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やっとファンタジーっぽくなったわ

◆◆◆◆◆◆◆ビフォアメモリー◆◆◆◆◆◆◆



「夜の街を駆け抜けて〜♫

迷子の子猫を導きゆく〜♫

それこそが我らのお勤めよ〜♫」

腕の中でのん気なこった

歌のうまさを見せつけてんのか?


ミコトをお姫様だっこ中のわたくし瑞樹

歌詞の通りに夜の街を駆け抜けてる諸行だ

住宅街に灯る光がやけに目に付く。

夜の街って言うだけあって出歩く人はいない

時刻は九時ほどだった気がする。

みんな家族団欒かぞくだんらん中なのかな?


ミコトは歌を口ずさみながらスマホ型の警報器(?)をいじっている。


「その機械は何なんっすか?」

辺りが暗いからか、スマホ型のヤツから発せられる光がかなり目にくる。

まぶし〜

まともに見られん


「さっきも話したけど、“異界の生物”が出現したからそれを知らせる装置。それとその場所を教える装置」


「ってことは“バグ”が発生したってことか?」

俺のあやふやな記憶の中から正解そうな言葉を選ぶ。


「そゆこと」

よしあってた


「やっぱ“召喚系”のバグ…なのか?」

俺の平均的な頭脳から正解そうな言葉を選ぶ。


「だろうね〜“どこの異界から来たのか”分からないけど」

よしあってた


すいません皆さん、何言ってるか分からんよね。

俺も初陣なんでたどたどしいっすけど。

これで分かった人がいたら是非是非ぜひぜひ仲間になっていただきたい。


えーっと少しこの世界についてお話ししたいところなんだけど…

「ミコト、後どのくらいで着きそう?」

「プロの判断によれば〜まだつかなそ〜でーし」

「了解でし」


まだ時間があるとのことなので走りながらお話しましょう。



世界には“バグ”と呼ばれるものがあるそうなんだ。

その名の通り世界の異変

バグとは“通常ではあり得ない現象”のことを指す。

つまりは超常現象などのこと。


バグがいつ頃から世界に発生し始めたかは知らない。

ミコトは結構前からと言っていたけど、それ以上は教えてくれなかったな。


まぁどうでもいいっすけど。


バグには種類があってめっちゃくちゃ多いらしいらしい。

数え切れんってミコトは言ってたな。


まぁどうでもいいっすけど。


その幾つものバグの中に生物を召喚するものがあるらしい。

それも異界の生物


俺たちが住んでいる次元とは別の次元の世界

一言で“異界”

通常では決して交わることのない異界

だけどバグの発生により異界の生物がこの次元に飛ばされているらしい。



あの『らしいらしい』すいません、全部ミコトから教えられたことなんで実際には体験してないんだわ。

まぁ、今日それらを実感することになるんだけど。


えーっと、それでその飛ばされた生物を俺たちは保護する活動をするらしい。

これからね、今やってるけど。


おいおい皆さん、まさか異界の生物を殺すとか考えなかった?

そう思ってたなら残念ハズレ

そんな非人道的な血も涙も鼻水も体液もない事はしないっす。


そいつらだって生き物だよ?

こっちの次元に飛ばされて来たからってホイホイ殺す分けないやろ。


だからと言って野放しにしとくのもヤバい。

こっちの次元の事情を知らないあいつらが何をするか分かったもんじゃない。


生きるために人間を捕食するかもねw

笑い事じゃない。


ならどうするか


俺たちは異界からこの次元に飛ばされてきた生物を保護することに決めた。

一方的にミコトが決めたんだけどね


めんどくさがりかつ現実的目線で世の中を観れて時に冷酷な判断をするクールガイな俺は殺処分した方がいいんじゃないかと提案したんだけど


『それじゃかわいそう』と悲しげに訴えてきたんで保護の方向に固まった。

俺としても謎の生物を殺すのはイヤだしね、もしかしたら戦闘で殺されるかもだし。

まぁ、そうなったとしても負ける気は0だけど。



ちなみに俺が異界の生物を保護する理由わかる?

世界が危険に曝されるからじゃないよ?

