第27話:祠に宿るもの、番の奇跡
「……フェリア、リューネリア、行くぞ!」
ニールの呼びかけに応えるように、フェリアが宙を舞い、ディルの隣でリューネリアが咆哮する。
その瞬間――
フェリアの花冠が光を放ち、背の羽が大きな花弁のように広がった。
淡いピンクと金の光をまとった、可憐で凛とした妖精の姿へ。
「ピィィッ……!」
「……フェリア……!すっごくかわいい!!」
リューネリアもまた、体毛の銀がより鋭い光沢を放ち、背に苔色の翼のような突起が生えた。
優美さと獣の野性が同居する、かっこよくも頼もしい姿。
「グゥゥゥ……!」
「リューネリア……惚れ直したぜ……!」
俺とアルネア、ヴァルも目を見開く。
「キュー……(やっぱり真名の力はすごい……)」
「ヴォォ……(これでまた一段と強くなるな……)」
---
そして、真名探しは次のフェーズへ。
「次は……村のおばあちゃんの相棒だ。」
サリウスが村の外れを指さす。
「泥人形……だっけ?」
俺が尋ねると、おばあちゃんは照れくさそうに笑った。
「わたしが若い頃からずっと一緒でねぇ……でも名前なんて呼んだことなかったよ。」
「なら、俺たちで見つけよう。」
ディルが拳を握る。
「ピィッ!」
「グゥ!」
フェリアとリューネリアもやる気満々だ。
---
村外れの小道を進むと、小さな祠が現れた。
苔むした石と、古い木彫りの飾り。
「ここは……?」
ニールが首を傾げる。
サリウスが静かに答えた。
「昔の人々が、村を守る神のために建てた場所です。
泥人形はおそらく、その祠の守護者だったのでしょう。」
泥人形は無言のまま、祠に近づき、そっと手を触れた。
その瞬間――祠全体が淡い緑光を放つ。
「……動いた……?」
おばあちゃんが思わず息をのむ。
泥人形の身体にひびが入り、そこから新しい土と光があふれ出す。
「……進化だ……!」
土の塊が重なり、祠の紋様が身体に刻まれていく。
やがて立ち上がったのは――堂々たる石と土の戦士。
《ゴーレム》
「……まぁ……あんた……。」
おばあちゃんの頬に涙が光る。
ゴーレムはゆっくりと手を伸ばし、彼女の肩にそっと置いた。
「グォ……(まもる……)」
「……! 今……しゃべった……?」
「キュー……(真名の力……?)」
おばあちゃんの頬が赤らみ、背筋がすっと伸びる。
皺だらけだった手に力が宿り、その瞳に昔の輝きが戻った。
「……旦那さんみたいだねぇ……ふふっ……。」
「……番って、こういう形もあるんだな。」
ニールが感心したように呟く。
「……人も、歳を重ねてなお、魂は呼び合うのですね。」
サリウスが柔らかく微笑んだ。
おばあちゃんはゴーレムの手を握り、若々しい笑顔で言った。
「これからも、よろしくね。」
「グォ……(あいぼう……)」
---
村の風が優しく吹き抜ける。
フェリアとリューネリアが肩を並べ、アルネアとヴァルが空を見上げる。
俺たちは確かに感じていた。
真名の旅はまだ始まったばかり。
そしてその旅路は、モンスターと人の新たな絆を生み出し続けるだろう。




