気になる少年
霧が濃い林の中、少しの肌寒さと水の雫でいつの間にか寝ていたリサは満足した睡眠を得られないまま目を覚ました。
今まで体験したことのない美しい朝日にリサは浸っていた。
虹色に輝く空中の霧、その中を優雅に飛び回るヒバリの声がどこまでも響き渡っている。
木々の間から差し込む光が、いまいるがとてつもなく広く広がる森の真ん中にいることを知らせている。
暗闇にすんでいたリサはこの景色に心底見惚れていた。
「なんて美しいのかしら…」
昨日の出来事をふと思い出したが頭を横に降り記憶を閉じ込め木から降りて森の奥へと進む事を決めた。
何時歩いただろう。太陽は真上に来ているから昼過ぎであろう。だがリサは太陽の登り沈む位置なんて学ばないできたから、実際何時なのかも、自分のいる方角もわかってはいない。
それでも足を止めることはなかった。
美しい自然を満喫し、透き通る風を全身に受け生きている事を実感していた。
だがその時間はいくつも続かず、リサのお腹がなった。
「そろそろお腹すいたなあ…。」
ふと周りを見渡して気づいた。木や緑はこんなにもたくさんあるのに果実が一つもなっていないことを。
そしてよく木を見ると、もぎ取られた跡が残っている。
「近くに誰か住んでいるのかしら。」
リサは目を凝らして周りをみるも、家は見当たらない。
だがしばらく歩くと、人が通ったように雑草達が割れている場所があったのでそこに続くことにした。
割れた道を5分くらい歩いた先には、身体よりも大きな籠を背負う少年の姿が見えた。籠いっぱいにリンゴが沢山詰められていた。
あまりにもお腹が空いているリサは声をかけることにした。
「すみません、」
「わああああっっ!」
少年は驚いて飛び上がり、重い籠の方に倒れてしまった。
「わあ!ごめんなさい、私驚かすつもりは…」
「あなたは!?お、オバケ…?」
半泣きで問われた言葉は可愛いく、リサは笑ってしまった。
「オバケじゃないわよ!私森で迷ってしまってお腹が空いて倒れそうなの。りんごを一つもらえないかしら。」
男の子はそれでも驚きを隠せない様子でリサを見つめていた。
「あの、私そんなに変かしら…」
「お…お姉ちゃん…?」
「お姉ちゃん??あ、ごめんなさい、私の名前はルナって言うの。あなたは??」
リサは身を明かさずルナと名乗った。
「そうだよね、お姉ちゃんな訳ないよね。」
と言って転んだ拍子に籠からもれたりんごを拾い集め始めた。
涙を吹きながら男の子は涙を吹きながらため息をつき、りんごを一つリサに投げた。
突然にリサはキャッチできず落としてしまった。自分の瞬発力のなさに驚きながらもりんごを拾うと男の子はクスッと笑った。男の子相手に小馬鹿にされたリサはムスッとするも男の子はようやく喋り始めた。
「僕の名前はなんて言ったらいいかな、特に決まってないんだ。妹になら名前がある。マッダレーナ。お姉ちゃんはアムリーナ。お姉ちゃんはもういないけど、ルナはお姉ちゃんに似てるんだ。」
にこやかに話しているけど表情の裏にはとても寂しいものが隠れている様子だった。
「僕はもう行くから、りんごここの先にもっとある。その先にはすぐ街があるから行けるよ。」
と言って、その街とは反対の方向に歩き始めた。
「あ、ありがとう!!」
そう言って男の子の背中を見送ったリサは街の方へ歩き始めた。