そんなヒーローみたいなことは全く考えてない。

俺にとって世界なんてどうでもいい。



前にも言ったがミコトは“異界の人間”。

この次元に居るべきではない人間。

ミコトはバグにより“ゾ〜ル”と呼ばれる異界からこちらの次元に飛ばされたと言う。

それを入れるとミコトも異界の生物に分類される。

だからミコトも保護対象になるわけ。


ミコトはな、自分みたいに異界からこちらに飛ばされて来たかわいそうな生物を守りたいんだと


俺にとってはどうでもいいことだ

他人の事情なんかマジどうでもいい

何たってエゴイストっすから。


なら何でミコトに協力するのか

そんなのは簡単なこと。


お互いがお互いに得があるから


ミコトは一人だった俺と一緒に居てくれる

その代わりに俺はミコトを助ける。

損得の考えで世の中は回っているからな、こんなような好条件でなければ俺は手伝う気は毛頭ない。


とかカッコつけてるけど、俺はただ単にミコトの役に立ちたいだけ。

一人だった俺と一緒に居てくれることを選んでくれたミコトのためにな。


で、保護活動を行うにあたって俺が余りにも無力だったためにミコトが俺に能力ちからをくれた。

なんでもミコトは人“に能力を与える能力”の持ち主らしい

かなりチートっぽい能力だよな。


俺はこの一ヶ月間。

ミコトとポカポカしたゆるふわライフを送ると同時に、この能力の使い方や性質を覚えてきた。

キモチが上がると身体も強化されるって能力、多分俺の能力はこんなようなものだと思う。


能力の性質が分かってからは特に能力については考えなくなった。

俺的にはただの付属品みたいなもんだからな、能力持って「やった〜やったー」ってはしゃぐバカもんじゃない。

実際に能力者になったって実感はわかないし、俺にとっては能力なんかこの程度のもんなんだ。

世界を守ろうとか大々的発言をするほどに覚悟が座ってないとも言い変えられるな。

能力を持った奴が能力について無頓着ってのも笑える話だ。


ミコト的には『もっと深くまで探ってみたい!』って意気揚々と俺の身体を人体実験しようとするほどに俺の能力に好奇心があるらしいけど。


人によって見方が違うんだな



そんで今、俺は能力を使ってミコトの手助け中。

あのスマホみたいな機械…もうスマホでいっか。

異界から飛ばされて来たやつ居るよーってスマホから警告されたために、俺とミコトはそこに向かってます。


ここで疑問を持っていただきたい。


スマホは今日届いた、かなりいきなり届いた。そして俺たちはスマホから連絡があったから異界生物の元へと向かっている、それはつまり今まで保護活動は行なってこなかったって事になる。


俺とミコトが保護活動を行ってなかったんなら、それまでにバグの発生で召喚された異界生物はどうなっているのか。


ミコトは結構前からバグは発生していたと言っている。


まさに野放し状態なんじゃないか?


なのに目立ったニュースなどはない


この理由をミコトに聞いてみたけど返って来たのは「わかんない」の一言。


ミコトが分からないなら俺に分かるはずがない。


それにどうでもいいし



説明終了

すっごく早く終わっちまったよ

この説明で分かってくれた?

俺説明苦手だからさ。ホントにすんません



「・・・・・・・・・・」


…...それにしても急だよな

なんでミコトは今日いきなりスマホを頼んだんだ?


寿司の出前をとるはずがなぜかミコトはスマホとシマパンを頼んだ。

その時は突然すぎて普通に流しちゃってたけど、今思うと変だよな。

今の今までゆるふわライフしてたのに、なんの前触れもなく異界生物の保護と言う本来の目的が始まった…

せめて予告ぐらいして欲しい?


今日はなにか特別な日なのか?


「・・・・・・・」

深読みした所で何かが分かる訳じゃないし

このことは不問とする。


そしてスマホの代金が気になる。



◆◆◆◆◆◆幽霊じゃないっすよね?◆◆◆◆◆◆



「その角を右に曲がって〜」

「了解」

ずっと直線に走っていた俺はブレーキアンドターンゲッツ


そこは住宅街の闇の部分。

光は失せ照らすものはなく、暗闇の静けさが際立つ。


ってこの通りは俺が普段通学に使ってる裏路地やないか

不審者ってまさか異界の生物のことか?


「ミズキおろして」

「はいよ」

お姫様だっこをして走っていたのに疲れは微塵にもない俺、さすがパワーアップ状態の俺


「ここら辺に反応があるんだけど・・・」

ミコトは辺りを見てスマホを見てを繰り返している

へ〜、スマホって場所も提示してくれんだ、便利だな。

ってか、そうでなきゃここに異界生物が居るって分からなかったか。

マジでスマホがないと活動できないんだな〜



暗闇に光る目印ともいえるスマホ・ザ・ライト、極光とはこの事を言うのかな?

それをびくともせずに見るミコト


ミコト凄いな、夜の路地と画面オンのスマホじゃ明るさの差が半端じゃないのによく交互に見れるな。

俺なんかスマホを直視できねーよ。

太陽に匹敵するよ、この光り。


せっかく暗闇に慣れたのにスマホの光を見たらまた真っ暗闇になるしな。

異界人は眼が達者なのかしら?


「・・・・・・・・」


ミコトは黙ってスマホに集中している

俺は光をなるべく見たくないのでミコトと背中合わせに立つ。


この静けさは何だかあれだな

裏路地に男女二人というシチュエーションは中々体験できないよな。

何だかいけないキモチになってきちゃうかも。


そうそれは人間に授けられた原始的欲求….

あ〜ダメだ!ダメだ!

そんなやますぃ事は払いのけろ!


自制するのだ瑞樹よ。お前ならできる


風に乗ってミコトのシャンプーの香りが漂ってくる。


そうそれは誘っているかの如く…..

あーいいわ〜解き放ってしまう〜

ってダメだ!ダメだ!

そんなやますぃものは解き放つな!


自制するのだ瑞樹よ。お前ならできる!


星でも眺めて心を落ち着けよう


そうそれは星座観察…...

わ〜綺麗ね〜お星さま〜


生憎の深〜い曇り空でした


ちきしょー!さっきまで晴れてたのに!

何て世界は非情なんだ!



月明かりのない裏路地は四方八方が暗く歩くのも一苦労

まさに一寸先は闇だ


使い方違うね。




「ここまで真っ暗だと幽霊でも出そうだな」

俺はミコトに話しかけてやますぃ心を消し去る作戦に出る。


「幽霊ねー…..」


ん?それだけ?

