第28話:恋の遺跡と、番の奇跡
「……そういえばさ。」
夜、研究所で地図を眺めながら、ふと俺は呟いた。
「父さんと母さんの相棒、見たことなくない?」
「……言われてみれば……。」
ディルが首をかしげる。
ニールも目を瞬かせる。
「ずっと一緒にいるのに、見かけたことないよね?」
「……あれは本当の意味で番だからね。」
背後から母が微笑んだ。
「番……?」
父が照れくさそうに頭をかく。
「家の裏の穴蔵で、きゅうきゅう子育て中だ。今はそっとしてやってくれ。」
「……えっ、赤ちゃんモンスターが……?」
「そういうことだ。」
母は優しく笑い、懐かしそうに目を細めた。
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その後、いつもの四人で新たな真名を求めて出発することにした。
「じゃあ、番って言葉が出たついでに、もっと知ってみようよ!」
ニールが張り切る。
「賛成だな。」
ディルも頷く。
アルネアが羽耳を揺らし、ヴァルが翼を鳴らす。
「キュー!」
「ヴォォ!」
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そして見つけたのは、となり村の奥地にある小さな遺跡。
蔦に覆われた石の門をくぐると、中央に二体の像が並んでいた。
ひとつは羽を持つ獣、もうひとつは大きな花を背負った精霊のような存在。
二体は互いを見つめ、手を取り合っている。
「……これは……」
サリウスが驚きに目を見開く。
「ここに祭られているのは“番の神”だ。恋愛の守護者、そして絆を深める神として伝わっている。」
「へぇ……恋愛の神様か……。」
ディルが感心する。
「真名の文字、ここに刻まれてます!」
ニールが指差す。
俺たちは読み取った。
そこには古代語でこう記されていた。
《アレスタ》と《ミュエル》
「……この二体が、ずっと番としてここに……。」
俺は胸が熱くなるのを感じた。
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「ふふ……夫婦仲は相変わらず快調みたいね。」
母が後ろから笑顔で声をかける。
「来てたのか、母さん。」
「あなたたちがどんな場所を見つけるのか気になって。」
父も隣で笑っている。
すると――
「すみません、この遺跡って恋愛にご利益があるって聞いて……!」
「私たち、今度結婚するんです!」
いつの間にか、村人たちやとなり村の新婚さん、カップルが次々に訪れていた。
「うわっ、なんか急に人が……!」
「これって……村の新しい名所になっちゃう?」
ニールが目を丸くする。
「いいんじゃない? 新しい産業の芽かもよ?」
ディルが笑う。
「キュー♪」
「ヴォォ♪」
アルネアとヴァルも楽しそうに鳴いた。
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夕暮れ、遺跡に灯された灯籠の明かりの中で、両親が静かに語り合う。
「……番って、やっぱりすごいな。」
俺がぽつりと言うと、母が笑った。
「ええ。絆を深めて、互いを支え合う……人も、モンスターも同じ。」
父が頷く。
「お前たちも、そういう相棒を見つけていくんだろう。」
「……うん。俺も……負けてられないな。」
風が優しく頬を撫でる。
アレスタとミュエルの像が夕陽に照らされ、どこか微笑んでいるように見えた。




