回想2
回想はこれで最後です。
旅行2日目
「わぁ!海?海!」
はしゃいだ声を上げるのは末っ子長女の澪、橋から見える海に大興奮だ
「この橋を渡ったらもう北九州だよ」
「後少し」
関門海峡を走行中、窓から外を眺めながらご機嫌な子供達、何度も来ている上の二人はどうやら九州の玄関口、北九州市がわかるようだ
「危ないから座ってシートベルトを締めなさい」
「警察に捕まるわよ」
「大丈夫だって!」
「「大丈夫♪大丈夫♪」」
聞く耳を持たない幌影、それに便乗して下二人も座る気配が無い
「幌影!!」
体をビクッとさせ渋々席に着きシートベルトを締め、ブツブツ文句を呟いている、下二人もそれにならいおとなしく座り
「おばあちゃん家着くまでおとなしくしてようね、みゆ」
「うん!」
日向と澪は仲良く頷きあってる、幌影は隣に置いて有ったスイチーを引き寄せやり始める。しばらくすると軽快な音楽と共に戦闘しているらしき効果音が微かに聞こえる
「なぁ幌影」
「…なに?」
明らかに不機嫌な声、自分だけ怒られたことがよっぽど気に入らないらしい
「どんなゲームやってんだ?」
「F◯」
「ゲーム名じゃなくて、内容はどんなんだ」
「パーティー組んで戦ったり、素材を使って武具やアイテム作ったりそんな感じ」
うーむ、いわゆるRPGってやつかそれなら
「職業はなに使ってんだ」
「魔法剣士」
「魔法剣士?」
「簡単言うとナイトの上級職強いんだ、何が強いって言うとね…」
妙に熱が入っている?、それになんか説明が軽やか?なめらかにしゃべっている相当ハマっているらしい
「あり得んだろうが幌影がもしなるとしたらどんな職業がいいんだ?」
「リアルで?、ならやっぱり勇者かなぁ、これには無いけど昔父ちゃんのやってたのに有ったじゃん、魔法も使えて剣士がドラゴンに乗って世界中を旅して悪いやつやっつけて」
「ドラ◯エか!」
「そうそれ!でも本当は空を飛べて自由に行きたいところ行けたら楽しいだろうなって、そんだけ」
「確かに楽しそうだな、自由に飛ぶなら飛行機でも…」
「ファンタジーに飛行機かよ、魔法で答えてよ」
息子からの白けた目線が突き刺さる。確かに世界観ぶち壊しだなファンタジーの魔法か、うーん
「重力魔法か風魔法でどうにかなるか?いっそテイマーとかか?」
「テイマーって魔獣使い?ドラゴンなんか世界中探したっていないじゃんw」
幌影に笑われた、くそう魔法っ縛りがなければなぁ
「気体を自由に操れる職業でも有ればなぁ」
「なんで?気体なんて操れても空飛べないじゃん?」
「そうでもないぞ、飛行機を飛ばす航空力学は気流、云わば気体の学問だし」
(たぶん)
「何それ、飛行機ってジェットエンジンで飛ぶんじゃないの?」
「紙飛行機も空を飛ぶだろ」
「何言ってんの、紙飛行機は飛ばすから飛ぶんじゃん」
うーんまだ中学生には理解出来ないのか?いや幌影だしな興味が無いから知らないだけか?
「紙飛行機を飛ばすとたまに真っ直ぐ飛ばず上に行ったり左右に行ったするだろ?」
「うん」
「あれは空気抵抗でああなるんだ、空気は液体と同じで普段気にならないけど抵抗力があるから紙飛行機位軽くなると抵抗を受ける」
「じゃあ結局飛べないじゃん」
うーん、らちがあかんな、それなら
「気体が操作できれば自由に空気を動かせる、簡単に言うと風が起こせるんだ」
「風って気体なの?」
「そ!目に見えない気体が動く時に風が発生するの、風船位なら簡単に空に飛ばせるだろ、だから気体操作が出来たら自由に空気を動かせる、だから足下から台風並の風を出したら人間も空を飛べる」
「おぉ!分かった、テレビでやってた台風で車が吹っ飛ぶやつあれって台風が気体操作してたんだね」
いや、なんか違うが大まかには多分合ってる?めんどいし詳しく説明出来ないからそういう事にしておこう
「そういう事だ」
「気体魔法有ったら良いな。戦闘機より速く飛べたらおばあちゃん家まで一瞬で着けちゃうね、気体操作欲しいな!」
音速はさすがに無理なんじゃ?まぁ、たらればの話だしリアルな問題を突っ込むのは大人気ないか
「じゃ僕は土を操作したい」
唐突に日向が話に入ってきた、空を飛べたらの話で何故土を操作したくなる?