「言葉のキャッチボールがなっとらんぞミコト、男を扱うにあたってその反応だと話をふった俺が辛くなるからな。人間としての基本的コミュニケーション術を拙者が教えてしんぜよう」


「・・・・・・・・・・・・・・」

もう反応すらしてくれない

しょぼーん

キモチゲージ下降します。


「いくら異界生物を見つけたいからってスマホを見続けてると目が悪くなるぞ」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

もう気配すらない

しょぼーん

キモチゲージ落下します。

やますぃ心は消し去りました…はい…..


「せめてさ…何かしらの反応してよ…...」

振り返りミコトに悲痛な訴えを。


だがそこに純白の後姿はなかった。


「え?」

どゆこと?ワッツ?ワァイ?ウェアー?


先ほどまでの位置にミコトの姿はなく、ただ暗闇が永遠と続いているだけだった。


まさか…..置いて行かれた?


急いで四方を見回すも暗すぎて何が何だか分かったもんじゃない。

住宅街から漏れる光がわずかな希望。

でもその光りも遠い。


ヤバそうだな….この暗さじゃ探せねーぞ


歩いてみるもま〜怖い、視界が奪われるってこんなに怖ろしい事なんすね。


せめてスマホの明かりさえあればすぐに分かるんだけど、そんなものはなく歩いて探すしかない。


なんで明かり消えてんだよ、あの光はどこいった。


あーマジで怖い。

暗闇の中男女二人で居るとやますぃ事考えるのに一人になると途端に怖ろしくなるわ。


人の心理って不思議だな〜

今度そうゆー本読んでみようかな。


「さて、どうするか….」

こーゆー緊急事態時に取るべき対処法はズバリ

「無闇に動かない」

思い立ったが吉日、もう一歩も動かない

マネキン状態。

こうなったら俺はしばらく動かないぞ。

動かざる事地面に突き刺さった鉄柱の如し、だ。

















いやー、不安ですわ、怖いですわ。

俺は一体なにしてんでしょうな、この裏路地で一人マネキンしてる俺は。

もし一般人に見られたら超恥ずいよ。

いや向こうが逃げ出すな。

だって怖いだろ、こんなひと気の無いところにポツンと何かがいたら。

発狂もんだぜ?

トチ狂ってお友達になりに来ちゃうよ?

いやいや、そんなのされたら俺が怖いわ。

でも多分そんなんされたら友達になっちゃうかも。



「・・・・・・・・・・」

ミコト来ないな…..


この状況を打破するには声を出してミコトを呼べばいいだけの話しだ。

それは最初から分かっている。すっっっごい最初から分かってた。初めにこの答えが出たぐらいに分かってた。

でもな、俺にはそれができない!!

ここは言い切るよ

俺にはそれができない!!

思いついてたものの選択肢には無かった!!


なぜだか分かるはずだ。


理由なんか無い

とにかく声が出せない。

出そうと思っても躊躇ためらってしまう自分がいる。


これはなぜか、分かる人には分かる。

小心者なら分かるはずだ!!

そう、全国にはびこる少年少女ならこの心を分かってくれるはずだ!!


だから俺は声が出せない。

ただじっとして『幽霊でないよね?』とか思っているだけ

あ、この場合は異界生物か


そっちの方が怖いよな

俺が何より怖いと思っているのは実体のあるもの。(幽霊も十分怖いけど)

それが異界生物なんて得体の知れない摩訶不思議生物だったりしたら俺ヤバイよ。

もう理性崩壊の自信あるよ。

そしたらもうヤバいよ、ご乱心するよ。


あー、そんなコト考えるなよ俺

余計に怖くなるだろ


「はぁ〜」

異界生物か….ホントに保護できんのかな?

今更ながらに不安になってきた。


全部が全部ミコトみたいな人型な訳が無いし

俺の想像だと絶対に異形な姿してるし

化け物じみた姿してるし!


ホントにやめてくれよ

保護できないよ…..


こうゆーのダメだよね、後になってマイナスになるの。

でもマイナスになったら止められない、それが人としての本能。

ほらどんどんマイナスに….


例え保護したとしてもそいつがあり得ない大食らいだとしたら…食費が〜

例え保護したとしてもそいつがあり得ない獣臭だったとしたら…あぁぁ〜



挫折しそう…

不戦敗とは正にこのコトを言うんだな…..



「・・・・・・・・・・・・よしっ」

ミコトを呼ぼう

あ、唐突ですんません、選択はいつでも唐突なんで。

このままグダグダしててもしょうがないからな、損得で考えたらこの時間が無駄。


無駄を省くならミコトを呼べばいいと無理矢理自分を奮い立たせる。


よしっ言うぞ!


心を決め、息を吸う


「せーのっ!ミコトーぉ…さん….....」

声がか細くなって行く

やっぱダメっした。

小心者はいつまでたっても小心者だそうです。


ミコトさ〜ん….早く戻ってきて〜…..


「グルル…」

グルルか…誰だ〜腹なったやつーヒロかー?

って…..あれ?

急に感じる気配。

何だこれ…なぜだか冷や汗が…..


「グルル…」

後ろからグルル鳴ってるけど、何だろうこの状況は…よく分からないんだけど

誰か…説明して…くれない?

あ、じゃあそこの君、どんな状況?これどんな状況?


