その6
「お前、俺の事好きか?」
「は?」
「ああ、恋愛とかじゃなくて人として。」
「好きだけど。」
「だからだアホ!マヌケ!お前、防具つけてるとはいえ何本矢が刺さってると思ってんだ!これがもし俺じゃ無くて本番の仕事なら死んでるぞ!仲間?そんな事は今は捨てろ、殺す事だけ考えるんだ。他の感情は邪魔なだけだ!その矢全部抜いてもう1戦行くぞ!」
確かに誉の言う通りだ。誉の矢は多少は避けれたが8割りは当たった。それに対して私のナイフは当たった形跡がない。投てきが遅いから。ここの人達は色んなところを走っている分動きが速い。誉ならいい勝負が出来ると勝手に思っていた。だが、予想以上にいや、はるかに速いし正確に攻撃をしてくる。人は見かけによらない。まさにこの事だ。驚くあまり体が動かない。感情を捨てる?この状況で?無茶だ。
「おい。今日は終わりにしよう。俺の完封勝利な!」
「誉、動き速いんだね。」
「そこが棟梁に褒められた俺の唯一のいい所!殺し屋向きなんだとよ。」
「確かに向いてると思う。驚きで動けなかった。思考が邪魔した。私まだまだだわ。」
「でもののちゃんまだ10歳だろ?俺20だよ?」
「…そっか。」
「ねえ、ののちゃんってここから屋敷まで何秒で行けんの?」
だいたいここから屋敷までは普通の人が歩いて5分だ。
「だいたい30秒かな。」
「え、俺40秒もかかるのに。やっぱ一緒に走れないわ。」
しばらく会話が続く。
「ねえ、なんであんなに速く動けて、攻撃は正確に打てるの?普段どんな練習してるの?」
「よく相手を見て、相手の動きをよんで、相手に悟られないように動く事かな。ただ考えすぎちゃダメだけど。」
「はあ。」