第47話:翼を持つ犬と、あの日の記憶
新たな遺跡は、森の奥にひっそりと眠っていた。
石壁は苔むし、崩れた柱の隙間から鳥の声が響く。
俺たちは慎重に足を進めていたが――
「……あれ、なんか聞こえない?」
ニールが耳を澄ませる。
「キュー……(足音……?)」
その瞬間、風を切る音がして――
「わっ!? カノン、上だっ!」
「うわっ!?」
上から飛びかかってきた影が、勢いよく俺にぶつかってきた。
「うわぁっ、わ、わわっ……!」
柔らかい毛と、翼のような羽ばたきが頬をかすめる。
遺跡の床に転がりながら、俺はその姿を見た。
「……犬……? いや、翼が……?」
金色の毛並みを持つ小型の犬のようなモンスター。
背には白い羽が生え、瞳は宝石のように輝いている。
「きゅるっ♪」
頬をぺろぺろと舐められ、思わず笑みがこぼれた。
「……この感じ……俺、知ってる……!」
記憶が一気に蘇る。
画面越しに、何度も撫でて、強化して……。
「……☆2モンスター……ワンダ……!」
「キュー!?(あのワンダ!?)」
アルネアが驚きに羽耳を跳ねさせる。
「……そうだ、ラビッチュの次に可愛がって……+999まで育てた……!」
「きゅるっ♪」
モンスター――いや、ワンダは嬉しそうにしっぽを振り、俺の胸に顔を埋めた。
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「……でも、ちょっと待って……。」
ディルが戸惑う。
「これ……真名を解放済みだぞ……?」
サリウスが瞳を細める。
ワンダの身体が一瞬、柔らかな光に包まれる。
羽がふわりと広がり、澄んだ声が響いた。
「――カノン、やっと会えた!」
「……しゃ、しゃべった……!?」
「私よ、ワンダ!ずっと待ってたの。……でも――」
その大きな瞳がアルネアを見やる。
「――あなたがいたのね、ラビッチュ。可愛いわね。」
「キ、キュー……!(ワンダ……!?)」
ワンダはにこりと微笑んだあと、すっと顔を近づけて俺を見つめた。
「でも、言っとくわ……人間になったら――」
その瞳は真剣そのもの。
「結婚するのは、あたしよ!」
「……はぁぁぁぁ!?!?!?」
アルネアが耳をぴんと立て、羽をばさばさと揺らす。
「キューッ!?(な、何言ってるの!?)」
「きゅるる♪(ライバル宣言よ!)」
ヴァルが「ヴォォ……(こりゃ大変だな……)」と低く唸り、
ディルとニールは顔を見合わせて笑いをこらえきれない。
「……ははっ、カノン……モテモテだな。」
「おいおい、今こんな状況で……!」
俺は頭を抱えたまま、でも笑みをこぼさずにはいられなかった。
――新たな相棒、いやライバル? 翼を持つワンダの登場で、
俺たちの旅はまた賑やかになっていく。