「グルル…」

獣臭がする…獣臭が….するよぅ


「グリル…」

何を焼くの…何を焼くの⁉



現実を直視したくない俺。

振り返れば答えはすぐそこにある

でもしたくない。

したら俺は発狂する自信がある。


なら尚更なおさらしたくない。

初めて出会う異形の存在に恐怖心なんかを持ったあかつきには保護なんかできるはずがない。


だから俺は振り返ることはできない。


いや、俺はすでに振り返れられない

自らの意思で。


それは至って単純な人間としての心理

恐怖心


それに縛られてしまった俺はどうすることもできない。

そう、ただのマネキン…


「ミズキ避けて!!」

呪縛を解く一言


「!!」

俺はその声に反射的に従いアスファルトを思いっきり蹴っ飛ばし前方に跳ぶ。

勢い余ってめっちゃ擦りむいた

いてーなこの野郎。


ごぅ!!


俺の居たであろう箇所からは空気を切る凄まじい音が。

それを聴いた瞬間悪寒が走った。

もう少しで俺はスライスチーズになるところだった。

例えが微妙ですいません。


「大丈夫⁉ミズキ!」

近寄ってくる足音

声からそれが誰なのかすぐに分かる。

あれほど(?)捜していた君主様。


「大丈夫だミコト…」

ミコトの手を借りて立つ。

その時に俺は自然と“あいつ”と対峙する立ち位置にいた。

だから自然にあいつの姿が目に入った。


「チキン…」


初めて見るミコト以外の異界生物

その姿はミコトとは違い正に異形のモノだった。


ボディビルダーを彷彿ほうふつとさせる

筋肉モリモリな体


上へとそそり立つ見事な耳


2mはある巨躯きょく


それらはどれも白い体毛で覆われている。

覆われていないのは六つに割れた俗に言うシックスパックの腹筋部分。

そして紅く光る鮮血のような眼光。


この姿を見てまず初めに出てきた言葉は


「ウサギ⁉」


ウサギだ、これはウサギだ!


体が明らかにおかしいけどそれ以外は俺の知っているウサギ。


狼男ならぬウサギ男

そんな風貌


腕を組み仁王立ちする姿には捕食者の余裕みたいなのを感じた。ウサギなのに。



「おいミコト…あいつが俺たちが捜してた異界生物か?」

あいつと距離を保ったまま俺はミコトに問う。

ふざけたなりをしているウサギ男。

ちょっとおもろいな、これなら発狂はしないな。


「そう…ミズキ…..あのウサギが私たちが捜してた異界生物」

俺とは相反あいはんした風にミコトの声はいつになく重々しく真剣そのものだった。


「あれを保護するのか?」

なんかユーモア入ってるよ、この生物

大丈夫?このウサギ男。

面白いよこいつ。

危険なのに変わりはないけど、笑えるよこいつ。


「グリルチキン…」

ウサギのくせに肉食発言するあたりからこの生物はイかれているな。

やっぱダメだ、笑えない、こいつは危険だ。


「・・・・・・・・・・」

俺はミコトの返答を待つ。


何かを考えている風なミコト。

保護するのか否かを決めているのだろう。

決めるにしても時間をかけてほしくない。

こんな危険な生物なら一返事で答えが返ってくるようなものだが、ミコトは深く考えている。深ーく深ーくな。


自分と同じ境遇にある生物を保護するのがミコトの目的。

その初陣であるこの時を不祥事で終わらせたくないのだろう。


だけどそんなことを考えてたらこちらがられてしまう。


いつだって選択は突然だ。

そんな時に判断する基準は自分が初めに何を思ったのか。

俺は少なからずウサギ男に恐怖心と対抗意識とユーモアを持っている。

それが俺が思ったウサギ男の印象。

だがウサギ男をどうするのかを決めるのはミコト。

ミコトの判断に俺は身を委ねる。



その間にも時間は流れ、ウサギ男がいつ攻撃してくるか分からない状況。

だがウサギ男は動かない。

こちらを真っ赤な瞳で見ている。


強者のおごりなのか知らないが仁王立ちのままピクリともしない

ピクリとしているのは耳だけだ

俺たちを逃がすまいと道を塞いでいる様にも見えた。

何たってこの裏路地は狭い、いや狭くないけどそんな雰囲気がする。


でも でっけーうさぎ男が仁王立ちしたら正面突破できる程の隙が無くなるのは確実。


まぁ、いざという時はうさぎ男に背を向けて全力疾走するけど、それだと追いつかれた時がヤバい。

こちらとしても気が気でない状況下。

まぁ、がんばるよ


ウサギ男を見つめたまま静かに自然に俺は腰を落とし戦闘体制に入っていた


「ミズキ…」

重々しく放たれた決断の時


「なんだいミコト」

それとは反対に軽く返す俺


ミコトは俺に優しく抱きつき力を込めて身を寄せる

ミコトの体温が伝わる。


能力発動

キモチゲージスタート

傷回復&体力UP

戦闘体制は万全

いつでも戦える状況


そしてミコトは顔を隠すように耳元で囁く


「殺して」


情を殺した者が辿り着く単調な声。


「どいてくれミコト」

その言葉に従い身を引くミコト。

その表情を見るのはヤボな気がしたから俺はウサギ男に集中する。

ウサギ男も仁王立ちから戦闘体制に移行。


もしかしたらウサギ男は待っていてくれたのかもしれない

俺たちの決断を。

律儀なやつだ。これから殺されるのにな。


「グリルチキン」

「あぁ、こいよウサギちゃん。こっちがグリルチキンにしてやるぜっ!」


俺は一気に距離を縮め接近格闘の位置に詰め寄る。

しかしそれはウサギ男とて同じポジション。

共に格闘タイプが戦闘する場合どちらが先手を打つかがカギ。


俺は人体の急所の一つ鳩尾みぞおちに向けて人体の出せるスピードを超えた突きを繰り出す。

普通の動体視力じゃ追えないぜ。

これも能力発動中だからできる絶技。


「グリル!」

だがウサギ男の方が若干上手だった。

俺の放った必殺の突きはウサギ男に掴まれ、そのまま投げ飛ばされた。

柔道タイプかな?このウサギ男は


世界がぐるりと一周半して

すぐさま壁に激突

落下先にはアスファルト

頭から落下

いたっ!!


