地下帝国のマンホール
マンホールの蓋がなかった
歩きスマホをしていて気付かなった
あっさり落ちてしまった
梯子はなかった
だから上に昇れなかった
そこは下水道ではなかった
ただ細長い道が続いていた
体に痛みはなかったので
切れかけの電灯を頼りに
恐る恐る歩き始めた
十分ほどだろうか
強い光が目に入った
少しだけ早足になる
そこは地下帝国だった
死体だらけの地下帝国だった
腐敗臭は換気扇で抜けていた
王様が笑いながら近寄ってきた
私をこの国の住人にしてくれるらしい
ナイフを受け取って国民になった