第43話:虹の雨と、新たな試練の幕開け
地震が収まった後、俺たちは瓦礫の村を見渡した。
倒壊した家、ひび割れた道――だが、そこに人々の姿があった。
「……全員、無事か……!」
ディルが声を張り上げ、村人たちが互いを抱きしめる。
「キュー……(よかった……本当に……)」
アルネアがほっとしたように羽耳を揺らした。
その時だった。
夜空に、ひときわ強い光が瞬く。
「……あれ……?」
ニールが指さす。
黒く煙る雲の切れ間から、無数の光が降り注ぎ始めた。
「……星片……?」
けれど、その色は見慣れたものではない。
青でも赤でも緑でもない、七色の輝き――。
「……虹色だ……。」
俺は思わず息をのんだ。
村人たちが歓声を上げる。
傷ついた瓦礫の間にも、柔らかな虹の光が降り積もっていく。
「……これが……主神の……?」
サリウスが空を見上げたまま呟く。
俺はそっと手を伸ばし、一つの星片を掴んだ。
暖かく、脈打つような不思議な感触。
「……ありがとう、なのか……それとも……。」
胸に押し寄せる感情を押さえながら、ポケットにそれを仕舞った。
「……必ず倒す。」
俺は空を見上げ、低く誓った。
アルネアが俺の肩に頬を寄せる。
「キュー……(私も……ずっと一緒に戦う……)」
ヴァルが静かに咆哮し、フェリアとリューネリアが並んで見上げた。
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それからの数日、俺たちはサリウスの研究所に籠り、古い記録と新聞を読み漁った。
「主神が起こしたと思われる過去の試練……こんなに……?」
ニールが並べた資料は机いっぱいに広がっている。
「小さなものから大きなものまで……。」
ディルが指でなぞる。
干上がった湖に突然満ちた水と、湖底に沈んだ村。
地を裂くような大地震と、その後生まれた新しい鉱脈。
突然の疫病と、それを癒やす薬草の奇跡的な発見。
「……人の生死を天秤にかけ、同時に救いを与えている……」
サリウスが唇をかむ。
「……試すように、だな。」
俺は手を握りしめた。
「キュー……(やっぱり……あの人……主神……)」
「……どれも、乗り越えた者には奇跡を……乗り越えられぬ者には……終わりを。」
フェリアが小さな声でつぶやく。
「まさに……神だな。」
ヴァルが低く唸った。
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「……見て、これ。」
ニールが新しい記事を指さす。
『王都に光の柱、前触れもなく夜空を貫く。
人々は新たな神の奇跡の訪れと口々に語る――』
俺たちは一斉に顔を見合わせた。
「……王都……!」
ディルが息をのむ。
「まさか……また……。」
俺の胸がざわめく。
「……あの男が、動き出した。」
サリウスが杖を握りしめた。
俺はポケットの虹の星片を握りしめ、立ち上がった。
「行くぞ。これが次の試練だ。」
「キューッ!(もちろん!)」
「ヴォォ!」
「ピィィ!」
「グゥゥ!」
窓の外、王都の方向に光が伸びていた。
その光が、まるで俺たちを呼んでいるように。
――新たな試練の幕が、王都で開かれようとしている。