「ミズキ!」

どっからかミコトの可愛い叫びが聴こえる

安心しなミコト、無事だから


まぁ、このシチュエーション死ぬパティーンだよ。

ミコトだって心配もするわな。

でもこれは普通人間なら。


俺にとっては

「いてーなこの野郎」

と軽くすむ。

なんたって能力発動時の俺はダメージなんか喰らいませんから。

喰らってもすぐに再生する。


「やられたらやり返すのは柄じゃな——!⁉」

脚に力を込めほぼ並行に横っ跳び

これも能力発動時だからこそできる荒技


ちなみになんで俺が跳んだか分かる?


「グリルンパッパ」


ウサギ男が目の前まで迫って来てたからだよ

しかも回し蹴り体制の超絶ヤバイやつ

あれ喰らったらへし折れるかもね


ウサギ男の放った回し蹴りは空を切りあの音が暗闇に残っている。

俺を殺そうとする音。殺人回し蹴り


自分の強度を試したことないから折れるかどうかは分からないけど直感で回避した。

人間としての危険本能が出たんだろうな。


ウサギ男はゆっくりとこちらに振り向く

勝者の余裕っすかね、余裕出まくりっすね。

いいねぇ〜ウサギちゃん。

戦闘中に余裕は禁物だよウサギちゃん。


俺はすでにあんたの間合いの中よ!


「グリル!!?」

「今更遅いわ!!」


人体の急所の一つベンケイさんに思いっきりムエタイキック!!


どゴッ!!

鈍い音

確実に決めた音、


「チキン!チキン!」

脚を抱えて飛び跳ねるウサギ男

ははははは、ウサギとは本来こうあるべきだ


だがここで油断しては俺もウサギ男の二の前になる。

反撃の隙を与えずに追撃

2mある頭に向かって飛び回し蹴り!!


スパーン…


いいねぇ〜、いい音や


ウサギ男は呻く間もなくアスファルトの地面に倒れこむ。


今の俺には恐怖心が微塵にもない

得体が知れないから怖いって思うんだ。


だから今は恐くない

こいつは恐るるに足らない。油断をかます奴はいつの時代でも負ける。


“怖い”と“恐い”は違う。



ウサギ男はなんとか立ち上がり体制を立て直す。

見事なファイティングポーズだ

もう油断の色は無い

俺を敵と認めたのかな?


「ミコト、殺すのか?」

「殺っちゃえ〜」

軽っ⁉さっきの重苦しい空気はどこにやった⁉


「グリル」

ウサギの鳴き声とは思えないな

いや、こいつをウサギと見てはいけないのかもな。


俺も戦闘体制に入り、再びまみえる準備完了

それを確認したウサギ男は地面を蹴り一直線に突っ込んでくる。


あれは恐らく俺を掴んで投げ飛ばす気なんだろう。


ウサギ男もバカだよな、俺が構える前に攻撃すればいいものをわざわざ待ってくれるんだから。


まだ勝者気取りなのか?

なら刻んでやるよ

どちらが勝者なのかを——


俺は突っ込んでくるウサギ男を待ち構える。


そしてギリギリまで引きつける

これも能力発動時だからこそできる荒技。

体を掴もうと伸びる白い手。

それを俺は“後ろに倒れる”ことで回避。


そして上を通過して行くウサギ男に向かって

腕の力で体をアスファルトから突き放し体を跳ばす。


「おおおおおりゃぁぁあ!!!」

ロケットを想像させる超絶ヤバイ蹴りを腹にめり込ませる。


「チキ..⁉」

ウサギ男からしてみれば予想外の行動だったのだろう。

何の耐性も持たずに受けた蹴りはウサギ男の体を上空に“吹っ飛ばす”

あの巨体を飛ばすとは…俺の力ヤバイな


とゆーのは俺のただの思い過ごし。


ウサギ男は蹴りを受ける瞬間に体を浮かせ俺の蹴りのダメージを減らしていた。

まぁそうだよな、ただの蹴りであんなに飛ぶはずないし、実際に手応えもあんまなかった。足応えか?まぁ、いいや。

これはウサギ男の回避だと考えるのが妥当だな。

だがな、たとえ避けたとしても上空では隙だらけだ。


今度こそ終わらせてやる、ジ・エンド


俺は有り余る身体能力で流れるように立ち、強力な脚力で上空にいるウサギ男に追撃をしようとアスファルトを蹴る。


——しかしそれは阻止された


「え?」

なぜか知らんが後ろに柔らかい感触が

そしてそのまま俺は前方に倒れた。



◆◆◆◆◆◆はい!すいません!◆◆◆◆◆◆



何かに押し倒された俺

それが俺にのしかかっている。


「だ!大丈夫⁉キミ!」

慌ただしい声は女の子特有のかわいい声。

いや確かにかわいい声だがこれだと少し語弊がある。

この声には聴いていて落ち着く優しい波長を感じる。


「怪我してない⁉」

け、怪我はしてないけど…


「頭打ってない⁉」

あ、頭は打ってないけど…


「死んでない⁉」

し、死んでないけど…とにかく


「どどどどどどいてくれませんっ!か⁉」

声裏返ったーはずい!


