感じたことのない暖かさ
少年に教えられた道をいくと、街のざわつきが聞こえてきた。
「私の名前はルナよ。森に捨てられた娘よ。」
自分の出で立ちを可哀想な少女だと言い聞かせて街に出ることにした。
その街は実に栄えていた。街を歩く人々は日傘をさしていたり、高級な布をまとっていた。リサは自分が住んでいた街ではないと安堵するも、街の人々から送られる目線に気がついた。
そう、リサの髪はボサボサで服もボロボロ。黒いロングスカートも膝辺りで破れていて、汚れで白くなっていた。
高級な街にそぐわないかっこで、まさに可哀想な少女であった。
しばらく歩いていると馬に乗った二人組が近づいてきた。
「そこの女の子、いったいそんな格好でどうしたんだ?ここの街の子供ではないな、森の村からきたんだろう?何を盗むつもりだ?今日こそ捕まえたぞ。」
と言って周りを囲まれ、腕を引っ張られた。
怖くなってリサは抵抗するも、男の力には勝てなかった。
「何も盗まないわ!!離して!!」と泣き叫ぶも聞かれない。
「何を言っても無駄だ!大人しくついてこい」
と馬に乗せられてしまった。このままだと捕まってしまい、身元がばれて本当の家に返されてしまうと思い、絶望しか浮かばなかった。
すると後ろからある女性の声が響いた。
「警察の方。その子を下ろして下さいませんか。」
その女性はとても美しいブロンドの髪をまとめていて、高級とは言えないもお金持ちの家政婦のようであった。
「この子は森の村の子だ。やっと捕まえたのだ。なぜ離す必要がある。」
「その子はご主人様のお孫様であります。どうがご主人様のお耳に入る前にお離しください。」
騒動に集まった周りの人々がざわつき始めた。
「あのヨーブロント卿にお孫様がいたのか。」
「可哀想にあんな姿で、きっと森の村の奴らにいじめられたのだろう」
それを聞き警官は驚き焦って、リサを大事に下ろした。
「ま、まさか、大変失礼なことを致しました。申し訳ございません。どうか、どうかヨーブロント卿には…」
と警官2人はその家政婦に頭を下げていた。
「この事は穏便に。ここで気づいてよかったです。ところでこの子は可哀想に、最初からこのような汚れた格好をしていたのでしょうか?それともあなた方が懲らしめたと言うのでしょうか?」
リサは驚きのあまり涙が止まらず体が震えていた。
「ま、まさか私どもがそのようなことは!森から出てきたとこらでした。森の村の子供達にいじめられたのでしょう。可哀想に震えている。」
「ではその森の村の子供達を捉えるよう、早く仕事に戻ってください。」
「作用でございます!では失礼いたします!」
そう言って家政婦に一礼し警官は帰って行った。
「大丈夫かしら、怖かったわね。とりあえず家へいらっしゃい。その格好では目立ちます。」
そう言われるがままにリサは家政婦に連れられて行った。
「私はヨーブロント卿の家政婦のライナーレインよ、あなたの名は?」
「ルナです。あ…ありがとうございます…。」
「ルナ。素敵な名前ね。話は後でするわ、とりあえずお風呂に入って着替えましょう。さあ、着きましたよ。」
そう言って門をくぐった先には壮大な庭が広がっていた。彩とりどりの花が咲いていて庭の真ん中には噴水がある。そしてその広場の先には赤レンガで作られた豪邸が待ち構えていた。
「お帰りなさいませ、ライナーレイン様」
と豪邸で働く者達が声をかけてくる。
「ただいま帰りました。サンドレアにお風呂の準備をして下さいと伝えてください。そしてご主人様にはあの子が帰ったと伝えて下さい。」
「かしこましました。ですがライナーレイン様あの子はもう…」
「ええ。わかっているわ。ご主人もわかっておられるのよ。だからこそそう伝えて下さいね。」
「かしこまりました。」
リサは訳のわからないまま、準備のできたお風呂に通された。するとそこには、女性が三人いてリサを洗ってくれるという。
「ルナ様、お洋服をお脱ぎください、お湯が冷めてしまいます。」
そう言われたリサはとんでもない貴族の家に入り込んでしまったと思った。いくらのリサの家でも家政婦は大勢いたが、身体を洗ってくれる家政婦まではいなかったのだから。
「ルナ様、お早くお願いしますよ」
急かされたリサは半強制的に脱がされてしまった。