その5
次の日のから午後の修行はナイフ術に変わった。とりあえず投げたナイフは全て当たるようになった。ただ投げるまでの時間が長い。それに正面にしか投げれない。このままでは殺られる……はっ!我に返る。「殺られるって何?私は殺し屋にはならないのに、なんでそんな事考えてんの。」その日は二度と的にナイフが当たることは無かった。
次第にナイフの重みに慣れてきた。ナイフを回して遊ぶことも増えてきた。今日は雨だ。雨の日の修行は2人1人組で行う。山道なり川なり危ないからだ。だが、実際の仕事では雨の日もある。だから雨は貴重な日なのだ。棟梁の元では私を含めちょうど16人の弟子がいる。偶数だとあまりが出ないのだが、私は殺し屋にはなる気が無いので雨の日はだいたい縁側でナイフと戯れている。残された1人は誉というほんわかしたオーラの男の子。男の子と言っても10も年上だが。
「誉は雨の日修行しないの?みんな喜んで行くじゃん」
「んー俺は鈍臭いしペアになるとしたらののちゃんでしょ。ついていけないもん。アハハ。それにさ、俺ここでは唯一の吹き矢使いじゃん?雨で吹き矢って結構辛いんだよ。知ってた??」
「いや、知らん。辛いから修行するんじゃないの?」
「そーなんだけどさ。ののちゃんは偉いね。自分を自分自身で高められる。俺は無理だぁ。」
そう言って寝転ぶ誉を見て言った。
「そこ雨漏りしてるよ。」
「うぇぇ。早く言ってよ!!」
「アハハ。冗談。濡れてないでしょ。」
私はこういう時間が楽しかった。「もうここに5年も居るのか。案外好きなんだよね。」雨を見ながら思う。
「ねえ、ナイフ術の練習付き合ってよ。ナイフと吹き矢異種格闘技戦みたいな感じで面白いじゃん。」
「たまにはやるか。」
いつも合わせてくれるこんな誉が好きだ。いつも優しくしてくれるここのみんなが好きだ。