よし、今の状況をお教えしよう


背中にあるなんとも言えぬ違和感

この回避不可能な圧迫で俺の活動領域が限りなく制限されている。

ストレートに言おう。

おっぱいが押し付けられている。

それにドギマギした俺は金縛り状態

もう俺にはどうしようもない。

どうしようもないんだー!!


「あっ、ゴメンね」

ゆっくりと離れる違和感

背中に残る感触。


助かった〜と思う自分と

残念だな〜と思う自分がいることになぜか言い知れぬ恥ずかしさが出た

はずいわ!!


「大丈夫?」

「あ、大丈夫…」

一人で起き上がれるもん!


起き上がりざまに立ち上がり後ろを振り向く

謎の人物を拝むために。


膝立ちをしてこちらを心配そうな表情で見つめる一人の少女


整えられた顔。

日本美の骨頂の様に美しい。


黒水晶の如くきらめく瞳。


艶やかな長い黒髪。

闇夜から照らされるわずかな光が黒髪に乱反射し、髪の美しさを際立たせている。


その髪の隙間から魅せる豊かな胸。


いや、こんな説明はいらない


とにかくこの少女は“美しい”

“可愛さ”ではなく“美しいさ”


だがその美しさから魅せるこの表情は少女に可憐さも与えた。

あらゆるものを与えられた者


だが俺と同じくらいの年に感じる

まだ若者の初々しいオーラを感じる

おそらく高校生、それも1番に輝く美少女


買いかぶり過ぎかも知れないがそれほどに少女の容姿は俺の目を引きつけていた。


見惚れるなんてことはミコトと会って以来だな。

この容姿を見て俺がノックアウトしない辺りから、俺はマジでこの子に見惚れるんだな。


そしてその少女の姿を見ているとなぜか高鳴っていた心が静まって行くことに不思議と気がついた。


「ホントに大丈夫?ぼーっとしてるけど」

「あっ、大丈夫大丈夫、全然へーきへーき」

いや〜いいもん見たなー

やっぱ世の中って素晴らしい。


少女は何かを思い出したかのように慌ただしく立ち上がり。

「ほ、ホントにごめんなさい!ぶつかっちゃって」

頭を下げて謝ってくる。

可憐な少女が謝ってくるとはなんとも背徳感溢れるシチュエーション。


「いやいや、わざとじゃないんだろ?」

少女は首のアップダウンアップダウンを繰り返す。


「ならいいよ、全然大丈夫。気にすることでもないからな」

「あ、ありがとぅ」

ぱぁ〜っという効果音が入りそうなほど見事なふわふわスマイル。


いや〜いいもん見たなー

やっぱ世界は素晴らしい



「ミズキ…なにしてんの….」

俺はこの時、今日一番の冷や汗をかいたことだろう。


黒髪少女の後ろにオーラを放ちながら立つ

我が家の主

アマテラス⇔ナイトアージェルート


こくこくと歩み寄ってくるその姿は…

うん、俺死ぬかも。


「いや、あ、あのですねミコトさん、決して私はうつつを抜かしていた訳じゃなくてですね、なんとゆーかその謝るなんて立派だな〜と浸っていただけでして、そんなことはこれっぽっちも思っていなくてですね、最近の若者に足りない人を敬うキモチを垣間見れてまだまだ人生捨てたもんじゃないと人類に希望を持っていたり持ってなかったり、そんな大人な俺だったり」

