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第33話 美少女の下着の洗い方

 苦しい!なんだ…誰か…助けてくれ…ウウウウ…死にたくない。


 放火、銃、殺人、裏社会、ヤクザ。俺は…首を絞められているのか? 苦しい。


「ぷっはぁぁぁぁ!」


 三日連続! 俺は三日連続で、リリスの双丘に窒息しさせられそうになって目覚めた。毎日毎日ベッドの上で寝ているはずのリリスが、何故か床に落ちて俺の隣りに寝ている。しかもなぜか位置関係が、いつもリリスの胸に俺が顔をうずめる形になっている。


 俺はぐっしょり汗をかいていた。物凄く悪い夢を見ていたと思うが、どんな夢かは思い出せない。とにかく追い詰められて殺されるんじゃないかと思った。目覚めてむしろホッとしている。


 起きて上半身の服を脱ぎ、タオルで汗を拭きとって新しいTシャツを着た。洗濯かごに服を放り込もうとすると、洗濯物が山盛りになっている。


 洗濯しないと。


 部屋には一応、全自動洗濯機が置いてある。コインランドリーは環七沿いまで歩かないといけないので、いつも部屋で洗っていた。寒くなってからは乾きづらくなってきたので、部屋干しするために室内に折り畳み物干しを置いている。


 洗濯物は二回に分けなきゃいけないくらい溜まっていたので、まずは白物やタオルを振り分けていく。その時ふと気が付いた。


 洗濯物は俺一人分じゃなかった。ていうか…リリスの洗濯物は何処に? 洗濯カゴには入っておらず、風呂から上がってきた時はなにか持っていたか?


 俺はおもむろに目の前の洗濯機のふたを開けてみる。するとそこには綺麗に折りたたまれた、リリスが異世界から着て来た服と下着があった。


 俺は一旦、洗濯機のふたを閉める。軽くテンパりながら、どうすべきかを考え始めた。


 まてよ。この修道服だかメイド服だか分からん服は、絶対にクリーニングだよな。こんなん洗濯機で洗ったら皺になりそうだ。だけど…下着は洗濯機で洗って良いんだよな? 異世界から着て来た下着は素朴な木綿のような素材だが、マルキューで買った奴は繊細なレースが付いている。


 どうしようか迷って俺が部屋の扉を開けると、リリスはまだ寝ているようだった。俺はそっと自分のスマホをとって検索する。


 下着、レース、洗濯


 するとどうやら、下着はネットに入れて洗濯機で洗うか手洗いらしい。洗濯機には手洗いコースがあるので、ネットに入れて洗剤を入れてボタンを押せばいいだけだ。俺はワイシャツを洗う時の洗濯ネットを取り出す。


 だが…まてよ。俺がリリスの下着を触って良いのか?


 俺が改めて洗濯機の蓋を開けて中を見ると、唐突に部屋のドアがカチャっと開いたので俺は慌てて洗濯機の蓋をしめた。


「あ、お、おはよう!」


「おはよう」


「ど、どうかした?」


「あの…」


 リリスは、少しもじもじするように顔を赤らめる。


「あっ! ごめんごめん」


 俺は慌てて部屋に戻る。少し待っているとトイレの流す音が聞こえて来て、水道の蛇口がひねられた。俺はリリスに聞こうと思って洗濯機の所に行く。


「リリス! 洗濯しようと思うんだけどさ」


「ここで?」


「そのリリスが服を入れたのは、洗濯機っていう洗濯する道具なんだ」


「あ、そうなの? しまっておく棚じゃないの?」


「違うんだ」


「ごめんなさい」


「謝らなくていい! だけど洗濯物が溜まったからさ! 使っていいかな?」


「うん」


 リリスはふたを開けて、自分の洗濯物を取り出して抱え込んだ。そして俺はリリスに説明をする。


「えっと、色のついてない物を先に、色があるものを後に洗うんだ」


「そうなのね」


 そして俺は洗濯かごから、下着のTシャツやタオルを取り出して洗濯機に放り込んでいく。そしてリリスに向かって言う。


「リリスの色がついていないのを入れて」


「うん」


 リリスはシンプルな異世界から着て来た白い下着を、スッと洗濯機に放り込んだ。そして俺は洗濯洗剤をカップで軽量していれ、洗濯機の蓋を閉じてボタンを押す。


「あとなにするの?」


「これだけ。あとは自動で洗われるよ」


「えっ、すごい! 手洗いしなくていいの?」


「そうそう」


 ゴーンゴーンとなる洗濯機を見て、リリスが感動している。そして俺はワイシャツを洗う洗濯ネットを、リリスに見せて言った。


「あと…買った下着は、この網に入れてくれる?」


「うん…」


 リリスは昨日着用した下着を、洗濯ネットに入れてくれた。


「今のが洗い終わったら、次は色物を洗うから」


「わかったわ」


 そして次に俺はリリスが手に持っている、異世界の服を指さして言う。


「それって、前の世界ではどうしてたの?」


「まあ、着たまま水に入ったり濡れた布で拭いたり」


「じゃあ、それって人に洗ってもらっても大丈夫?」


「問題ないわ」


「わかった」


 洗濯物を回しつつ、俺達は部屋に戻ってコンビニで買った朝飯を広げた。


 そろそろ自炊しないとな。実家に帰るつもりでいたから、食材を全く買っていなかった。今日は買い出しに行けるかな?


