忌み子として生まれた私はいじめられた挙句捨てられたので復讐を決意します。でもうまくいかないようです。
【気持ち悪い】【近寄るな】【死ねばいい】【なんで生まれてきたの】【穀潰し】
もっと色んな事を言われた気がする。
だけどよく言われるこれが頭にこびりついてる。
両親は屋敷の外へは出してくれない、「お前は忌み子だから」だって。
私の目は左右で色が違う。
左目が金色で右目が青色なのだ。
瞳の色が左右で違う子は災厄を招き家に不幸をもたらすと言われているらしい。
お姉様たちの結婚がうまくいかないのも私のせい。
家が貧乏になるのも私のせい。
全部全部私のせいなのだ。
申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
頑張って幸せを運ぼうとした事もあるんだよ?
お姉様達に綺麗な花を摘んで花束にした事も。
汚いって言われて踏みつけられちゃったけど、
えへへ
次は頑張って料理もしてみた、すごく美味しく作れたんだけど食べてもらえなかったな、屋根裏で鍋いっぱいに食べれて幸せだったけど食材無駄にするなって叩かれちゃった。
お祖母様の言う通り毎日幸せ日記つけてるんだよ?
今日はね小鳥さんが手に乗ってきてくれたの!
そしたら母様が見ててね、久しぶりに話しかけてくれたんだよ?
何してるか聞かれたから小鳥さんと遊んでたって言ったらさ……「産むんじゃなかった」って言われちゃってさ、でも!でもね!私はお母さんの子供で良かったよ!って言ったら……叩かれちゃった、エヘヘ。
ねぇお祖母様?笑ってたらいつか良い事が起きるんだよね?お祖母様が死んじゃってから
1回も良いことなんて起きてこないよ?
ポタリ
ありゃりゃ、泣いてない!泣いてないから!
泣いたら怒られちゃうからダメなんだよ?
「ねぇお祖母様?」
黒いシミが手帳に作られる
「助けて、助けてよぉ」
ドンドン!!
屋根裏の床下を叩かれる。
誰かが私を呼ぶ合図。
慌てて目元を拭って日記を隠してすぐに階段に向かう。
階段を下りた先にはミラお姉様とリアお姉様がいた。
「お、お帰りなさいリア姉様!」
リアお姉様は今日お見合い行っていたらしい。
メイドさんたちが話してるのが聞こえてきて気になっていた。
うまくいった日は機嫌がいいから、
…でも。
「アリシア!またあんたのせいでうまくいかなかったじゃない!」
「ほんと、あんたがいなければ私達はとっくに素敵な殿方と添い遂げてるっていうのさ」
「ご、ごめんなさい、いつも迷惑ばかりかけてしまって…エヘヘ」
「っ!気持ち悪い笑顔見してんじゃないわよ!」
パシン!
…痛い、でもいつもと同じだ。
「不快にさせちゃってごめんなさい」
「はぁ、全然収まんないわ〜、ねぇあんた何歳になった?」
「え?えっと14…です」
「ふ〜ん?、じゃあもう立派な大人よね?」
「え?は、はい」
「ならこの家から出ていきなさい!あんたがいなくなればこの家の悪い運気も全部なくなるでしょ?アハハハ」
「それいいわね!あんたがいなくなっても悲しむ人なんて世界のどこにもいないんだからさ!アハハハ」
分かんない、どうすれば良いんだろ?いつも耐えてれば終わるのに…。
「ぼけっと突っ立ってないでさっさと出てけよ!」
「あ、あの」
「お見送りが欲しいんじゃない?あたしらで外まで連れてってあげるよ」
その言葉の後に両脇を抱えられ無理やり歩かされる。
「ま、待って!日記、日記だけでも持って行かせてください!」
「日記〜ん〜、ダーメ!だって日記なんてないもの?」
え?何を言ってるの?
「あぁ、そうね貴方の日記は私らで処分しとくからありませ〜ん!」
え?だめ!
