第十一話 おかしなボス戦
さて、今日は50階層の攻略だ。かなり強い可能性もあるため、事前にここまでの到達をし、しっかりと休憩をしている。ここまで準備をすれば、そうそう負けることもないだろう。
ちなみに、不死の指輪でも大けがを治すのには時間がかかるために、一応回復薬も持ってきている。ハイオーク戦で試しに攻撃を受けてみたら、籠手で受けたのに右腕の骨が折れたからな。その時は治るのに1分ぐらいかかって、本当に焦ったものだ。
その後、もう一回攻撃を受けて回復薬を使った場合には、たった10秒で治った。そのおかげで、ボス戦の時には、回復薬入りのマジックバックを持つようにした。
そして、ここまでのモンスターはオーガ。オークの強化版みたいなものだ。おそらくボスもオーガの上位種だろう。50階層という一つの区切り。気を引き締めていこう。
…そういえば、俺に殴りかかって、壁にハマった変なオーガがいたな。結構小さかったけど。アイテムをドロップしたから、何かのイベントだったのかな?ドロップはただの回復薬だったし、そんなにいいやつじゃないな。
そうして、開けたドアの先にいたのは、体表に謎の模様が入った、普通のオーガよりも少し小さい個体。だが、そのステータスは…
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◆名称:ランデル ◆種族:アイス・ハイ・オーガLv10
◆職業:闘士Lv20
◆ステータス
HP 500/500 MP 60/60
STR:200
VIT:130
AGI:100
DEX:60
INT:50
MND:50
LUK:20
◆装備
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◆スキル
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これは…勝てるか?まぁ、攻撃食らったら瀕死なのは確実だな。受けられるのは…五回までか。
「…オマエハ、ツヨイノカ?…オレヲ、コロセルノカ?」
「どういう意味だ?何を言って…」
…その瞬間、俺に対して攻撃をしてきた。強いものを求めるのは百歩譲ってわかるが、「殺せるか?」という問いはおかしくないか?
…いや、そんなことを考えていても意味はない。今は、こいつに勝つことだけを考えよう。
「雷魔法、『雷纏』そして、様子見の『雷撃』」
魔法を唱えると、俺の体を黒い雷が覆い、同じように黒い雷がオーガを襲う。
ダメージは…24。これをあと20回だが…『雷纏』のMP消費で、そこまでの余裕はない。ギリギリ『天雷』を打てるぐらいだが、それもあまり効果はないだろう。
そんなことを考えている間にも、全く痛くないぞという風に、オーガは攻撃を仕掛けてくる。それをよけたら、隙を狙って殴る。だが…
「ソンナモノカ?ハヤクゼンリョクヲダセ」
「…たった1ダメージかよ。あと500回近く殴れと?これは鬼畜だな。」
そんな皮肉を言っても、オーガは何も返さずに攻撃してくる。これは、早めに全力を出すか。
「『魔法武装』、発動」
それを発動した瞬間、籠手と脚絆の見た目が変わった。黒色をベースとした金属っぽい見た目に、少し金色がった装備。『魔法格闘術』と『魔法蹴術』を獲得したときに手に入れた新しいアーツだ。
これにより、攻撃力と素早さを1.5倍にしてくれる。これでもよけやすくなっただけだと思うが…攻撃もそこまで効かないだろうしな。
そして、もう一回オーガに攻撃される。よけやすくはなったが…相手の素早さも上がってないか?そう思い、よく見てみると、相手の腕に魔法がかかった水色の装備がついている。
「ソレヲツカウノハオマエダケデハナイ」
これは…まずいな。そして、相手が繰り出してくる連打。なんとかよけようとするも、一発だけもらってしまった。
もちろん壁にたたきつけられ、瀕死になる。バックから回復薬を取り出して飲んでも、治るのには時間がかかるだろう。一応飲んでおくが、このままでは殺され…
「ハヤクカイフクヲシロ。ソウシタラツヅキダ」
…なんだ?こいつは。治るのまで30秒ほどかかったが、こいつは一切攻撃してこなかった。何かがおかしい。
そこから、何回も攻撃を当てられ、そのたびにこいつは俺が回復するのを待つ。だが、回復薬にも限界があるし、先ほど腕に攻撃が当たったせいで、指輪も壊れてしまった。これは、完全に詰みだな。
…そうして、回復薬の瓶が一つになった。
「おい、ランデル…だったか?どうして俺を殺さないんだ?いつでも俺のことは殺せるだろう?」
「……ツヨイヤツト、タタカイタイダケダ。オマエハ、オレノタイリョクヲココマデヘラシタ。ソンナヤツ、ココサイキンハイナカッタ。ダカラ、ナンカイデモタタカッテ、オレヲコロシテホシイ」
「…そうか。だが、残念なお知らせだ。俺が持っている回復薬もあと1個。次の次に、俺が瀕死になったら…」
「ワカッタ、ツギノツギニヒンシニナッタラ、エンリョナクコロサセテモラウ。ソレガブシノナサケダ」
結構前から思っていたが、なんでこいつはこんなに知能が高いんだ?今までのオーガも、途中で遭遇した壁埋まり野郎も話さなかったのに…
「なぁ、ランデル。少し前から思ってたんだが、なぜ、お前はそんなに頭がいいんだ?」
「…サスガニアヤシマレルカ。…マァ、ソノハナシハ、オマエガオレヲコロセタラオシエテヤロウ」
「ハハッ、絶対にありえないことだな。」
「イヤ、モシカシタラアリエルカモダゾ?」
「そうなったらいいな。それじゃ、回復もしたことだし、やろうぜ。」
そういいつつ立ち上がり、一定の距離を取る。だんだんと戦う時間も伸びてきたことだし、今回も伸ばせるように頑張るか。
そうして、モウ何回目かもわからない戦いを始める。もう残り少ないランデルとの戦闘は、なぜか楽しく感じた。
だが、もう少しで累計300を減らせそうというところで、攻撃を食らってしまう。バックから最後の瓶を取り出し、すぐに飲む。だが、なぜか鉄の味がする。なんだ?これは。
そこに、いつもゆっくりとこっちへ来るランデルがなぜか駆け寄ってくる。…2,3メートルほどの巨体が走っていると、軽く恐怖なんだが。
「オイ、オマエ、イマ、ナニヲノンダ?ナゼ、オニノチノニオイガスル。」
「え?これ血なのか?道理で鉄っぽい味がするわけだ。」
「オマエ…スグニソレヲハカナイト、オレトオナジヨウニナルゾ!」
「何を言ってるんだ?…血を飲んだくらいで…」
その瞬間、なぜか急激に体温が上がってきた。風邪よりもはるかに暑い。その次に頭痛が始まり、体調がどんどん悪くなる。
「オソカッタカ…モットハヤクニチノニオイニキヅイテイタラ…」
〈告、個体名、月城柊羽が鬼の血を摂取したことを確認。適合率を確認します……計測完了。適合率、100%。特殊種族、『鬼人』へと進化します〉
ランデルのその言葉と、謎のアナウンスを最後に、俺の意識は遠のいていった。
楽しんでいただけたでしょうか。誤字脱字があった場合は、指摘をお願いいたします。極力ないようにしていますが、自分でも気づかない間違いがあったりしますので。