その1
ーあれからどれだけの時間が経ったのだろうか、今私は何処にいるのだろうかー
私、中村乃々葉。ののはです。5歳です。あれは今日の昼過ぎのこと裏山に1人で散歩に出掛けた私は背後から迫る大人によって連れ去られた。いわゆる拉致というもの。私の家は貧しくも金持ちでも無く、ごく一般的な家庭である。普通に育てられ、普通の人生を歩むはずだった。将来の夢は特に無く、つまらない5歳児であった。
「おい、降りろ」
連れてこられたのは場所も名前も分からない所。道と思われる両端には竹が並びその奥には日本風の一軒家があった。
1番奥の部屋に通される。畳のいい香りがする。しばらく待てと言われたので辺りを見回しながら待っていた。しばらくすると襖が空く。部屋に入ってきたのは50くらいのおじさん。おじさんの割にはガタイがいい。
「今日からここがお前の家だ」
第一声がこれだ。意味がわからない。だが、反論する気にはなれなかった。悪い人には見えなかった。自分に危害を加えないという点でだが。
「お前、名前は。」
「乃々葉。」
「将来何になりたい。」
「特に無い。」
「そうか、では強くなれ。ここではお前に乱暴する奴はいない。そこは安心してくれ。」
「はあ。」
私はここで強くなる。そう決心するのに時間は要らなかった。むしろ嬉しかった。私はヒーローもののアニメが好きだ。強くなるのにデメリットは無い。
おじさんは決心したのがわかったのか嬉しそうにニコニコしていた。私を連れてきた人達も嬉しそうだ。なぜ嬉しそうなのか全く分からなかった。