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さして大きな壁ではございませんし、乗り越えてみせましょう。

「メロディ・クララック。貴女とは婚約破棄をさせて貰う」


 あらあら、まあまあ。



 陛下の主催の舞踏会にて、突然そう言い放ったのは、私の婚約者である侯爵令息であられる、ルイ・シュヴァリエ様。


 そして突然の婚約破棄を突きつけられた私は、クララック侯爵家のメロディ・クララックと申します。以後、お見知り置きを。


 さて、急にこのような事を仰った訳ですが、私は婚約破棄される様な事はしてないのです。むしろ、ルイ様とは、良い関係を築けて来ていたと思っていたのですが…。


「メロディが、エリアーヌ嬢を陰で虐めていた事の証拠は取れている。私が、そういう事をする輩が大嫌いだと言うのを、メロディは知っていたと思っていたのだが」

「存じております」

「なのに、虐めたというのか。メロディ、私は悲しい限りだよ。そしてそんな人を私は婚約者にする事は出来ない。よって、今夜、私はメロディ・クララックとの婚約を破棄し、エリアーヌ・バルニエ嬢と改めて婚約をする」


 あらあら、まあまあ。


 周りの貴族の皆様は、ザワついてますわね。こんな、突然の婚約破棄宣言と、新たな婚約を叫ばれたら、無理もないのですが。


 なお、先程からルイ様が腰に手を回して抱き寄せてるご令嬢がいらっしゃるのですが、こちらが今お話に出てきました、エリアーヌ男爵令嬢ですわ。

 エリアーヌ様は、先程から私を見ては肩をビクリと跳ねさせて、よよよと涙を流してルイ様にくっつかれております。私、エリアーヌ様を虐めた事はないのですけれども。

 ですが、ルイ様は良くも悪くも一直線なお方。悪く言えば単細胞。こうなると、もう、私の言葉は聞く耳を持たないでしょう。仕方ありません。


「婚約破棄の件、承りました。ルイ様」

「な、なんだ、随分あっさり承諾するじゃないか」

「ルイ様は、婚約破棄反対と、言われたかったのでしょうか?」

「そんな訳無いだろう! 言われた所で、取り消す気も無いがな」

「でしたら、お互いの為にも、このまま承諾するのが、一番ですよね」

「……」

 

 ルイ様、分かってますわ。貴方は私がショックに打ちひしがれて、その上で、エリアーヌ様と仲睦まじい姿を周囲に見せびらかしたかったのでしょう。


 ルイ様は金髪碧眼、エリアーヌ様は金髪緑眼と、見目も大変麗しいお2人ですものね。

 私はそういう意味では茶髪に茶の瞳なので、些か地味さはあるのかも知れません。私は両親譲りのこの容姿を嫌ってはおりませんが。


「婚約破棄の手続き等については、改めてこちらから、書類等持ってお伺いした方が宜しいのでしょうか」

「え、あ、そうだな、それがいいだろう」

 

 ニコリ。

 私は、ルイ様からその言葉を頂くと、満面の笑顔になりました。

 



 ねぇ、ルイ様。お忘れなのでしょうか。

 私が、いえ、我がクララック家が、絶望からすらも、這い上がってきた一族である事を。そして、シュヴァリエ家以上に、曲がった事は絶対許さない、潔癖な一族である事を。

 

 突然の婚約破棄、ありもしない事実無根の噂、これら全てを、そのままにしておくほど、私もクララック家も甘くはございませんのよ?


 

 ルイ様。次にお会いする時、まだ、貴方はそうやって、私を見て笑っていられるのかしらね。

 どんなお顔が見られるのか、今から楽しみにしておきますわ。

 

 


 

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