契約違反は存在の消滅
さて、どうしたものか状況を整理してみようじゃないか
帰省中に地震に遇い地割れに落ち、気が付いた時には知らない景色、ゲームの世界又は異世界にいた。飯でも食べて考えをまとめていると彼女に会った私の事を神様と思っているらしい
「とりあえずコーヒーでも飲むか、深雪はどうする?サクヤさんも」
「頂くわ」
「コーヒーとは如何なる物でございますか?」
「うーん、とりあえず淹れてくるから待ってて」
コーヒーも知らないのか、今時ゲーム内でも飲み物は豊富だしリストアップされていてもおかしくないと思うけど、言葉が通じなかったし本当にゲームの世界なのか?
「父ちゃんって神様なんだw」
「馬鹿言ってんじゃないの、幌影達もジュース飲んでもう少し待っててな」
「「「はーい」」」
先程から覗いてる子供達にジュースとお菓子を渡し席に戻った
「お待たせ、茶菓子もどうぞ」
「ありがとう」
「この黒い飲み物は?」
「これがコーヒー」
そう言って一口飲んで見せた、恐る恐るというべきか口につけるまでが長かった呼吸を整え、いざってな感じで飲み始め
「苦い、此が天界の飲み物!それになんと綺麗な紋様の器」
「お菓子も食べてみて、コーヒーに合うから」
百均の安物を感慨深く見ている彼女にクッキーを差し出す、一口食べて目を見開いたと思ったら何か幸せそうな表情、コーヒーより甘いものの方がおきに召すようだ、それぞれが一息付いた時
「そのサクヤさん、申し訳ないんだけど私は神様みたいに大それた者じゃないんだ、何処にでも居る人間なんだ」
「お戯れを下界の物に此のような素晴らしい品物は御座いません、それに妖精を従えておりますし」
幸せそうな顔を一瞬で戻し真剣な表情で私達を見る、私の言った言葉をまるで信用していない、何故か神様に間違いないと信じて疑わないようだ、こういう人を何て言うんだったかなぁ、あ!その前に
「アル!」
「はい、何かご命令でしょうか?」
「なんで中途半端な翻訳なんだ?」
「固有名詞上、マスターを指す意味は替わりません」
「いや!変わるだろう!神っていってるじゃないか私は人だぞ人、人間!ってそれにお前のその姿」
「はい、妖精をモチーフに再現してみました。ご不満でしたら…」
「いやいやいやいや、何で腕時計の外に居るんだ」
「わかりません、新機能でしょうか」
「なんでやねん」
まさか機械に突っ込みを入れる日が来ようとは、またひとつ訳のわからない事が増えたがここまで来ると逆にどうでも良くなる
「とりあえず、力になれそうには無いんだ申し訳ないんだけど」
「警告!契約を違える事になります、断る事は出来ません」
「どういう事?」
「マスターとの間に身魂契約が成立しております。マスターはサクヤ様からの依頼を断る事は出来ません」
「新婚契約!あなたって人はー浮気者!信じていたのに」
「何かの間違いだってそんな契約した覚え無いし」
「否定、マスターは依頼を承認し、対価を持ってサクヤ様との身魂契約は締結されました。再生しますか?イエスorノー」
「・・・イエス」
「再生を開始します。」
AIウォッチから光が放たれ壁に投影されたのはつい先程までの光景
すがりつく彼女、あたふたしている私
「この身この魂を捧げます!、どうかリンボクを、お救い願います!」
「分かったから!真剣なのは伝わってるから。アル!」
「マスターからの承諾を確認、対価を支払い《身魂契約》を受諾しますか?」
《はい・いいえ》
サクヤは《はい》と答えた
「あなた、これはどういうわけ?」
妻の冷たい視線
「あの時は彼女の言葉が分からなかったから落ち着かせようと、つい」
「それでも助ける約束したのよね」
「…」
「それなら、出来る出来ない関係なく協力してあげなさい」
「無茶言うなよ、国難だぞ一個人でどうかならないだろ」
「マスター、契約違反は存在の消滅です」
「はっ?」
「身魂契約は神聖契約の一種により破棄又は不履行の場合、対価と等価分の代償が必要です。」
「それが存在の消滅?」
「肯定」
あぁ、何か歯車が噛み合ったこれはゲームの世界じゃない、ラノベに良くある異世界転移系だろう。彼女が多分本当は神様を呼び出そうとして、どうやら私達が召喚されたらしい、どちらにしても日本へ帰るにもリンボクとやらを救わなければ私はおしまいと言うわけだ。妻と子供達を置いて死んでたまるか!
「サクヤさん、事情を教えてくれないか?」
こうなったら開き直り、出来ることならやってやろうじゃないか!
お読み頂きありがとうございました!
次回もお楽しみと言ってみたり