表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/57

第40話:血の神と、滅びの王国の再生

神の試練を追い求めて、俺たちは砂に埋もれた王国の跡地へと辿り着いた。

風が吹くたび、砕けた石柱と朽ちた城壁が顔をのぞかせる。


「……ここが……」

ディルがつぶやく。


「かつて、神の試練を受けて――乗り越えられなかった場所。」

サリウスが目を閉じて語る。


「……重いな。」

ニールが拳を握る。


瓦礫の間を歩くと、足元に小さな光が揺れた。

俺は思わずかがみこんで、それを拾い上げる。


「……赤い欠片……?」


それは星片に似ていたが、赤く脈打つような輝きを放っている。

手のひらに乗せた瞬間、視界がぐにゃりと揺らめいた。


「カノンっ!?」

アルネアの声が遠のく。


気づけば、俺は血のように赤い光の道を進んでいた。

そこに――いた。


鋭い角を持ち、全身に赤い鎧を纏った戦士。

目が合った瞬間、口元が笑みに歪む。


「……貴様か。血の匂いを辿って来たのは。」


「……あなたが……神様……?」


「我は血の神。戦いこそ真理。来い――!」


言葉が終わるよりも早く、地が裂け、赤い剣が振り下ろされた。


「キューッ!(カノン!)」


「ヴォォォォッ!」

「ピィィィ!」

「グゥゥゥ!」


アルネア、ヴァル、フェリア、リューネリアが一斉に身構え、俺の周囲に集う。

赤い大地で、血の神との死闘が始まった。



---


剣と爪がぶつかり、炎と光が交差する。

血の神は好戦的で、笑いながら何度も何度も斬りかかってくる。


「キューッ!(まだいける!)」

アルネアの光が神の鎧を穿ち、ヴァルの咆哮が赤い大地を揺らす。


「こっちも忘れんなよ!」

ディルがリューネリアを指揮し、ニールとフェリアが風と花の結界を張る。


「おお……久々だ……これが……戦いだ……!」


神の剣が俺の肩をかすめた瞬間、アルネアが跳躍し、羽耳からまばゆい光を放つ。


「キュウウウウウッ!!!」


眩い閃光が血の神を包み、赤い鎧が砕け散った。


「……ふははははっ!……よかろう!」


血の神は剣を地に突き立て、空を見上げて笑った。


「貴様ら……主神を探しているのだろう?」


「……そうだ。」

俺は息を整えながら答えた。


「ならば知っておけ。私を越えた者は久しい……だが主神は、私よりもはるかに強大だ。

 ……貴様らに、その覚悟はあるか?」


胸の奥が冷たくなる。

だが俺はうなずいた。


「……ある。」


「ならば行け。貴様らなら、あるいは……。」



---


血の神が天に手をかざすと、地が揺れ、瓦礫が砕けていく。

大地の下から緑が芽吹き、枯れ果てていた王国に花が咲き、風が優しく吹き抜けた。


「……え……?」

少女のような村人たちが呆然と立ち尽くす。


「町が……生まれ変わっていく……!」


「すげえ……!」

ディルが目を丸くする。


ニールが声を震わせた。


「……これが、神様の力……。」


新しい命が芽吹き、小さなモンスターたちが顔を出す。

その中の一匹が少女の足元で輝き、柔らかな声を響かせた。


「……また、あなたと……。」


「……え……?」


《リリア》




「……リリア……!」

少女はその小さな命を抱きしめ、涙を流す。


「……帰ってきてくれたんだね……!」



---


神を越えたその地に、確かに希望が芽吹いていた。

だがその光の中で、俺たちは同時に胸を締めつけられる思いを抱いた。


「……これほどの神でも……主神には及ばない……」

サリウスが呟く。


「……じゃあ……主神が降臨したとき、何が起きるんだ……?」

ニールが唇を噛む。


アルネアが俺の胸にすり寄り、小さな声でささやいた。


「キュー……(カノン……怖い……)」


俺はその頭をそっと撫で、空を見上げる。


「……大丈夫だ。どんな神が来たって……俺たちがいる。」


ヴァルが低く鳴き、フェリアとリューネリアもその隣に並んだ。


血に染まったはずの大地に、新たな風が吹く。


――神を越えたその先に、俺たちは希望を見た。

だが主神の影は、着実に近づいている。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