「日向?何で土を操作したんだ?」
「え?目に見えない物は良くわかんない、でも土なら好きなものを作って遊べるよ?」
あ!なるほど、砂場でお城作ったり泥だんご作ったりしても不器用だから歪になったり壊れたりするから日向はそう思ったんだな
「それなら日向は固体魔法だな、石でも砂でも形が有るものならなんでも操作出来た方が良さそうじゃん」
「固体魔法♪固体魔法♪」
幌影がそんな事を言いそれを日向が連呼、気体は知らないのに固体は知ってるんかい、中学生の理科はどうなってるんだ?
「みおは?」
澪が自分だけ仲間外れだと思ったのか寂しそうに尋ねてきた。そうだなぁ気体、固体ときたらやっぱり物質三態最後は
「液体操作かな?みおの名前にさんずいが入ってるしね。お水を使って遊べるよ」
「液体操作!海で遊べる?」
「そうだね海も液体だし思いのままだ」
「魔法使いなるー」
くまおを強く抱きしめながらルンルン状態、機嫌が良くなったようだ
「父ちゃんは?」
「私か?そうだなぁー、やっぱり物作りが良いな、誰も作った事の無い物を創造して人の役に立ちたいかな?」
昔から今で言うDIYが好きなのだ、買ってきた方がもちろん速くて楽だけど、やっぱり自分で作れる物は作りたいのだ。ネットもあるし分からないことはすぐに調べられる今の時代、子供の頃より更に物作りが好きになってしまった
「じゃあ、あれだね錬金術師じゃん」
「うーん、どっちかと言うと鍛冶職人かな?」
「鍛冶職人って武具を作る人だよね、武器つくるの?」
「作りたいのは武器じゃなくて…日用品?」
「じゃあやっぱり錬金術師じゃんw」
確かに鍛冶職人より錬金術師の方が日用品を作ってる感じがするかけど、なんか嫌なんだよなぁローブ来て大釜によく分からない素材を入れて呪文を唱える?DIYとかけ離れている気がする
「どうせ、たらればの職業だし創造職人にしよう!」
「創造職人?何それ?」
「まだ世の中に無い物を作る職人って事、作成に必要な知識はコレが有れば良いしね」
そう言って腕時計型AI端末を見せた。最新式は人工知能を搭載しており最初にセットアップした名前(愛称)を呼ぶと起動し会話で通信や検索といろいろできるのだ。ついでに二次元では有るがAIの擬人化も出来るらしい
「父ちゃんばっかりズルい、オレだって欲しいのに!」
「はっはっはっ!欲しければお小遣いで買うんだな」
悔しがる幌影にAIウォッチを見せびらかしながら和気あいあいと高速道路をひた走る、子供達の機嫌も良くなった事だし実家まで
後少し
「私はやっぱり人以外と意思疎通が出来ると楽しいと思うわ」
「えっ?何だって?」
「何でもないわ、少し眠いし着いたら起こしてね」
妻が囁いた言葉が微かに聞こえたが何も言わなかったかのようにシートに頭を預け瞳をとじていく
景色も海から町、町から山、山から草原と移り変わり熊本県も半ばへ差し掛かったとき突然それは起きた
まるで地面が波打ったような衝撃、車体が大きく跳ねコントロールを失う
「きゃー!」
「あぐっ」
「うぅ!」
子供達から悲鳴が漏れた、どうやら幌影は舌を噛んだらしい、車体が激しく揺れパニック状態、気がついたら時には既に遅く寸断された道路から地割れへ車ごとダイブした後
「母さんごめん」
孫の帰りを心待ちにしているだろう母への言葉を残し奈落の底へと落ちていった
次話から物語スタートします