その4
次の日から午前の修行の後、人を殺す術を教わった。棟梁は数年前まで現役だったらしい。棟梁の得意とする武器はナイフだ。だからここではほぼ全員がナイフ使いとなる。例外も居なくは無いが。
ナイフの使い方は色々ある。刺すのは勿論、切る、削ぐ、隠し持つことも出来る。私も色々な方法を試したがどれも上手くいかなかった。落ち込む私を見て棟梁は言った。
「お前は勘がいい。いいか、目を瞑れ。そして感じろ。お前の周りを動き回るものを感じとるんだ。そしてそのナイフを投げろ。的に当てろ。」
まじか。いきなりそんなこと言われても…
とりあえず言われた通りにしてみる。竹林の中を動き回っている物体が確かにある。ちょうど正面に来たところを狙う。ナイフを構える。右後ろに引く。正面に来る時をそっと待つ。
今だ!
右後ろに引いたナイフを正面に投げる。
シュッと音を立てたナイフはトンという音を鳴らし止まった。目を開ける。そこにはナイフが刺さった人の形をした木の的があった。
「やはり勘がいい。」
納得したように棟梁は言う。私は唖然としていた。
「この練習を毎日していればやがてどの方向にもナイフを飛ばせる。しかも相手の体の狙った場所にな。」
そう言い残して棟梁は姿を消した。私は自分の両手を見た。