第21話:王家の真実と、真名を継ぐ者
王家の墓所――重厚な扉を押し開けた瞬間、息を呑んだ。
「……ヒートドランが……いっぱい……?」
「グルルルルル……!」
奥にずらりと並ぶ石棺。そこから現れるのは、かつての王を守った無数の守護竜たち。
炎をまとい、牙をむき、次々と空間に召喚されていく。
「……まさか……!」
「これが王家の守護者……過去の王の魂が紡いだ幻影です。」
サリウスの声が低く響く。
「来るぞ、カノン!」
「アルネア、頼む!」
「キューーーーーー!!」
羽耳の光が閃き、ヒートドランが雄叫びを上げる。
サリウスが印を切り、俺は炎と風の狭間を駆ける。
だが――
「多すぎる……!これじゃ真名の記録を探すどころじゃ……!」
「グルァァァ!!」
ヒートドランが敵のヒートドランたちと火花を散らす。
ラビッチュがその援護に回り、守護者たちの攻撃をいなす。
「……混乱してる場合じゃない。探すんだ、ここで……!」
俺が走り出した瞬間、奥の大扉がひとりでに開く。
まばゆい光とともに、威厳ある声が響いた。
『……誰だ、我が眠りを妨げる者は……』
姿を現したのは、重厚な鎧をまとった初代国王の幻影。
その背には、一頭の巨大なヒートドランが翼を広げている。
「……初代……国王……?」
『なぜヒートドランを連れ、この墓所に来た。』
「……真名を探しに来た。」
俺は迷わず答えた。
『ならば知るがよい。我ら王家とは、ヒートドランの相棒たる者の末裔である。
しかし長き歴史のなかで、その真実は忘れられた。
本当は――ヒートドランと真名を交わした者こそ、次代の王たる資格を持つ。』
「……王家は、ヒートドランを従える者じゃない……?」
『ああ……魂を同調させ、真名を解き放つ者こそが、真の王……』
俺は息を呑む。そして隣のサリウスを見た。
「……わかった……!」
「何を?」
「ヒートドランの真名……わかるはずだ。サリウス、お前だ。」
サリウスの目が見開かれる。
「……私が……?」
「そうだ。お前は王家の血を引く。
でも王家なんて関係ない。ヒートドランは、お前と共に生きてきた相棒だろ。」
サリウスは拳を握り、ヒートドランを見つめた。
ヒートドランもその瞳を見返す。
「……ヒートドラン……私は……。」
『名を呼べ、継承者よ。』
初代国王の声が、墓所に響く。
サリウスが目を閉じ、胸の奥に手を当てた。
「……記憶が……流れ込んでくる……!昔、祖先が交わした契約の残響が……!」
「行け、サリウス……!」
「……お前の真名は――」
声が、世界を震わせた。
《ヴァルグレイド》
ヒートドランが咆哮する。
その身体が黄金の光に包まれ、翼が炎の刃をまとって広がった。
「グルォォォォォオオオ!!」
『――よくぞ名を呼んだ。お前こそ、次代を導く者なり。』
初代国王の幻影がゆっくりと消えていく。
「……ありがとう……。」
「キュー……すごい……!」
ラビッチュが目を輝かせ、俺は笑った。
「サリウス……お前、やっぱすげぇな。」
「……私も驚いています。だがこれで、私たちの旅は……新たな始まりを迎えましたね。」
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こうして、ヒートドラン=ヴァルグレイドが真名を取り戻し、サリウスは新たな王の資質を帯びた。
「さぁ、帰ろう。研究も、まだまだ続けないとな。」
「キュッ!」
「ヴォォォ!」
俺たちは光に満ちた王墓を後にし、再びヒートドラン――いや、ヴァルグレイドの背に乗って、次なる旅へ飛び立った。