せめて弁解を試みるもそんなものは力を持たない。


「そんなのはどーでもよろしー」


完璧に跳ね返される


ついに俺の目の前に。

俺の頭を無理やり掴み、強引にミコトは口元に俺の耳を引き寄せる。


そして静かに

「後でベンジャミンだから」

「あぁ…ベンジャミィぃン…」

処刑勧告された。


黒髪少女は何が起きているか分かっていない様で、不思議そうにこちらを見ている。


「なぁミコト、あの子はなんなんだ?」

「私が知るわけないでしょーが」

それもそうだよな

物知りなミコトでも知らないことぐらいある。


「何でこの夜の路地裏に居るんだ?」

「だから私が知るわけないでしょーよー」

そうでしたね

すいません二度も、何か話しかけたくて

あ、そうだ


「そういえばミコトはさっきどこ行ってたんだ?」

思い出したのはミコト消息不明事件のこと


ミコトは呆れた様に

「れでぃが無言で居なくなるのはなぜ?そのくらい分かってよね」

「あー、すいませんヤボな質問でした、以後気をつけます」

簡単な理由でした、はい。

そこの君もこうゆーシチュエーションの時は気をつける様に。


「はぁ…まったくもー、ウサギ男逃がしちゃったじゃん、ミズキがさっさと勝負つけないからー落胆酪農楽天したよー」

どんなだ。


そういえばウサギ男いないな。

いつの間に逃走中したんだ?ハンターはここにいますよー


「すまんかったよ、次には仕留めるから」

「その言葉に二言は?」

「えー、多分ない」

「あっそ、がんばり〜」

あ、呆れられてる。

すいませんミコトさん、自分に自信が持てないタイプですので。

そう、これぞ日本人の美徳ですので。



ふと奥を見ると未だ裏路地に居る少女。

黒髪少女は相変わらずこの状況が理解できていない様子。


「ミコト、どうする?」

この『どうする?』は黒髪少女についてだ


「そうねーとりあえずウサギ男追っかける?」

いい間違え方だ、よくあるよ話のすれ違いって。


「今日はもう無理だろ、明日だって学校あるし」


「はぁ…ミズキは事の重大さを全く分かってない」

やれやれと首を振るミコト。


「あの凶暴なウサギ男が野放しなんだよ?ヤバイに決まってるでしょーよー」

俺にとっては別にヤバくはない。

野放しにしてもこっちに被害が来なければそれはそれでいいと思っている。


他人の為に命を張るほど俺はヒーローじゃない。


だがそれを直に伝えれば絶対流し目で見られることは百も承知。


オブラートに包んでやんわり断るか


「だとしても、場所が分からないんなら捜せないだろ?」

スマホはウサギ男の場所を表示してはいないよう。

バグ発生の場所を教えてくれるだけの機能のようだ。

異界生物の追尾までは機能外、便利なんだかそうじゃないんだか。


「そうだけどー、むぅー」

眉をひそめて口を尖らせる

かわいい〜ミコト、そのまま保存したい


ミコトはそのままちょっと考えると

「分かった、今日はひとまずこれまでにしとく」

「あーざーす」

さすがミコト、優しい〜


「でも私は許したわけじゃないんだからねベンジャミンだからね」

なぜそこでベンジャミン出てくる。


「もう分かったから、恥ずかしい記憶を掘り返さんとて下さい」

エセ関西弁を発動

発動条件⇒後ろめたいキモチがある

でも誤解は解かんといけんな。


「ミコトこれだけは言っておくぞ、確かに俺はうつつを抜かしてた、だけどあれは 不幸な事故、俺は悪くない、ましてやあの子に罪を着せようとなんか考えてない」

当の本人は


「え?え?私?」

突然のふりにあたふた。

そこは無視して話を続ける。


「さっきの件は俺にもあの子にも非はない

図々しいかもだけど事実にあれは単なる事故なんだ、非があるわけがない。ミコト的には許せない事かもしれないよ、俺が女の子に押し倒された事も事実だし、それに嫉妬するのも分からなくもない。俺だってミコトが誰かに押し倒されたらムカつく、そりゃ全力投球で殺人球投げるほどに。俺はバツを受ける、だけどあの子には手を出さないでくれ、全てを俺に仕返せ」


「なに言ってんの?」

キョトンとキョトンキョトンしてるミコト。

このやろーかわいいじゃねーか。


「だからバツは俺だけでいいって話し」


それを聞くとミコト何故か頬をつり上げてニヤニヤ

「えーっとー誤解してるみたいだけど、別に私は押し倒されたコトは全くムカついてないよ?」


「え?」

ワッツ?ワァイ?


「私がムカついたのは“ウサギ男を仕留められなかったコト”についてーだよ、バツもミズキだけにやるつもりだし」


「って事は俺の早とちりか…?」


「早とちりってゆーか、うーん、早とちりだね」

おーう、すれ違いって凄いっす。


「そうだったのか…」

肩の力が抜ける。

一体何の言い訳をしてたのかね。

俺は煙を掴もうとしてた様です。


「だから安心してー、私は押し倒されたコトを何とも思ってないからねーそこまではお仕置きしないよ」

ニヤニヤからニコニコに移行しながらちょいとショックな事を言われる。


何がショックかって?

そりゃあ、ミコトが俺に対して特にこれと言った感情が無い事にだよ。


ミコトはそう言った感情を抑制してんのかな?

もしくはマジで俺の事を何とも思ってないのか。

後者だったら何か悲しくなるな…


「ホントはメッチャお仕置きしたいんだけど、ツミもないのにお仕置きするのは理不尽だと思うからねーそこは私の良心に感謝しろーなははははは」

暗闇に反響するミコトの笑い声

俺にはそれとは逆に沈むキモチがある


罪ならあるよ…女の子の胸の感触を楽しんだ事


「なにチョッと落ち込んでるのー?」

俺の心情を知らない無邪気なミコト

このキモチは奥にしまっておこう。


「いや、別にー何でもないっすミコトさん」

「あっそーならいい」

無理に人の心を探ろうとしないのがミコトのいい所なのかもしれないな。うんうん。


俺が一人浸っているその時に

「ミズキ、チョッと耳を貸しんさい」

腕をちょいちょいとこっち来いアピール


「何?」

そして何かの作戦を立てるかのようにヒソヒソ話し出す


「ミズキ、あの子どーする?」

あの子とは皆さんご存知黒髪少女。


「家に帰すだろ」

その言葉を聞いたミコトはなぜか苦笑い。


「いやー、あの子家がないって言ってた」

ホームレス高校生⁉


「いつ聞いた⁉」


「ミズキがウサギ男と戦ってる時に」


「あーそうなの」

ミコトはやる事が早いわ。

って、俺が死闘を繰り広げてた時にそんな事を話してたのか?

ミコトもミコトだけど黒髪少女も黒髪少女だよな。

肝が座ってるって言うのか?

