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喰らい合い  作者: 鳴海歩
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第三話 How To Work #2

すいません!遅くなりました!

では今回は銃撃戦があるので、楽しんでください!

 「…こりゃ驚いた。あの地上げ屋、ポール・ポッツも真っ青な程のくそデブだぜ。ほら、ジュン。見てみな。」


僕たちは張から貰った資料を、ジャックの家で眺めていた。地上げ屋は、贅肉で垂れた目に、小さい口、丸い鼻という、ジャックの言葉を借りるなら典型的な「くそデブ」だった。まあよくぞここまで、という風な肉のつき方だ。恐らく昼間から酒や肉、果ては金にものを言わせて女も食っているんだろう。正直気分が悪くなった。


「でも肝心の『青龍』の資料がないよ?」


どこを見ても、「青龍」という名前しか出てこない。性別も、年齢もわからない。分かるのは、張から聞いた、ナイフを投げるということぐらいだ。曰わく、「青龍」という名は、その地上げ屋が寄越してきた手紙にそう書いてあったそうだ。


「まあ、資料が一切無いということは痕跡を残さないということ。痕跡を残さないということは凄腕ということだろう。久しぶりに厄介な敵だぜ。」


ジャックは冷蔵庫から缶ビールとコーラを出すと、コーラを僕に渡して言った。


「ひとまず出掛けるぞ。飲みたきゃあ飲め。」


僕はコーラを一気に飲んで、支度を始めた。












「さて、今すぐにでも仕事に取りかかりたいが、まずは新人教育からだ。」


ジャックは僕を射撃場に連れて行った。ジャック御用達のようで、特別な場所に連れていかれた。

その射撃場は普通じゃなかった。ハンドガンのみならず、ショットガン、ライフル、果てはサブマシンガンまであった。


「じゃあまずは左端のグロック17からだ。18は無いから諦めろ。個人的には携帯しやすい19が好きなんだがな。」


ジャックが言っている事は全く分からなかったが、一番左端のハンドガンを取った。そして、ジャックが立っている位置まで行き、銃を構えた。


「違う違う。そうじゃねえよ。」


ジャックは僕の腕を掴み、そして強引に動かした。


「腕は伸ばせ。背中は真っ直ぐ。銃の衝撃を受け止められるようにするんだ。あと照準を合わせろ。」


ジャックの言う通りにして、僕は的を狙って撃った。見事的に命中し、僕は喜んだ。


「やった!あたった!」


「まあ上出来だ。だが的に当てるだけじゃあない。的のいろんなところを撃てるようにするんだ。こんな風に。」


ジャックは僕から拳銃を取ると、片手で、すぐに、軽々と標準を合わせ、的目がけて撃った。


「見てみろ。」


僕は半信半疑で的を見た。見ると、人型の影の頭の部分に穴が開いていた。


「本物が相手なら、これで任務完了ミッションコンプリートだ。」


凄い。心からそう思った。僕もいつか…と、ジャックに憧れを抱いた。


「じゃ、もう一度だ。」


ジャックが言ったと同時に銃を構え、頭を狙って引き金を引いた。けど、穴が開いたのは腹の部分だった。ジャックにはまだまだほど遠い、と思って、僕は苦笑した。













「まあ要は、一人残らずKO(ノックアウト)させればいいんだ。」


「へー。それがこの状況の説明になるの?」


僕は小さなバーで僕とジャックとマスター以外、他の客全員から銃口を向けられていた。しかも脅しじゃなく、殺気が銃口越しに感じられる。数は十四、五人いた。なぜこんなことになったのかわからない。僕はあまりにも動揺して、カウンターでコーラを何回も口に運んだ。


「さあな。まあ大丈夫だ。こいつらの腕だったら死にはしない。…多分な。」


多分?僕はその言葉を聞いて、ジャックの顔を睨んだ。ジャックはまるで僕の顔が見えないかのように無視し、マスターに言った。


「おい、最後にもう一度訊く。ここはあの地上げ屋がよく来ると聞いた。なら知っているだろう?『青龍』は一体どんな奴だ?」


「知るか。金を払ってさっさと消えろ。鬼畜米英が。」


「そうか…」


そしてジャックは僕にしか聞こえないように喋った。


「ジュン、俺のすることを真似ろ。『アクション』のかけ声が合図だ。」


僕は一瞬訳が分からなかったが、「アクション」の言葉で気付いた。

…まさか。

不安でいっぱいな僕を尻目に、ジャックは意気揚々と言った。顔は不敵に笑っている。


「じゃあ力ずくで訊くしかないな!」


撃鉄ハンマーを起こす音や、スライドを引く音が複数、騒音のようにバーに響いた。ちょっと、ちょっと待ってくれ…。


戦闘開始アクションだ!ジュン!」


「ああまだハンドガンの使い方しか習っていないのに!」


ジャックは真後ろにあるテーブルを蹴り上げた。僕も同じようにテーブルを蹴り上げる。テーブルを立てて、その後ろに隠れた。ジャックはもう銃撃戦を始めている。僕は深呼吸をして、心を落ち着かせようとした。が、よくよく考えたらこんな状況で落ち着ける訳がない。


