青凍鋼の一振り
サクヤさんに連れられ中庭らしき場所に案内された。そこには木の柱に藁を巻いたような物が3つ地面に並んで突き刺さっている、近くには身長180センチ位でガタイの良い男性が並び立っている。いかにもザ・サムライって感じの赤黒色の鎧を着込み、手甲、足甲を付けている
「ゴウキ!」
サクヤさんの呼び声に気付きこちらを向き片ひざを地面に付け頭を下げる、しゃがんでも日向の身長より高そうだ
「神様、家臣のゴウキにごさいます」
「よろしくお願いいたしまする」
野太い声だ、戦場では良く声が通りそうだ
「よろしくです。ゴウキさんにはこちらの剣を試しに振って頂き感想を頂ければと思います」
「拝借致します。」
ゴウキさんの前に行き声をかけると膝を付いたまま両手で青凍鋼製の長剣を受け取った。若干緊張しているのか肩が震えている
「では、お願いします」
「は!」
立ち上がり藁の巻いてある木の柱に向かい、すぅーっと息を吸い、カチャっと握り直す音が聞こえ、次の瞬間
「はっ!!」
吐く息と共に剣擊が横一線に振るわれたと思われる、正直見えなかったので剣が藁の巻いてある反対側に振りきられている姿勢だけで判断する、しかし巻藁は倒れる事はなかった
「切れなかった?」
「違うでござる、このように」
ゴウキさんが巻藁の上部を掴み引き上げると、綺麗に分断され鉄芯、木の板、藁の断面が見えた、切られてもなお吹き飛ぶ事もなく柱の上に乗っていたようだ
「不慣れな得物でこの切れ味、流石は神の創造たもうた剣でごさる」
「すっげー、父ちゃんすっげー!」
「スゴいわねあなた」
「アホみたいな切れ味だな、鉄も斬れるのかよ」
まさか鉄の棒が中に仕込まれていたのは意外だったがそれまで切ってしまうのはそれこそ予想外、それならもう一つも試して貰おう
「ゴウキさん、剣に魔力を込めて振ってみてください」
「承知いたした」
再び巻藁に構えた、剣が淡く光出した、魔力を込めるとどうやら剣そのものが光るらしい、新発見
「うぅ!」
突然、手から剣が滑り落ち、そしてゴウキさんも崩れ落ちる様に地面に膝を付いた、肩が小刻みに揺れ呼吸が震えているように見える
「どうしました?」
「す、すみませぬ、剣を握る手から寒気が全身を貫いたでござる」
唇は紫に変わり寒さに震える体、低体温になった時の症状、青凍鋼の特性は[触れた物質の熱を際限無く吸収し尽くす、魔力操作でコントロール可能]だったか?もしかして魔力を使えば使うほど際限無く吸収するのか
「アル」
「マスターお呼びでしょうか」
「青凍鋼の特性は触れたもの全てに効果が有るのか」
「肯定、接触した全ての物質に効果を発揮します」
それってかなりヤバイんじゃ?魔力に反応して周囲の熱を吸収、なんて武器に向かない金属なんだ
「使い手に効果を発揮しない方法は?」
「検索中・・・魔法銀と合金にすることによって刀身のみに効果を制限可能です」
うぉ!脳に直接製造方法が流れ込んできた、知らない筈の金属の使い方が元々から知ってたかのように頭の中に使用方法から配合方法まで思い浮かべれるようになった
「サクヤさん魔法銀は有りますか?」
「すぐに用意させます」
脇に控えていた仲居さんに伝えると一礼の後、急ぎ離れて行った、あの仲居さん走らせてばっかだなぁ、後で謝っとこう
「某が不甲斐ないばかりに試し切りすら出来ぬとは」
顔を歪め心苦しそうに呟く、しかし青凍鋼の特性上仕方のない事ゴウキさんが責任を感じる事はない
「私が迂闊でした、気にしないで下さい。これから改良しますのでもう一度、お願いできますか?」
「はっ!是非とも」
「ところでゴウキさんの得物は何ですか?」
「はっ!こちらにござりまする」
脇に差した刀らしきものを私の前に差し出して見せた、失礼して鞘から抜いた、刀身には刃紋が浮かび、反り、鎬とまさしく日本刀そのもの良く斬れそうだ
「業物ですか」
「わかりまするか!我が国の名匠の一振りにござりまする」
どうやら名匠の作品らしい、ゴウキ殿は流石はみたいな顔で私に眼差しを向けているが適当に言ったんです、すみません、仲居さんが布に包まれた物、多分魔法銀を抱えて戻りサクヤさんに渡している
「こちらをどうぞ」
サクヤさんから受けとり魔法銀を確認、一抱えも有るにも関わらずものすごく軽い、金属とはとても思えない程に、これを使えば青凍鋼を使えるレベルに作り直せるはず、剣より刀の方が想像しやすいし日本刀の切れ味は世界一だったか?なんかの話で聞いたことがある
「よし、刀にしよう」
刀身はゴウキさんのを参考にして切れ味は単分子ナイフ並み、刃部分には青凍鋼を使い、挟むように地金と柄部分には魔法銀を使おう、よし!
「創造・刀」
「製作を開始します」
手に持った剣と魔法銀が白い光に包まれた、直線から湾曲した形に変形し先程試し切りに使用した巻藁が更に光に包まれ材料として使われた。サクヤさん他が目を見開き摩訶不思議な光景を凝視している
光が収まりその姿が顕になると先程の剣とは打って変わり全体的に白銀色の刀になっているが平地は薄く青みががり刃紋は淡く青い輝きを発している、先程の剣より格段によい出来だ
「ゴウキさん、お願いします」
「はっ!」
刀を受けとり巻藁に構える、刀身が輝き始めるが先程のようにゴウキさんが倒れる様なこともなく振り抜いた。
「きれい」
深雪の言葉に頷く、輝く一線は青色の軌跡を描いた