あれはお祖母様がくれた大切な物なの!
「おい、暴れんな!」
「ちょっとリラ、最後くらい良いんじゃない?好きな物持たせてもさ?」
「え〜?まぁミラお姉様がそういうなら…」
腕を解放されて顎で早くしろと急かされる。
急いで屋根裏に戻り日記を抱きしめる。
「これだけは」
急いで下に戻り自分の足で外へと向かう。
「ねぇ?それってお祖母様からもらったやつでしょ?」
無視したかったがそんな反骨心はとうに消え失せてる。
「は、はい大事な形見…です」
「お祖母様と仲良かったものね?あたしも良くしてもらってたの知ってる?」
「え?」
「可愛がって貰ってたのよあたしもね、ねぇ最後にあたしにもお祖母様の形見見せてくれない?中身は見ないからさ」
床を見て何も発することが出来なかった。
触らせたくない、でも怖い…
おずおずと日記を手渡す。
ミラお姉様が周りを見てると思った瞬間後ろから羽交い締めにされる。
「え?え?」
「リラそのまま抑えときなさいよ?」
ミラお姉様がポケットから取り出したものを見て私は暴れる。
やだ!やめて!
「ダメー!!」
ミラお姉様が、持つマッチが日記帳へと近づき端から燃え広がる。
あ、ぁぁ。
そこから先は覚えてない。
外に追い出され、土砂降りの中を彷徨うように歩いている。
手には燃えカスとなった煤が雨で流れ落ちていく。
…なんでこんな酷いことができるの?
私が何をしたの?
全部耐えてきた。
叩かれても、無視されても、罵られても。
全部全部全部!!!
お祖母様から褒められた髪を切られた時だって我慢してきた!!
もうやだ…
死にたい…
横を見ると廃屋の割れたガラスが目にはいる。
鏡に反射するその瞳の色が憎い。
これがなければ私は普通の生活を送れたのだろうか?
屋敷の皆と仲良くできたのだろうか?
地面に散乱するガラスを見て、拾い上げる。
震える手を必死に抑えーー
「おー?こんな夜更けに嬢ちゃん一人で何してんだ?」
「ひっ!」
廃屋から小汚い男が顔を覗かせ顔を引きつらせる。
「な、なんでもありません、すぐに帰りますので」
足早に森の方へと向かう。
グチャグチャ
グチャグチャ
私が歩く音とは別の泥を踏みしめる音が聞こえる。
恐怖で呼吸が速くなり心臓が脈打つ。
「ちょっと待ってくれよ」
その言葉と同時に私の肩に触れるゴツゴツとした手に反射的に手に持っていたガラス片を手の甲に突き刺す。
その瞬間に一気に森の中を駆ける。
後ろで男の怒鳴り声が聞こえたががむしゃらに走った。
「はぁはぁ…はぁ」
どれほど走っただろうか?
走りながら後ろを振り返るが誰もいない…よかっ
ズザァー!
「あぅぅ痛い…」
木の根に躓き盛大にコケてしまう。
立ち上がる気力すらなく土砂降りに振られながら仰向けになる。
「うぅぅぅぅ!!」
「もうやだぁー!怖いよぉ、寒いよぉ」
汚れることも構わずに子供のようにジタバタと暴れる。
チャチャチャ
泥を走るような音が聞こえ急いでそちらを見る。
もうやだぁ。
急いで立ち上がりまた走り出す。
鬼のような形相の男から逃げるがスカートを踏んでまた転んでしまう。
「やっと追いついたぜ、へへずいぶんなことしてくれたな?たっぷり礼を返してやるからな」
「いやぁ!」
手を振り払うが手首を捕まれ至近距離で見つめ合う形になる。
怖い、気持ち悪い。
誰か…
「お前忌み子か?まぁいいや、こんな上玉めったに拝めねぇからな」
私の胸元に伸びる手を必死に抑える。
「やめ「おい」」
私や小汚い男以外の声が割ってはいる。
閉じていた目を開け声のする方に視線を向ける。
馬に乗りずぶ濡れになった黒髪の隙間から見える鋭い緑の目、筋が通るような鼻筋をした貴族の男がこちらを見下ろしていた。
「き、貴族!様ですか?」
男の目が私たちを見据える。
「知り合い、と言うわけではなさそうだな?」
「いや、それは」
私は恐怖で声を出すことができずただ頷くしか。
「ここは俺の私有地だ即刻出ていかねば切り捨てるぞ」
その言葉に慌てて逃げ去る背中を見て私は息を吐く。
「あ、あの、助けていただき有難うございます」
「お前、平民ではないな?何処のものだ?」
「……グレイソンの者です」
「……その令嬢がなぜこんな時間にここにいる」
私は地面を見て黙るしかなかった。
「…送り届けよう」
!!
