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その9
外に出ると俊哉さんが待っていた。俊哉さんは心配そうにこちらを見ていた。
「棟梁はなんて?」
この人こんなに優しい顔できるんだ。意外だ。
「ばあに呼ばれたらしくて一言だけ話してきました。」
すると俊哉さんは驚きを隠せない顔をして
「俺でも会ったことがないのに。」
と言って何も無かったなら良かったと持ち場に戻って行った。
その年ももう終わりに近くなった頃、私のナイフ術は上達し、狙ったところに百発百中で投げれるようにになっていた。今日も稽古を終え、家に戻ろうとしていた。しかしいつもと空気が違う。よそ者の気配がする。急いで家に帰る。植木鉢の位置がズレている。今までに経験したことがないことが起ころうとしていた。