まぁ普通じゃないな。


「他に何か言ってた?」


「あとはねー知らないって言っとった」


「知らないって?」


「そのまんま、他に知ってるコトはないって」

ワッツ?ワァイ?


「何だそれ?記憶喪失か?」

自然とにやけてしまう。

いいキャラしてんなあの子。

つかみはバッチリなんじゃないか?


「信じてないでしょー、聞いてみれば?」

素っ気なく促す

分かった、聞こう。

俺は黒髪少女の方を向き質問を開始する


「出身地は?」

俺の突然の申し出に多少驚いた色を見せる黒髪少女


「え?えーっと…わかりません…」

申し訳そうな黒髪少女

予想通りの返しだ、この程度なら記憶喪失とは言えないな。

実際に出身地を知らないって奴もいるし、俺とか。


「じゃあ、何で夜の路地裏に居たんだ?」

俺がメッチャ聞きたかったコト

だから勿体ぶらずにすぐに聞く。

可憐な少女がこの淀みまくってる裏路地にどんな用があって来たのか。

ふふふ、背徳の予感!


少し考えた風の黒髪少女

「えーっと…わかりません…」

そして申し訳そうに苦笑い


「ん?理由ないのに居たのか?」


「う、うん、気付いたらここにいた…?」

いた?


「ここに来るまでの事は?」


「えーっと知らない…です」

苦笑い

あらー、危険な香りがして来たよ


「どうやって来たの?」


「知らないです…」

苦笑い


「気付いたらここにいた?」


「うん」

苦笑いのオンパレード

あらー、これは


「危険な香りがして来たよ」

大切なので二度言ったぜ。


「ほらね?ミズキー記憶喪失少女だったでしょ?」

自信たっぷりに胸をはって『どうだ〜』と言わんばかりの姿勢だ。


「かなり最近の記憶喪失だけどな。まぁ最近と言うか“さっき”記憶喪失を起こしたような口ぶりだったけど」

精神科にでも行かせるかな。


「そうなんだよねー不思議系美少女なんだよね」

「ごもっとも」

俺とミコトにジロジロ見られている黒髪少女は、目を泳がせてもじもじしている

恥ずかしアピールか

さすがだなこの子は、素でやってんのか?


「あ、あのぉ…私帰る所がなくて…」

その状態で言われて断る奴はバカだな。

断る理由はないし美少女ならウェルカムゥ!

あ、下心はないっすよ。

良心良心、うんうん


「いいよ家に来て、ここに居ても危険だからな」

「えっ、い、いの?…」

ぎこちなくまだ不安そうな黒髪少女


「いいよなミコト」

我が家の最高裁判官である主に許可をとる


ミコトは少しも悩まずに即答

「断る理由はないしねー聞きたいコトもあるしイイと思うぜー!」

おっ、やけに乗り気だな、いいねぇ〜


「あ、ありがとぅ」

世界が救われる笑顔


はぁ、世の中の女子がこうなってくれればな〜

あ、重要な事を忘れてた


「聞き忘れてたけど君の名前は?」

これを知らなきゃな。


「な、まえ?」


「え?」

ちょ、ちょいちょいちょい、まさか名前を知らないのか!?

今まで会った事のない事例に焦る。

取り乱してはいかん、結果を待つんだ。


「名前は・・・・かぐや・・?・・・あ、カグヤ!私の名前はカグヤ!よろしくね」

再びスマイルプリキュアー


「お、おぅ、よろしくカグヤ・・・」

だけど俺はそれどころじゃなかった


あの謎の空き時間はなんだ

名前を思い出す時間か?

ならあの疑問系はなんだ

何で自分の名前に疑問を持つんだ?

記憶喪失ってそーゆーもんなのか?

本当に記憶喪失か?


考えても深まるのは謎ばかり

やっぱ精神科に行かせようかな?


「カグヤよ、私がこいつの姉貴分のミコトだーなはははは、覚えて起きんしゃい」

やはり胸をはり演説気味に誤情報を流すミコト

「どっちかって言うと俺がミコトの世話を焼いてんだからな?」

ひっそり訂正するも声は届いておらず


「うん、ミコトちゃん」

ニコニコ微笑むカグヤ


早い事にすでに仲良しこよしなお二人

微笑ましい限りだ。


「弟分さんよろしくね」

ぎこちない様子はもう過去の様だ。

そして間違った情報、まぁ別にいいけど。


「よろしくなカグヤ、あと俺の名前は瑞樹だから」


俺とミコトそして記憶喪失(?)の少女カグヤ

雨の降り出しそうな曇天の中

我が家へ向かって歩み出す。


——降り出した


「いきなりだな!」

「はしれー!」

「うん!」


我が家へ向かってランナウェイ





五話になります。ご視のほどありがとうございます。

サブタイから分かる様にファンタジーに入って来ました。

ファンタジーって言えば戦闘ですよね、戦闘シーンをいれてみました。

自分なりに頑張りました、はい。


そしてこの物語のタイトルにある様に記憶喪失少女登場です。

今後の注目キャラ間違いなしです。

自分的には全てのキャラに注目して欲しいのですが、まぁ記憶喪失少女に注目して下さい。

まだ物語は執筆中です。

これから記憶喪失少女とその他のキャラをどう絡ませて行くか、難しい所でもあり楽しい所でもあります。


それでは

次回も読まれる事を願って

ありやとうございやした!!




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