「嫌!!やめて…ください、私はもう大丈夫です」
「捨てられたか?」
頭を下げ立ち去ろうとした動きが止まる。
「図星か…ついて来い俺の屋敷に泊めてやる」
「嫌…です」
「なに?」
私は地面を見たまま拳を握りしめた。
「人なんて信じられません…皆私の敵なんです」
「助けてやった恩人でもか?」
「…そうです」
「なら先ほどの男を呼び戻すか?」
その言葉に驚いて男を見上げる。
「どうした?そんなに驚いて、もう大丈夫なのだろ?」
最低、でもその言葉は声に出せなかった。
人に何かを言うのは怖い、自分の感情を見せるのが怖い。
「っち!」
男が馬から降り手綱をこちらに向ける。
「令嬢であるなら乗馬の心得くらいあるだろ、乗れ」
「……」
「乗れ!!」
男の大声に肩が縮こまる、お姉様達とはまた違う恐怖が沸き起こる。
私はどこへ行っても逆らうことなど出来ない、もうそれが普通になってしまってる。
恐る恐る手綱を受け取ろうとする時男の手に触れそうになる。
男は急いで私の手から逃れる。
あぁやっぱり、私はどこへ行っても避けられるんだな…。
その心の痛みを押し殺し馬の上に乗る。
「ごめんねお馬さん?こんなに泥まみれで…」
男は黙ってそれを見つめ手綱を握り歩き出す。
◇ ◇ ◇
私の目の前には大きな屋敷がそびえ立っている。
私の住んでいたグレイソン家よりも2倍くらいの広さだ。
馬から降りるように言われ、男とともに扉の前で待っていると扉が開く。
「坊っちゃん遅かったですね、おや?そちらのお嬢様は?」
「じい、客人だもてなせ」
その言葉を後に屋敷に入る。
「承知しました、ささまずはお風呂に入って体を温めましょう」
「…はい、ありがとうございます。」
「いえいえ、坊っちゃんが客人を連れてくるのは今までなかったもので驚いているところでございます」
「はぁ」
「どのようなご関係で?」
「その、彼に助けられた関係…です」
その言葉に顔を綻ばせる初老の男性が案内を済ませお風呂場に到着する。
「すごい」
お風呂場に入り思わず声が出てしまう。
広々とした浴槽にいくつものシャワーが並んでいる。
大浴場というやつだろうか?
私はお風呂に入れてもらえる回数が少なく水浴びばかりだったので感動を覚える。
お風呂に浸かりリラックスしたからなのか頭に突然お姉様達の顔が浮かぶ。
憎い、許せないそんな良くない感情。
私は廃屋の場所で死のうとした、だけどきっと死ぬことは出来なかっただろう。
それなら復讐を遂げてから死にたい。
その決意を胸にお風呂から上がる。
いつの間にか用意されていた替えの服に着替え表に出るとメイドさんが道案内をしてくれ部屋に通された。
「お邪魔します」
その部屋には助けてくれた男の人が髪を濡らし座っていた。
「まぁ座れ」
頷きで返して向いの席に腰を下ろす。
傍らにはじいと呼ばれた執事もいる。
「それで? お前はこれからどうする?」
男は濡れた髪をかき上げながら、無造作にそう言った。
私は視線を落としたまま答える。
「……明日、家に戻ります」
復讐のために。
胸の奥でそう呟く。
「戻って何をする?」
「え……?」
その問い方は、まるで——
私の考えていることを見透かしているようだった。
「……家に帰る以外の理由なんて、ありません」
「復讐……か」
心臓が跳ねた。
思わず顔を上げる。
どうして分かったの?
