一話 ダンジョン発見
真っ黒な空間が広がっているクローゼットを閉め、タンスの中になにか服がないかを探し、ちょうど良さそうな真っ黒なパーカーがあったので、それを着て、外へと出て、自転車にまたがる。そして俺は、何事もなかったかのように家を出発した。
…床屋に着き、待っている間に俺がしたことは、昔のニュースを漁ることだ。実は、1年前からニュースを見ていなかったため、社会がどうなっているか全くわかっていないのだ。もしかしたら、あの黒い空間についてなにかわかるかもしれない。
9ヶ月前までのニュースを見たところで順番が来て、散髪を始めた。ここでも、店員さんに許可を取り、ニュースを見る。1ヶ月前までのニュースには特に何もなかったが、3週間前のニュースに、気になる文面を見つけた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『世界中にダンジョンが出現 中にはモンスターも』
今日の午後、政府が、日本中にダンジョンが出現したことを発表した。
最初にそれを見つけ、中にはいってみた自衛隊は、「中には銃が効かない生物がいる」と発言し、政府を騒がせた。その後、中にはいってみた隊員に厳しく問い詰めたところ、
「あの真っ黒な空間の中は石造りで、遺跡のような場所だった。中にはスライムがいて、銃は効かないが、殴りや蹴り、ナイフなどの攻撃は少し効いている様子だった。スライムの中にはコアがあり、それを壊すと消滅し、ステータスというものを獲得した。」
と、さらに政府が困惑するような内容を告白。政府は、危険性を考え、民間人がダンジョンに入ることを禁止。研究が進んでから、入ってよいかどうかを判断するとのこと。ダンジョンに入れる日は来るのだろうか。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
…これに違いない。あれはダンジョンなんだ。真っ黒な空間の写真も載っていて、穴とクローゼットの差はあるが、どちらも同じような感じだった。
ちょうどこの記事を見終わった頃に散髪が終わり、お金を払い、床屋を出た。これは、確かめたほうがいいだろう。そのためにも、まずは武器だ。家に帰ってから武器を買いに行ったんじゃ、時間がかかりすぎる。先に済ませてしまおう。
そう考えた俺は、床屋と同じく、駅前にあるホームセンターへと向かう。ホームセンターなら、最低限使える武器として使える道具が揃っているだろう。スライムはコアを出せば殺せるようだし、バールでコアを出してみるか。防具は…今はいいだろう。適当にTシャツでも着とけばいいや。
「お会計、一点で5480円となります。6000円、お預かりしますね」
ガシャン、ジャラジャラ
「お釣り、520円となります。ありがとうございました!」
最低限の武器を入手した俺は、家に帰り、Tシャツに着替え、クローゼットを開けた。真っ黒な空間は広がったままだ。
意を決して、その空間へと飛び込んでみる。何度も寸前で止まったが、それはご愛嬌だ。誰だって、初めて見るものには恐怖を感じるんだ。
真っ黒な空間の中には、洞窟が広がっていた。不思議と暗くはない。どこに光源があるのかと考え、あたりを見回すと、そこら中の苔が少し光っていた。これが光源となっているようだ。
しかし、洞窟か…情報と違うな。まぁ、まっ黒な空間に飛び込んで、別の世界になっているという点では同じだから、これもダンジョンなのだろうが…
と、考えているときに、青い生物が奥の方に見えた。どうやら、お出ましのようだ。
さぁ、死んだら終わりのVRゲームを始めるとするか。
楽しんでいただけたでしょうか。誤字脱字等があれば、報告をお願いします。極力内容にしていますが、自分でも気づかない間違いが会ったりするので。