 そんな事を思いながらコンビニ飯を食う。食い終わったあたりで洗濯気が止まったので、俺は二回目の洗濯物を放り込んだ。リリスの可愛い下着が入ったネットも入れて手洗いのボタンを押す。重い物は三回目になるから、洗濯は三回になりそうだ。


 シンクを見て美咲さんの肉じゃがの鍋があったのを思い出した。


「あ、鍋」


 俺はごちそうになった鍋と皿を洗い、ふきんで水分をふき取った。まだ朝早いのでもう少ししたら返しに行こうと思う。テレビをつけると政治家の不正のニュースが流れた。それを見てリリスが俺に聞いて来る。


「このテレビに映っている人達はどこにいるの?」


「普段は公務とかやってんのかな? 国の会議の時は火事になった国会議事堂に集まる感じだよ」


「国の権力者?」


「そう」


「じゃあ、あそこに邪念が集まるのも無理はないようね。邪気が漂っているわ」


「国会議事堂にって事?」


「だって不正を行ってるんでしょ? みただけで分かる」


「まあそうだね」


 リリスはきちんとニュースの内容を理解していた。


「欲望が渦巻けばそこに邪念が集まるわ。彼らは、貴族?」


「じゃ、ないよ。国民に選ばれて政治をしている人達」


「えっと…えっ? 世襲とかじゃなくて? 国民に選ばれてる?」


「そう。国民が選んだ」


「国民の目は節穴なの?」


 リリスはなかなかに鋭いところをついて来る。だがどちらかと言うと年寄りとか、金のある大企業や医療系の票を利権がらみで集めているといった方が正解かも。


「お金がものを言う世界なんだよね」


「なるほど」


 そのニュースを眺めている間に、二回目の洗濯の終了音がピーピーなった。洗濯物をとりだして最後の洗濯物を入れる。さっき洗った奴と今回のをカゴにいれ、部屋の折り畳み式の物干しに洗濯物をぶら下げていく。だがリリスの洗濯ものが見えた時、俺はリリスに聞く。


「あの」


「え?」


「リリスの下着を部屋に干しても良いかな? 外は寒いから乾かないし、女性用の下着を外に干すというのはちょっと…」


「あ、ああ。じゃあ私が自分でやるわ」


「お願い」


 リリスに洗濯ラックと洗濯ばさみの説明をする。


「わかったわ」


 そしてリリスは俺の下着と一緒に、自分の下着を洗濯ばさみに挟んでいく。女性の下着を見るのは大変申し訳ないが、部屋は一つしかないので仕方がなかった。俺の下着と一緒に干された、可愛らしい彼女の洗濯物を見てドキッとする。その恥ずかしさを払しょくするように俺が言った。


「今日はどうしたらいいかな?」


「えっ、昨日の場所にいくわ」


「今日も新宿新宿?」


「あの町にいつか必ずサラマンダーが現れる」


「いや、でも昨日の今日だしそれはまずいかも」


「ダメよ。私を新宿に連れていきなさい」


「仰せのままに」


 結局俺は今日も、新宿へと行く事になってしまったのだった。昨日あんな騒ぎを起こしたばかりなのに不安でいっぱいになる。


「その前に。ちょっとお隣さんに鍋を返してくるよ」


「わかったわ」


 俺は鍋を持って、美咲さんの部屋の呼び鈴を鳴らした。


「はーい」


 中から綺麗な声が聞こえて来て、ドアを開け美咲さんの美しい顔が出て来る。


「あら蓮太郎さん? 早いですね?」


「あ、ちょっと今日も出かけるので」


「そうなんですね」


 すると奥から品の良い、優しそうなお母さんが出て来た。


「あら、あなたが水野さん?」


「あ、はい! 隣りに住んでます」


「なんかうちの子がお世話になったみたいで」


「いえいえ。特に何も! こちらがお世話になってます!」


「うちの料理はお口にあいました?」


「美味しかったです! すっごく!」


「それはよかった。うちの美咲はちょっとおっちょこちょいの所もありますので、ぜひよろしくお願いします」


 それを聞いた美咲さんが慌てて言う。


「ちょっ! ちょっと! お母さん?」


「あら? あなた楽しそうに話していたじゃない、水野さんの事」


「お母さん何言ってるのよ」


「とにかく仲良くしてあげてくださいね」


「は、はい!」


 そして俺は、お母さんに礼をして部屋に戻った。


 えっ? 仲良くしてって言った? お母さん公認? マジ? いいの?


 俺は興奮して鼻の穴を広げていたのだろう、リリスが俺の顔を見て言った。


「なんか興奮してる? 随分嬉しそうだわ」


「あ、いや。違う違う」


 そして俺とリリスはすぐにアパートを出た。駅に向かう途中にクリーニング屋があるので、そこにリリスの異世界から着て来た服を出す。店のおじさんが洗濯表示を探すが何処にもないと言った。


「だと無理ですか?」


「いやいや。素材とかでだいたい分かるよ。ドライクリーニングになると思う」


「あの、それでお願いします」


「わかりました」


 クリーニング屋を出て今日も世田谷線の駅に立つ。いつもより早い時間なので、人が少し多く感じた。すぐに電車が来て俺達は新宿に向けて出発するのだった。

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