第44話:誓いが砕けた王都にて
王都へ向かう道は、かつて見たときよりもずっと騒がしかった。
遠くからでも、鐘の音と悲鳴が風に乗ってくる。
「……いやな予感がする。」
ディルが剣の柄を握りしめる。
「キュー……(急がないと……)」
アルネアが羽耳を伏せる。
俺たちは駆け足で城門を抜け、王都の大通りへ――
そこに広がっていた光景に、思わず言葉を失った。
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家屋は崩れ、瓦礫のあちこちで人々が身を寄せ合う。
しかし一番の衝撃は、通りの真ん中で繰り広げられる戦いだった。
「下がれ! こっち来るな!」
騎士たちが剣を構え、必死に人々を守っている。
だが、その相手は――モンスターたち。
「うわぁああああっ!!」
叫び声とともに、獅子型のモンスターが暴れ、馬車をひっくり返した。
「お前……何やってるんだ!?」
その手綱を握っていた少年が叫ぶ。
「グルゥゥゥ!」
瞳は涙で濡れていた。
「……やめろ……俺たちは……仲間じゃ……!」
だが、モンスターはその言葉を理解できないかのように、鎖をひきずりながら人々に牙をむく。
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「……そんな……。」
ニールが唇を噛む。
「……魂の誓いが……破られたのか……?」
サリウスの声がかすれた。
「キュー……(どうして……こんな……)」
アルネアが震える。
俺は周囲を見回し、胸が締めつけられるような思いで立ち尽くした。
中には、人と肩を並べて戦うモンスターもいる。
互いを庇い合い、絆を証明するような光景もあった。
しかし――
「奴隷のように扱われていたモンスター……売られたモンスターたち……。」
サリウスが低く呟く。
「……その怒りが、今……爆発してる……。」
ディルが目を伏せた。
「……こんなの……誰が悪いんだよ……?」
俺は言葉を失った。
あの時、血の神を越えたとき見た希望が、遠くに感じる。
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アルネアがそっと俺の腕にすり寄る。
「キュー……(カノン……神様って……いったい……)」
「……わからない。」
俺は空を見上げ、拳を握った。
「でも……少なくとも、今は……この混乱を止めなきゃいけない。」
「ヴォォ!」
ヴァルが翼を広げ、フェリアとリューネリアも前に出る。
「ピィィ!」
「グゥゥ!」
俺たちは走り出した。
泣き叫ぶ人々の中へ、悲しきモンスターたちの渦の中へ――。
――これはいったい誰が悪いのか。
神とは、試練とは、何のためにあるのか。
答えはまだ出ない。
だが俺たちは、虹の星片を胸に、前を見据えた。




