第29話:子宝の神様と、三つの命
「恋愛の神様がいるなら……子育ての神様もいるはずだよな?」
俺の言葉に、ディルとニールが同時に頷いた。
「じゃあ調べてみよう!」
「新しい発見があるかも!」
サリウスが地図を広げ、慎重に指を走らせる。
「……恋愛の神を祭る遺跡のさらに奥……『三つの芽の間』と呼ばれる石室の記録があります。」
「行ってみようぜ!」
ヴァルが翼を鳴らし、アルネアが耳を揺らす。
「キュー!」
「ヴォォ!」
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遺跡のさらに奥、苔むした石段を降りていくと、小さな円形の部屋にたどり着いた。
中央には、三体の小さな像が並んでいる。
一体は抱っこする母のような姿。
一体は父のように優しく背を撫でる姿。
一体はきょうだいのように手を取り合う姿。
「……これが……子育ての神様……?」
ニールがつぶやく。
「何か書いてあるな。」
ディルが指差した先に、古い文字が刻まれている。
「……サリウスでも読める?」
俺が尋ねると、サリウスは首を振った。
「部分的には……ですが、これも妖精語に近い。」
フェリアがぱたぱたと飛び、文字に触れる。
リューネリアが低く唸って、文字の流れを教える。
ニールとディルが力を合わせて解読を進めると――
《ノエル》《セリナ》《フィオナ》
「……これが、三つの真名……。」
「ノエル、セリナ、フィオナ……。」
俺はそっと声に出して呼んだ。
その瞬間、像の瞳が優しく光り、部屋全体に温かい風が吹き抜けた。
「……あったかい……。」
ニールが胸に手を当てた。
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その帰り道。
家の裏の穴蔵から、かすかな鳴き声が聞こえた。
「……お母さん?」
俺が顔を出すと、母が目を輝かせていた。
「生まれたわ……!」
父が優しく抱えているのは、小さな三匹の赤ちゃんモンスター。
まだ目も開かないのに、小さな羽耳や翼の名残を揺らしている。
「……三つ子だ……!」
ディルが驚く。
「キュー♪」
「ヴォォ♪」
アルネアとヴァルも嬉しそうに鳴いた。
「パートナーはいないけど……真名は確かに、子宝の神様の三体っぽいな。」
俺はそっと赤ちゃんたちを見つめた。
「ノエル……セリナ……フィオナ……。」
「……いい名前だね。」
ニールが優しく微笑む。
母が穏やかに頷いた。
「いつか、この子たちに相棒ができたら……真名を教えてあげてね。」
「もちろん。」
俺は赤ちゃんたちにそっと手を伸ばした。
「……ノエル、セリナ、フィオナ……いつかきっと、素敵な相棒を見つけるんだぞ。」
小さな鳴き声が、未来への約束のように響いた。