「昔の坊っちゃんと同じ目ですな」
隣に立つ執事が静かに言った。
「余計なことを言うな」
男は面倒そうに肩を竦める。
それから、再び私を見た。
「それで?」
低く問う。
「その復讐は、どの程度のものだ?」
私は視線を逸らす。
嘘をつけば、きっと見抜かれる。
それでも——
「私は……復讐なんて考えていません」
沈黙。
次の瞬間。
「殺したいか?」
肩がびくりと跳ねた。
恐る恐る顔を上げる。
男は笑っていた。
——獣のように。
「俺が手伝ってやる」
その笑みは、さらに深くなる。
「お前の復讐を」
「……え?」
間の抜けた声が漏れた。
「これでも公爵でな」
男は椅子の背にもたれながら言う。
「大抵の罪から、お前を守ってやれる」
理解が追いつかない。
どうして?
どうしてこの人は——
「……どうしてそこまでしてくれるんですか?」
男はしばらく黙っていた。
そして。
ゆっくりと笑う。
だがその笑みは、どこか壊れそうでもあった。
「面白そうだから」
それだけだった。
私は拳を握る。
もう——
何でもいいのかもしれない。
この地獄から抜け出せるなら。
あの人たちを——
地獄に落とせるなら。
私は顔を上げた。
「……お願いします」
声は震えていた。
それでも。
確かに言った。
「私に——復讐をさせてください」
男の口元が、満足そうに歪んだ。
「それで?お前の考えを聞かせろ」
「家に火を放ちたいです…」
「なんとまぁ」
隣の執事の間の抜けた声に空気が壊れるのを感じるが目の前の男は気にした様子もない。
「どうやって火を点けるんだ?」
「…マッチ棒で」
「は?」
「え?」
何かおかしなことを言っただろうか?
「本気か?」
「えっと…本気です」
目の前の男が少し笑い膝を叩く。
「分かった!それでいこう、もし失敗すれば俺の私兵を使ってでも殺してやろう」
「え!そこまでしていただくわけには…」
「いいんだ、これは俺にとっての余興のようなものでもあるからな」
「は、はぁ」
その言葉を最後に男が席を立ち部屋の扉から出ようとする。
不意に男の体がよろけて倒れそうになるのを咄嗟に助けようと手を伸ばす。
「俺に触れるな!!!!」
「ひぅ!」
ひぃぃぃぃぃ、こわいよぉぉ
本気の怒鳴り声に手を引っ込め声が出てしまう。
私ってそんなに汚いのかな……
フラフラになりながら男は部屋を出て行ってしまう。
「申し訳ありません、誰に対してもあのような反応を見せるのです」
「え?そうなんですか?」
良かった、私だからじゃないんだ、ホッと胸をなでおろす。
「昔から綺麗好きではあったのですが、旦那様がお亡くなりになった後からあのようになってしまって……長年連れ添ってきた私が触った時なんて言ったと思います?!」
「えーっと、汚れる?とかですか?」
悲しそうな顔で首を横に振る。
「次触ったらお前殺すからですって!ひどすぎますよねぇ!?」
「あはは…」
「ただ、グレイ坊ちゃんがああなってしまうのも無理はない事だと思っております。
申し訳ありません口が滑りました、忘れてください」
それだけ言い残し執事のおじさんはいなくなり、今日はこの部屋をと言ってくれた。
――――――――――――――――――――――――
時は過ぎ私は店でマッチを2箱買い店を出た。
外にはグレイさんとその私兵が数人待っていた。
「次は何処に行く?」
「え?もう私の家に向かおうかと…」
「……風が強いぞ」
「は、い?そうですね?」
何となく空を見上げる。
なぜか黙り込んでしまうグレイさんを見つめる。
「いや、そうと決まったわけじゃないしな、よし行くか、俺たちは遠くで見てるからな?」
グレイさんの発言に首を傾げつつ頷く。
グレイソン家到着
「行ってきます」
「ああ、楽しみにしてる」
心で頷きつつ見つかりにくい裏道から進む。
そんな距離があるわけではないので難なくついた。
石工造りの家を見上げ気合を入れマッチに火を点ける。
ヒュー!
