鏡の王国
逆立ちをした光彩のピラミッドに
繚乱としてから次第にやさしく
吸い込まれていった。
最初に案内してくれたのは
リュラーを奏でる緑色の翼の天使
その姿と旋律が心のなかで
アイスクリームのブランコとなって
ろーるすてっぷじゃんぷしながら
甘く溶けていった。
すると緑色の翼の天使が言った。
「君の瞳に映るものは、すべて、君なんだよ」
それから
トントトントトトトトン
と草むらや幾つかの木々と
遊びながら先に進むと
水晶の泉があった。
ときどき噴水のように
白い太陽に向かって
飛沫をあげながら高く舞い上がった。
しばらくそれを眺めていると
光のヴェールを身にまとった
赤い色のしっぽの聖獣がやってきた。
どちらかというとライオンよりもカメのようである。
どちらかというとライオンよりもカメのような聖獣だか、動物だか、かわいいかも知れない、そのものが言った。
「あそこにいるメランコリックな子猫ちゃんは、どこかに向かって投げキッスをしているよ。一体全体、どこに向かって?なんだかよく分からないけど、きっと夕焼けの港街を歩くのが寂しいんだよ」
「いや、もしかしたならば、世界の戦争を辞めさせたいのかも知れないよ」
「そう、そうだね。朝の目覚めのことだよね」
あの朝の心が、ふと、ぼんやりした光の露が、手のひらで、溢れたような気がした。
東西南北の風がジェムシェリカのような星から流れてきたので、南東の空に顔を向けると、鐘のような大きな音を立てながら、青い翼が生えている、犬のような存在が飛翔していた。その姿は、一言で顕すならば「ぽんぴんしゃん」である、それは嘘ではない。
「君は、どこか痛んでいるようだ。たいていの人なら死んでいるよ」
「ん?」
「それなのに、雲をほうばったりするんだね」
「ん?あったかくなったり、あったかくなったり」
「君のような人が歳をとったら、誰かに、ポテトをあげるんだね」
「ああ、つまらないつまらない」
ポケットのなかにある小さなポケットのそのなかにある、砂浜から取ってきた、そのあのこれ、それに、触れようとした。
「怖いんだ、怖いんだ。見るもの全てが怖いんだ」
「怖がればいい、怖がればいい。見るもの全てを怖がればいい。ついでに、ベッドから起き上がらなければいい」
そして、二つの命は、不器用に身を寄せあった。
次第に、二つの呼吸は、ハーモニカになって、落ち合ったところで、繋がった。落ちていったところには、土がある、そこには土がある。
やがてハーモニカのメロディーは「Shanpotatan」のあくびを召喚した。
いちに、さんし、ごうろく、しちはち。にいにさんしごうろく、しちはち。さんに、さんし、ごうろく、しちはち。ひゃくさんじゅうはち。にゃくさんじゅういち。せんさんびゃくななじゅうよん。いちまんさんぜんごひゃくろく。
ひとりは、せかいだった。
それから、せかいはいった。
「そろそろ恋人を探さなきゃ。」
人は言った。
「靴の紐を結ばなきゃ。」
せかいはいった。
「スキップジャンプロールウォーター」
人は声を出しながら身体を大きく伸ばした。
せかいはいった。
人は言った。
「出かけます。出かけてきます。」