窓を全開ドアも全開にして風通しMAXにしてるのにも関わらず、すっごい暑い。
何故でしょう?
風通しMAXにしてるけど肝心の風がねーんだよ!
俺は今、立っている
立ってじっとしている
だって暑いじゃん。
こんなに暑いなら座れない
なるべく服と皮膚があたらない様に、熱がこもらない様にがんばってます。
「早く時間にならねーかなーあぢぃ」
結構時間は経った。VIPも多分終盤だろう
でもまだ俺の出陣時間ではない。
時間ギリギリに到着するのが俺のポリシー、まだまだ時間的に耐えられる。
「居間に行きて〜あぢぃ」
これで下りてったら俺は二つの弁当を持って学校に行かなくてはならなくなる。
それだとポリシーに反してしまう。
はぁ、変なポリシー持ったな…俺……
「二人は今何してんのかな〜あぢぃ」
どうせテレビ見てんに決まってるよ。
一人地獄に耐えながら時間が経つのを待ってるのに、二人はガールミーツガールしてるに決まってるよーあぢぃ
もぅやだー死ぬぅ
秒針を刻む音が静寂な部屋に鳴り響いている。
普段は気にならない秒針。そうかーちゃんと時間は動いてんのね。
てっきり止まってんのかと思っちゃったよ、誰かが時間操作の能力使ってんのかと思っちゃったよ。
さーて、こうゆーどーしようもない時は気を紛らすのが吉だって言うけど何で気を紛らわせばいいんだ?
「あ、その前に着替えるか」
クローゼットオープン。
白いワイシャツに黒い制服ズボン
ワイシャツって言っても袖が二の腕ほどで切られている夏仕様の奴だ。
どーでもいいんで着替え情報は流しません。
着替え終わり、次は机の上に山積みにされている教科書類を手提げカバンに突っ込んでいく。
『数学1』
何かこれを見ると億劫になるな…
宿題の事じゃないよ?宿題は別にいい。
俺が見て億劫になったのは『1』の部分だ。
『1』があるとゆー事は必然的に『2』もあるわけなんで。
もー意味が分からない、1と2に分ける意味が分からない、まさに意・味・不・明
『古文』
意・味・不・明
真の意味不明だよこれ
何故に過去の言葉を習わなきゃならんのですか?
わろしとか何なんすか?たわしっすか?
僕たちは未来に向かって生きとるのですよ?
過去なんか振り返っちゃいかんのです!
僕たちは今を生きています!
だから先生、僕たちを見捨てないてください!
『ココロが強くなる本』引用
『現代社会』
いいねぇ〜、現代に生きるには重要な奴だよな。
とか思うわけないやろ!けしからん!!
現代って書いてあんのに何故に過去の奴なんだよ!けしからん!!
どうせやるなら『歴史』の方に行けよ!けしからん!!
現代なら体罰問題とか体罰問題とか体罰問題とかやれよ!けしからん!!
きゃりーぽみゅぽみゅとか発熱ミクとか宇宙姉妹の話しろよ!けしからーん!!
『歴史』
書いてある内容一緒じゃん!もう混ぜろよ!混ぜても誰も気づかねーよ!
混ぜるな危険じゃねーよ!むしろ安全だわ!
『ココロが強くなる本』
いいはなしだったぁぁ…涙がとりとめもなくあふれだしゅうていたりだよ…
この世にいらない者なんて無いんだよね…
だから僕たちは今を生きています!!
この次元にこの世界にこの場所で一つの生命として生きています!!
『継続ノート』
すんません。継続ノートって書いてあるのに何も継続してませんっした。
各教科ノートを忘れた時の緊急用のノートでした。
だから数学1とか古文とか現代社会とかがぐちゃぐちゃに書き込まれてます。あ、発熱ミクの落書きや。
病弱キャラっていいっすよね?介護したいっす。
とりあえず面白そうなのはこれだけなんで後はスルーするっすー
「よしっ、準備完了」
忘れ物ないよな、後は弁当を持てばオッケー。
これでいつでも出れる。
時間は8時を過ぎ、ギリギリ到着にはちょうどいいくらいの時間。
「ようやく地獄から解放される、ふぅー」
一安心、ミイラにならなくてよかったー
手提げカバンを持って下に下りる。
タタンタタンとリズムを刻んで
居間に顔を出すと二人が横に並んでお出迎え。
「どうした?」
後ろに隠しているのはアレだろう?そうアレだ。
「「はいっ」」
二人から出されたのは風呂敷に包まれた弁当箱。
カグヤのが水玉の風呂敷でミコトのが白地で何か文字が書いてある風呂敷、何て書いてあるかは分からんけど。
「ありがとな二人とも」
二つの弁当箱を受け取りざまに感謝感謝
「ミズキ、私のべんとーをたべて腹を抜かすがよいぞ、なははははは」
「できれば腰を抜かすよ、ってかよくあの食材で弁当ができたな」
「がんばれば成せぬコトなんてないのぞよー」
今日のミコトは時代劇風だな、毎日の変化はとても大切だ。まぁミコトと居れば飽きないけど。
「口に合うか分からないけど精一杯作ったからね」
カグヤよ、その笑顔をおかずに何杯もイケるぜ
「おう、昼が楽しみだ」
美少女二人の勝負弁当、非献体になれて光栄です!
弁当箱を手提げカバンに突っ込んで発車準備完了。
「行ってきまーす」
過去の俺なら決っして言う事のなかった無縁仏な言葉。
でも今は
「「いってらっしゃい」」
過去は過ぎた。
俺は今を生きています!!
七話目です。ご視のほどありがとうございます。
今回は前回の続きになります。
突然のミコトとカグヤの決闘。活動力バツグンのお二人のどちらに勝利の女神は微笑むのでしょうか。
この決闘エピソードは物語全体としては無くても大丈夫なサブエピソードです。説明不足だったキャラクターの説明を兼ねたちょっとしたヤツです。
物語はまだまだ続きます。クライマックスに入るにはまだ時間がかかると思います。
途中途中で至らぬ箇所がございますが、精進して行きます。
それでは次回も読まれる事を願って
ありやとうございやした!!