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りばーすわーるど!  作者: 哀愁みかんす
1000年に1人の美少女(仮)爆誕
7/8

#6  ロリコン? いいえ、逆境を生き抜いた変態(ツワモノ)です


 


 学生の時の長期休み、夏、冬、春の三つの中で、実際どれが一番人気なんだろうと考えたことがある。

 

 圧倒的長さを誇る夏休み、クリスマス、正月などの行事が多い冬休み、そのどちらよりも私は春休みが好きだった。

 長期休み中の課題が無いというのも理由の一つだが、何より、休みが明けても元の環境、学校生活に戻るのではなく、クラスも、ときには学校も変わり、色々な事がリセットされた、新たな生活が始まるというのが、私が夏休みを好む最大の理由だった。


 そんな春休みが今日から始まった。

 そんな日だからこそ心ゆくまで寝ようと思っていたが、こんな日に限って何故か朝早くに目が冷めてしまった。

 

 体にこれといった不調は無い。強いて言うなら右腕の筋肉が少し筋張ってるくらいで、他はむしろ好調なくらいだった。

 目はこの上なく冴えているし、二度寝しようにも、頭がスッキリしすぎて横になっているだけでも体がうずうずしてくる。


 私は心中で溜息を吐くと、一転切り替え、勢い良く毛布から飛び出した。


 (おはようございます小夜凛様。今日はお早いですね)


 「ああ、おはよう。今日はやけにすっきりした朝だったもんだから、残念ながら起きるしかなかったんだよ」

 

 ちなみにノインは早起きというわけではなく、寝る必要が無いので、私が寝ている間も、同調した聴覚と魔力感知(?)とやらで周囲を警戒しているらしい。限界社員のなれの果てみたいな生活してんな……。


 (今日のご予定は?)


 「うーん、特には……。まぁ折角早く起きた訳だし、どっか出かけるか」


 とは言ってもどこに行くかは全く決まってないんだけど……ま、それは朝食の後に決めるのでも遅くないか。

 ひとまず考え事はベッドに放り投げて、今は水分を欲し乾ききった喉と空腹を満たすべく部屋を出ていった。






 「ごちさま!いや〜久しぶりに朝に味噌汁作ったけど、出汁といい味噌の濃さといい、かなり上達してきたんじゃないか?」


 空の器を運びながらノインに問いかける。

 ノインは視覚、聴覚の他にも味覚、嗅覚といった、触覚以外の所謂五感というものを全て私と同調しているらしいので、料理の味は分かるみたいだ。


 (確かに、食事の面だけで言えば小夜凛様が主で良かったと思います)


 (え?)


 驚いた。どうせ、いつものツンデレを発揮して、『まぁまぁですね』とか言うんだろうなぁ、となんとなく思っていたが、意外にも素直に褒めてくれた。

 

 「じゃ、じゃあ、毎朝この味噌汁が飲みたいなんて事も——」


 (質問の意図がよく分かりませんが、毎日は嫌です。飽きます)


 「チッ」


 やっぱり駄目だな、コイツは。

 料理を頑張って準備してくれる女の子が言われたい台詞ナンバーワンだろうが。ちゃんと予習しとけ。


 はぁ、いつかこの料理の腕前を誰かに披露したい……。そのためにここまで練習しているのに……。


 今までに、私の料理を振る舞ったことがあるのは両親と兄貴だけ。

 もっと、なんというかこう、家に遊びに来た友達に『お腹空いた?夕飯食べてく?』的なノリで我が腕前を披露して、胃袋をガッチリ掴みたい。


 (あの——恐らく頭の中のものであろう声が聞こえてきてるんですが……)


 「ああ?わざと聞かせてんだよ。嫌ならもっと私をおだてろ!」


 (わ、わっしょいわっしょい)


 「……なにそれ」


 (小夜凛様をヨイショしようと……)


 「何いってんだお前。可愛いから許す」


 あざと可愛いっていいな。覚えとこ。


 

 (ところで、今日の予定は決まったんですか?)


 脱線に脱線を重ねた話をノインが本線に戻す。

 早起きしたものの、少し凝った朝食を作ったので、起床から二時間が経過し時計は既に九時を回っていた。

 ふむ、ちょうどいい時間だな。


 「今日は、少し遠いけど、春の新作を見に駅前の”シック・ハックス・マートに行こうと思います!」


 シック・ハックス・マートとは、流行の最先端を行く数多くのファッションやコスメを取り扱う店を存分に集めた、大型ショッピングモール的なやつというヤツという奴だ。

 

 「ノイン君、何か異論は?」


 (ハイ!服を長時間見るのは退屈なので別の所がいいです!)


 「よしわかったノイン君。今すぐ着替えるぞ。目的地はシック・ハックス・マートだ!」


 (認めてはくれないんですね……)


 久しぶりの外出バージョン私服モードだぜ、腕が鳴るな。

 

 階段を駆け上り、自室のタンスの中を探る。

 白いワンピース、キミに決めた!

 後はそれに合うもの身に着けて、髪型も整える。くぅ~、もう真っ白過ぎて何も見えない。

 

 私の身長の一回りほど大きいサイズの姿見に映る私の姿は、ワンピースと雪のような肌も相まって、聖堂に飾られる一つの絵画のような美しさだった。


 (いつまで眺めてるんですか、早く行きますよ)


 もう少し眺めていたかったが、確かに時間が押している。

 玄関に行き、お気にのスニーカーを履いて、帰宅用にゲームセンターで取れた、プラスチックでできたダイヤみたいな物をスニーカーが元々置いてあった場所に置く。その時、下駄箱の上に赤紫色の石が視界の端に見えた。


 「あ、えーっと、真核だっけコレ。どうしよう」


 (ちょっと!そんなところに置きっぱなしにしていたんですか?もっと大切に保管しておいてください!)


 すっかり忘れてた。だってイマイチ貴重さが分からないんだもん。

 真核の表面をじっくり眺める。やはり魔力でできているだけあって、見た目からも魔力の流動しているように見え、ダイヤやその他の宝石とは違った、どこか異様な光沢がある。

 

 「取り敢えず質屋鑑定局にでも持ってくか」


 (売る気ですか!?絶対にもったいないですよ。第一一般人に価値が分かるかどうか——)


 私はノインの話をよく聞かずにハンドバックの奥に突っ込んだ。

 

 さて準備は済んだ。まずは最寄りの駅に行かなくては。

 

 「電車、久しぶりだなぁ……。痴漢されるかなぁ……。私ぐらい可愛いと当然されるだろうなぁ……」


 (世の中のおじさん達を舐めないでください。小夜凛様の欠片程度の色気にやられるほど、人類退化してませんよ)


 「お前こそロリコンの強い意志を舐めるなよ」


 ロリコンは肩身が狭い分、意志が弱い者は間引かれ、強い者だけがしぶとく生き残る。社会人になってもなおロリコンで居続けられる奴らは、つまりそういうことだ。


 (小夜凛様もロリコンなんですか?)


 「ははは、馬鹿言うな、魅力を感じる女性が軒並み幼女なだけだ」


 (変態……)


 「その程度の罵倒は聞き飽きたさ」


 こうして、推定ロリコン断定変態の精神年齢アラフォー幼女が、公共交通機関を目的地に歩き始めた。





予定が重なり、前回の投稿とかなり間が開いてしまいました。

次回も間がだいぶ開いてしまうかもしれませんが、よろしくお願いします。

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