「出来るだけ一発で戦闘不能にしろ!」


そんなこと無理に決まっている。反論したかったが、今そんな暇はなかった。僕は借りていたハンドガンを取り出し、スライドを引いて、テーブルから身を出した。













ジュンは始めてにしては上手くやっていた。敵の弾を避けるタイミング、狙い、撃ち方とかを。

やっぱりこいつは普通と違う。土壇場になると、想像以上の力を発揮する。あの雨の日も、普通ならナイフを目の前にして相手に背中を向けてしまうものだが、こいつはナイフを“奪い取って”、“相手を刺した”。火事場の馬鹿力ってやつだとは思うが、この世界じゃそれが何よりも重要だ。

それに今愚痴をこぼしてはいるが、実際顔は笑っている。あいつが気付いているかは解らないが、この状況を楽しんでやがるのは確かだ。


「ジャック!弾がない!」


ジュンが俺に訴えかけてきた。そう言えば弾倉マガジン一つ分しか渡していなかったな。しかし俺も余裕がないしな…。

俺はジュンに“裏技”を教えることにした。どのみちこれもできないようじゃこの先すぐ死ぬしな。


「そこに落ちてる銃を拾え!」


俺はテーブルの向こうにあるリボルバーを指差した。元の持ち主が撃つ前に倒したから、まあ弾は入っているだろう。


「はあ?!」


ジュンが本気で俺の言葉を疑っていた。本気で言っているのか?という顔だ。まあ気持ちもわからなくないが。


「あの、銃弾が飛び交う場所にあるあれを?!」


そうだ(Yeah)!」


ジュンは頭を抱えたが、しばらくすると、意を決したようにテーブルから体を出した。四つん這いで頭を低くして(飛行機の「安全のしおり」に載っているようなものだった)、銃をとると、全速力でテーブルの裏に回り込んだ(ちなみにこの間終始悲鳴をあげていた)。正直スマートとは全く言えないが、まあ弾に当たらなかっただけ良しとしよう。


「もう金輪際こんなことはしない!今度からは登山に行く時以上に入念な準備をする!」


正直笑えた。これからこんなことはざらにあるというのに、このくらいで音を上げるとは。まああまりにも酷な事だからそれは言わないでおこう。だがなジュン。“山の天気は変わりやすいんだぜ”。


「まああと三人だ。俺はとりあえず休憩させてもらうぜ。」


と言って俺は煙草に火をつけた。













ジュンはリボルバーを使って、残りの三人を四発で倒した。最後の一人を倒すとき、外してしまった。


「残念だな。もう少しで完璧パーフェクトだったのに。ま、初めてにしては上出来だ。

…おっと、肝心な事を忘れていたぜ。」


俺は、静かになったバーの裏口からこっそり抜け出そうとしているマスターの額に銃口を向けた。

マスターは情けない悲鳴をあげて、二、三歩後ずさった。


「言え。『青龍』はどんな奴だ。」


「お、俺もよく知らねえよ!わかるのは、ちょうど、そのガキくらいの歳の奴だってことぐらいだ!」


マスターはジュンを指差して言った。俺もジュンも驚いた。『竜合会』の奴らを痕跡を残さず屠ってきた奴が、ジュンとそう変わらないガキ?


「なに?ガキだと?」


「そ、そうだよ。何分無口で、顔も襟の高いコートとサングラスでわからねえんだ。噂じゃあ地上げ屋が拾ったって聞いたぜ。」


ガキか…。こりゃ厄介だ。そういうやつは戦いを通じて戦いを学んできたから、これからも

成長するかも知れねえ。まあ、早いうちに芽を摘むっておくチャンスと見るか。

それにこのマスターから引き出せる情報はこれで終わりみたいだし、帰るとするか。

俺は銃を降ろすと、マスターに背を向けてドアに向かって歩いて行った。


「じゃあなマスター。これからはお前もショットガンあたりを持っておいた方がいいぜ。…行くぞジュン。」


しばらくバーの中は靴音だけが聞こえた。が、入口付近にさしあたったとき、マスターは下品な笑い声をあげた。


「げははははは!甘いぜジャックぅ!俺の店をさんざんにしておいてそのまま帰すかよ!」


マスターが言うと同時にジャキッという音(恐らくハンドガンのスライドだろう)がした。俺が身を反らした時に銃声が響き、俺の顔の前を銃弾が走って行った。マスターはあっけにとられている。そして俺はスライドを引き、マスターの腹に向けて銃を撃った。


「ぐあっ!」


「…なぜなら、下手でも当たりやすいからな。」


マスターはしばらく苦しんで、床の上に崩れ落ちた。いいやられ役っぷりだ。そしてその様に少し笑った。


「今日はほとんど収穫無しか…。家で酒でも引っかけよう。」


店から出た時に俺はそう言った。太陽はとっくに沈み、すぐそばの大通りでは人が賑やかに歩いていた。


「どうだ、付き合うか?ジュン。」


俺はジュンを向いて言った。ジュンは何か考え事、いや、何か思うことがあったのだろう。俺の話を聞いていなかった。


「子供か…。」


だがジュンはすぐに俺の言葉に気が付き、


「いいね。でも僕はコーラにするよ。」


と言った。


「わかった、じゃあ行くか。」


そういって俺たちは帰路に着いた。

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