大分大空襲
辺りにサイレンの音が響き渡る。
家は焼け落ち、灰となり空気を汚す。
人が次々と死んでいった。
「空襲…」
俺はそう呟いた。
「…丸山さん!」
俺は急いで隣の家まで向かう。
「………」
丸山さんの家は無くなっていた。
そこにあるのは残骸と化した家だったものと、息絶えた丸山さんの姿だった。
「あ、あぁ…」
山田さんから声が聞こえた。
かろうじてまだ生きているようだ。
「そこに、誰かいるのですか…」
「丸山さん!佐藤です!」
俺は丸山さんの手を取りそう言った。
引っ張ろうとしたが、瓦礫に体が挟まっていて動かせなかった。
「私のことはいいんです。それよりも…」
「優美を…助けてやってください…」
「…!」
「あの子は両親を戦争に奪われて、頼れる私も…もうすぐ死にゆくでしょう」
「佐藤さん…あなただけが頼りです。あの子を…優美を助けてやってください。お願いします。お願いしま、す…。お願い…」
丸山さんの手から力が抜けていった。
俺は丸山さんの手をそっと地面に置き、自分の家に戻った。大きな長袋を担いだ俺は見晴らしのいい近くの丘へと登る。
「今なら誰も見ていない…か」
俺は長袋から黒く光る鉄銃を取り出す。
この大空襲から逃げるのは困難だ。
故に空襲の原因を無くす。
「まず1機」
ドン。
「2、3機目」
ドン。ドン。
「4機目」
ドン。
「5機目」
…ドン。
全て撃ち落とした事を確認し、スコープから目を離す。
「…あ」
「おじさん…」
優美ちゃんが目の前にいた。
2人の間に静寂が訪れる。
「日本の鷹」はこの日初めて、身バレした。
その頃。四皇国の情報管理室。
「戦闘機が全て撃墜だと…?」
「は、はい!5機全てのパイロットと連絡が取れなくなっており…」
「何~故!!そうなったんだ!!」
「まだ情報が無く…。ただ…大分に滞在しているものによると」
「なんだ!?早く言え!」
「大分山脈から弾丸のようなものが戦闘機に撃たれたように見えたと…!」
「そんな事出来るわけが無いだろう!時速3000キロの戦闘機を…」
「出来るさ。奴ならな」
「お前は…『鬼』」
「そんなとこに居たんだな~」
鬼と呼ばれた男は部屋を出ようとした。
「何処に行く…!鬼!」
鬼は振り返り
「何処って…会いに行くんだよ…「日本の鷹」にな」
不気味な笑みをこぼし去っていく。
戦乱の世が、始まろうとしていた。