あ~風で火がぁ
もう一本!
ヒュー!
あ~まただぁ!
今度は風で消えないように手で壁を作る。
よし!これで消えない!
壁に火を近づける。
壁があぶられ黒く変色していく。
10分後~
私の足元にはマッチの燃えカスが散乱していた。
なんで燃えないの~?
「おい」
「ひ!って、グレイさん…驚かさないでくださいよ」
なぜか呆れるような目で見てきて首を傾げる。
「本気でやってるんだよな?」
「もちろんです!」
心外な!どこがふざけてると言うのか。
「もういい、お前に任せてたら一生復讐など出来ない事が分かった」
「なんでですか!まだマッチは沢山あります!」
「石の壁じゃあどうやっても燃え広がらないんだよ!」
「そ、そうなんですか?」
私の驚きとグレイさんの呆れた表情が見つめあう。
「お前勉強はしたことあるのか?」
「お祖母様が生きていた時だけほんの少し…」
「もういい、こっちに戻ってこい」
そして私は森の中で屋敷を見ていることになった。
森の中。
私はグレイさんたちと少し離れた場所から、グレイソン家の屋敷を見ていた。
胸がどくどくと鳴っている。
復讐。
それをしに来たはずなのに、胸の奥が落ち着かない。
その時だった。
ザッ。
後ろで気配が動く。
振り返ると、グレイさんの私兵たちが静かに動き出していた。
「……え?」
彼らは音もなく森を抜け、屋敷へ向かっていく。
私は慌ててグレイさんを見る。
「え、あの……?」
「安心しろ」
グレイさんは腕を組んだまま、屋敷を見ていた。
「お前の望みを叶えてやる」
その言葉の意味を理解するまで、数秒かかった。
まさか。
「え……?」
屋敷の門の前。
ちょうどそこへ――
ミラお姉様とリアお姉様が出てきた。
どうやら誰かを見送るところらしい。
その瞬間。
私兵たちが一斉に飛び出した。
剣が抜かれる。
狙いは――
二人だけだった。
「っ!」
胸が跳ねた。
最初の一瞬。
頭の中に浮かんだ言葉は。
(やれ)
だった。
やれ。
やれ。
やれ。
私をあんな目に合わせた人たちだ。
日記を燃やした人たちだ。
屋敷から追い出した人たちだ。
私が不幸になった原因だ。
(やれ)
そう思った。
思ったのに。
「……っ!」
気づいたら。
私は森から飛び出していた。
「やめてええええ!!」
自分でも信じられない声が出た。
私兵の剣が振り下ろされる。
その瞬間。
私は二人の前に飛び込んだ。
ガキィン!!
剣が弾かれる。
私兵が驚いた顔をする。
「……何をしている」
低い声。
グレイさんだった。
私は息を荒くしながら二人の前に立つ。
体が震えている。
怖い。
怖い。
でも。
それでも。
「だ、だめ……です」
声が震える。
「ころしちゃ……だめです」
沈黙。
その瞬間。
パシン!!
