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第22話 国会議事堂炎上

 いつもの三軒茶屋とは反対方向の下高井戸駅方面に乗った。リリスは相変わらず周りをきょろきょろしている。もうお昼近くなので駅には人もまばらだった。


「昨日とは反対に行くの?」


「そう。こっちから行った方が早いから」


「電車って、どこにでも繋がっているのね?」


「そうだよ、特に東京はね」


 リリスは昨日マルキューで買ったおしゃれな服を着ているので、コスプレ感は出ていない。それでもリリスは目立って人目を引いた。世田谷線に揺られ終点の下高井戸駅で京王線に乗り換える。


「また乗り換えるのね?」


「そう。いろんなところに電車が通ってるから」


「凄いわ」


 新宿行きの京王線の中で、リリスは嬉しそうに外の風景を眺めていた。電車はほどなくして新宿へと到着する。俺達が改札を出ると繋ぐリリスの手の力が強くなった。


 俺は振り向いてリリスに言った。


「大丈夫?」


「慣れたはずだけど、少しだけモヤモヤするわね。どうしてこうも人が多いのか」


「人が多くて申し訳ないけど、ここでリリスのコートを買おうと思う」


「そう…」


 そして俺達は広い新宿駅を、ルミネに向かって歩き出した。ルミネに入って各階を周ると、リリスが足を止め店内をじっと見つめる。見た俺はリリスに言った。


「ここにしようか?」

 

「うん」

 

 店内に入ったリリスは、真っすぐにコート売り場へと進んでいく。そして指をさした。


「これがいい」


「あ、黒じゃないんだ」

 

「うん」


 リリスが選んだのはホワイトの、首回りと腕の先にファーが付いたコートだった。すると店員が近づいて来て言う。


「着てみられますか?」


「はい」


 そして店員は、リリスが今着ている俺のダウンを受け取りコートを羽織らせた。ファー使いのケープがついていて、リリスのイメージにぴったりだった。


「これがいいわ」


「俺もぴったりだと思った」

 

 店員がニコニコしている。


「私もお似合いだと思いました。モデルさんですか?」


「あ、売り出し中です」


「そうですか」


 俺は今日も嘘をついた。未成年の美少女と俺の関係なんて、それぐらいしか思いつかない。俺はようやく戻って来た自分のダウンジャケットを、セーターの上に羽織る。そして俺は店員に言う。


「すみませんが、このまま着ていきたいのでタグを切ってください」


「はい」


 そしてリリスはそのままそれを羽織った。俺のダウンジャケットじゃブカブカだったが、ぴったりのコートを着たリリスは更に可愛さが増してしまう。


 次に俺達は丸の内線の切符を買い電車のホームに向かう。時間帯が中途半端なのでそれほど混みあってはいなかった。リリスの体調が気になるが、リリスは俺に平気だというような顔をしてみせる。


 国会議事堂前駅について電車を降りると、どうやら火事の影響で一番と二番出口は閉鎖されているらしい。ぐるりと周り四番出口から外に出ると、警察車両や消防車両が並んでいるのが見える。既に議事堂の火事は消えているようだが、もしかしたら燃えている最中なら電車が停まっていたかもしれない。国会議事堂の周りには近寄れないように、黄色いテープが張り巡らされている。


 リリスが俺に言う。


「入れないのかしら?」


「うん。流石に無理だと思う」


「周りを回る事は?」


「どうだろ? 行ってみよう」


 俺達が反時計回りに議事堂を左に向かって歩き出す。だが正面にもずらりと警察車両と消防車両がおり、人が近寄れるような雰囲気になっていない。それにもまして大量の野次馬でごった返している。俺達は人ごみをかき分けるように進み、さらに左に曲がって歩いて行く。裏手側にはあまり人はいないようだが、警察車両と警察官が立っていた。


「近寄れないね、たぶんテロとかそんな感じの警備体制じゃないかな?」


「そうなのね。でも分かったわ」


「何が?」


「こっちに飛んだんだわ」


「飛んだ? 何が?」


「サラマンダーよ」


「うっそ?」


「だってここには」


「うん」


「あまりにも邪念が渦巻きすぎている。多分焼き尽くせないというか、お腹がいっぱいになってどこかに飛んで行ったんじゃないかしら」


「えっと、次はどこに行くかな?」


「お腹いっぱいで、しばらくは動かないと思うわ」


「うわ。ていうか腹減ったらまたどこか燃える?」


「そうね。次の時までに見つけられればいいんだけれど…」


 まずい。そんなものがこの日本を飛び回る事になったら、あちこちが燃えてしまう気がする。まあ国会議事堂が燃えたっつーのは、なんとなく分らんでもない。


「どうにかして見つけれらないかな?」


「ただ…サラマンダーを見つけたとしても、アイテムボックスが開かないとどうにもならないわね」


「そうなんだ」


 ここでもその問題を突き付けられてしまう。するとリリスが俺に聞いて来た。


「邪念が多そうな場所って他にある?」


「どうだろう? 欲望の街なら歌舞伎町とか?」


「私をそこに連れてって」


「わかった」


 俺は再び新宿に戻る事になってしまう。まあリリスが人ごみに慣れて来たので動きやすくなったが、歌舞伎町にいっても何も出来る事は無さそうな気がする。しばらくはサラマンダーは動かないと言っているし。でもリリスが行くというのであれば、俺はそれを断る事は出来ないのだった。


 何故ならば俺の腕には隷属の腕輪がついてて、それに逆らう事が出来ないのだから。


 まあ、行きたいって言えば、行ける範囲でどこでも連れてこうとは思ってるけど。

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