第36話:紙の神様と、虹の星片
遺跡の奥、星片が風に舞い上がる。
ふよふよと浮かび、光が集まり、やがてそれは人の形を成した。
「……キュー……(神様……?)」
アルネアが呟くように羽耳を震わせた。
「ようこそ、番を紡ぐ者たちよ。」
やわらかな声が響き、星片をまとった“紙の神様”が現れた。
その姿は紙のように薄い衣を幾重にも重ね、髪は白銀。
目元は優しく、指先からは紙片がひらひらと舞い散る。
「……本当に神様が……!」
ディルが息をのむ。
「ピィィ……(すごい……)」
紙の神様は微笑み、後ろに立つ貴族の青年リステルを見つめた。
「君とともにある者の名を、教えよう。」
リステルの影から現れたのは、小さな狐型のモンスター。
ずっと彼の足元を守っていたその子に、神様が手をかざす。
《ミオル》
「……ミオル……!」
リステルは膝をつき、相棒をそっと抱きしめた。
「ありがとう……これで、ようやく……。」
俺たちは拍手を送り、アルネアも羽耳を揺らして喜んだ。
「キュー!(おめでとう!)」
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だが、俺はすぐに切り出した。
「神様……星晶について教えてください。」
紙の神様は目を伏せ、風に揺られながら静かに言った。
「……私には、それを授けることはできません。」
「……え……?」
「星晶を生み出せるのは――主神のみ。」
その言葉に場の空気が張り詰めた。
「主神……?」
「そう。すべてのモンスターと人の絆を見守る存在。
私たち下位の神は、真名を授けることはできても、星晶は生み出せない。」
「……じゃあ、主神を探すしかないってことか……。」
俺が呟くと、紙の神様は手をかざし、空に一枚の紙を描き出した。
そこに映し出されたのは――
「……え……?」
黒いスーツに銀縁のメガネ、整った髪型。
その姿は、どう見ても――
「……前世で見た……普通のサラリーマン……?」
「……カノン?」
ディルが不思議そうに顔をのぞき込む。
「いや……なんでもない……。」
俺は笑ってごまかしたが、胸の奥がざわめいていた。
「主神の姿だ。これを覚えておけ。」
紙の神様が静かに告げる。
「そして主神の星片は――虹色に輝く。」
「虹色……!」
「星片の光は、神の行き先を差す。
もしお前たちが本当に無二の相棒を得たなら、その光を見つけるだろう。」
アルネアが胸を張る。
「キューッ!(見つける!絶対に!)」
俺は彼女を抱き上げ、力強く頷いた。
「……行こう。主神の星片を探しに。」
ヴァルが翼を広げ、フェリアとリューネリアも並んで歩き出す。
「ヴォォ!」
「ピィィ!」
「グゥゥ!」
サリウスがため息をつきながらも微笑む。
「やれやれ……また大きな旅になりそうですね。」
「だな。」
俺は空を見上げた。
――虹色の光を追って、主神を探す旅が、ここから始まる。




