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非力なお姫様だっこ  作者: 葛しょこら
お姫さまだっこした方①
2/5

入学式本番、恥ずかしい自分

「え~、今日から君達287名は本校の生徒として、この新校舎と共に・・・」

という校長先生の入学式のあいさつを聞いていた。他の生徒は緊張しながら期待で胸を膨らませている一方、自分だけは恥ずかしさが自分を埋め尽くしていた。




 あの子を送っていた後、置いてきたカバンを取りに行ったせいで散々な目にあったからだ。





◆◆◆午前8時42分◆◆◆



 一応、一番に学校に入っていた自分は遅刻していて、全力疾走していた。



 2組の教室のある4階まで階段で駆け上がる。1年生は4階で、2年生は3階、3年生は2階に教室があるからである。



 1年が動けってことかなど文句を考えながら登っていく。汗が吹き出し、止まる様子もない。さすがに、坂を往復していれば仕方ない。




―――あの子を保健室に連れて行き、カバンを取りに戻ると自分の新品の腕時計は長針が5を過ぎていた。あの子を見つけてから彼女を送るだけで、約40分以上のロスだ。


 彼女を送る時は必死だったあまり気付かなかったが、この学校はひどいことに目と鼻の先に学校を見せておいて正門は裏にあり、かなり体力と時間を使った。


 一人だけ逆走してカバンを取り、また走り出す。



 再び、学校に入ると先ほどのような出迎えは無かった。そして校舎に入り、今に至るのだ。


 4階に到着し、教室の上に掲げられた組の番号を確認する。どうやら、階段に遠い方から若い番号に並んでいるらしい。階段から6つ先の教室が2組のようだ。

 

 2組のドアに手をかけ、ガラっと開けた。



 そこには自分以外の全員が定位置に座っていて、自分が座るであろう座席が一つ空いていた。そして全員の視線が自分に向けられる。その中で、一際ギラつかせていたのが黒板の前で腕組みをしながら仁王立ちしている先生であった。


「入学式早々遅刻とは良い度胸だな。早く席に着きなさい」と重低音の声が教室内に響く。

「す、すみません!用事があったもので、すみません!」ただ、ひたすら謝り、空いている席に着いた。


 それに加え、苦痛なことがもう一つ、それはクスりとも笑われない事だ。まだ仲良くもなってない人の失態を笑うほどの心の持ち主はいなかった。自分からしたら、笑ってほしいものであったのだが・・・。などと考えながらカバンを席の横に付いているホックにかけた。

 

 良いことするとロクな目に合わないモノだ。とりあえず、この汗で濡れた制服をどうにかしたいと思いながら、暑さを紛らわせるためネクタイを少し緩めた。




「自分、さっき逆走していた子やんな?」と後ろから女子の声が聞こえた。


「え?」と振り返る。


「君、渡辺君だよね?あたし、石川、石川眞由美よろしくね」と自己紹介された。


「よ、よろしく」とたどたどしく返す。


「なんで、戻ってたん?」


「カ、カバンを道に置いていたから」と答えるも恥ずかしかった。


「え?嘘!?あのカバンって自分やったん?」と自分のカバンを見ていたらしく、さらに恥ずかしい。


「う、うん」


「なんで置いていたん?」と当然の説明をされたのだが、先生から講堂に行くよう指示され、質問の答えを言えず、話は中断された。






◆◆◆現在◆◆◆



「・・・では、これで話を終わります。」


「正面に礼」と司会進行の声で一斉に礼をする。


 そして、入学式が終わった。



 教室に戻るも、まだ緊張はほどけない。男子のしゃべり声は未だ無く自分だけが、唯一、後ろの岩井さんのおかげで話せていた。男子というのは奥手というのかコミュニケーションというものに案外弱いもので、女子の方がその辺は優れている。



「で、なんで、置いていたん?」と先ほどの質問を再び投げかけてきた。


「いや、別になんでもないよ。恥ずかしいから、もう忘れて」と頼む。


「え~、逆に気になるやん」


「あはは・・・」とごまかすと、先生が教室に入ってきた


「今日はこれで解散だが、渡辺だけ挨拶の後に集合」と重低音が自分の耳に刺さるのだった。



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