頬に衝撃が走った。
ミラお姉様だった。
「何やってんのよあんた!!」
また叩かれる。
「こいつらはあんたの仕業か!!」
リアお姉様も叩く。
「ほんと不幸しか呼び込まないわね!」
「ほんっと使えない!」
頬が熱い。
「えへへ、…ごめんなさい」
お姉様たちの言う通りだ、私は何をやってもダメなのだ…
「……貴様ら」
低い声が響いた。
振り返る。
グレイさんだった。
目が。
怒りで燃えていた。
空気が凍る。
私兵たちも固まっている。
グレイさんはゆっくり歩いてきて。
そして。
私の腕を掴んだ。
「帰るぞ」
ぐいっと引っ張られる。
「え、あ、あの……!」
姉たちの声が聞こえる。
「なによあいつ!」
「気持ち悪い!」
「ほんと忌み子は――」
その言葉の途中。
ドンッ!!
地面に剣が突き刺さった。
グレイさんが投げたものだった。
姉たちが悲鳴を上げる。
「……次、口を開けば殺す」
凍りつく声。
誰も何も言えなくなった。
私はそのまま引きずられるように森へ連れて行かれた。
「グレイさんあの、その」
「なんだ!」
「ひぅ、グレイさんの手…汚れてしまいます…」
「アリシア、お前は誰よりも綺麗だったよ」
◇
屋敷。
私は応接室の椅子に座らされていた。
さっきからグレイさんは何も言わない。
ただ。
じっと私を見ている。
怖い。
怒られる。
そう思った。
「……なんで」
低い声。
「庇った」
私は俯く。
「……だって」
うまく言葉が出ない。
「だって……」
涙がこぼれた。
「同じになりたくなかったから…」
「なに?」
「私もお姉様たちみたいになるのが怖かったから…」
沈黙。
しばらくして。
グレイさんが立ち上がった。
そして。
私の前に立つ。
「顔を上げろ」
恐る恐る顔を上げる。
その瞬間。
グレイさんは言った。
「お前は」
静かな声だった。
「俺の嫁になれ」
え?
理解が追いつかない。
「そ、そんなこと」
私は慌てて首を振る。
「私なんて」
「汚い」
「気持ち悪い」
「忌み子で」
言葉が止まる。
涙が止まらない。
その時だった。
グレイさんが突然。
私の顎を持ち上げた。
「え?」
次の瞬間。
唇に柔らかい感触が触れた。
頭が真っ白になる。
数秒。
それから離れる。
私は完全に固まっていた。
数秒後。
理解した。
顔が一気に赤くなる。
「えええええええええ!?」
私は立ち上がる。
「な、な、な、なにしてるんですか!?」
グレイさんは平然としている。
「口づけだ」
「知ってます!!」
私は頭を抱えた。
「わ、わたし……」
涙がまた出てくる。
「妊娠しちゃうじゃないですかあああ!!」
沈黙。
部屋の端にいた執事が吹き出した。
グレイさんは。
しばらく黙ってから。
「……お前」
こめかみを押さえる。
「誰からそんな知識を得た」
私は泣きながら言った。
「お祖母様が……!」
執事は肩を震わせて笑っていた。
グレイさんは深いため息をついた。
そして。
小さく呟く。
「……先が思いやられるな」
昨日女主人公の話を書いてインスピレーション沸いて書いてみた!!
本当は連載でもいいかなっと思ったけど本命が疎かになりそうだったんで泣く泣く断念。
少し伏線?みたいなのがありますがそれは本来の連載用で考えていた名残です。
伏線が好きな作者なもんでさーせん。
作者は男なのに女主人公の話を書くのも案外楽しいなと思えた一作でした!
てか女性の読者の皆様評価くれるから大好き!!!
男の人全然評価くれないんですもの!!嫌になってしまいますわ!!
因みにね?お姉様たち死罪にしといたから!!(にっこり)
作者がそう言うんだから確定です☆
少しでもお楽しみいただけたのであれば幸いです。
お姉様の名前の案をクソ姉さまとアホ姉さまにしようか本気で悩んでたのは皆の秘密ね?!




