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096.お泊まり先は温泉地

 ガイザス工房を後にした俺たちは、ファルンの案内で村の教会にやってきた。

 ナーリア同様にここの教会は普通の家で、玄関先にマール教の紋章が掲げられているくらいである。あと、僧侶さんが人間と地人族のコンビだったりもする。まあ、住んでるのは地人族が多いから、その方がいいんだろうが。

 で、地人族の僧侶さんに連れられてやってきたのが教会の裏にある、ちょっと大きな建物……要は宿舎だ。僧侶さんとその同行者が泊まるように作られたので、一度に泊まるのは多くてせいぜい三組ほどとのこと。


「此度はファルンさん御一行のみです」


 そう笑って教えてくれた僧侶さんは、宿舎の中を案内してくれた。山奥の村の宿舎にしては石レンガと木造の組み合わせで、結構しっかりした作りだと思う。この作りで教会の方も建て直せばいいんじゃないかなあ、とは部外者の勝手な感想だ。


「寝室は二部屋ございます。食堂などはございませんので、お食事は向かいの居酒屋などでおとりください」

「僧侶さんも、そちらで食べられるんですか?」

「ええ。私はここの生まれでして、実は向かいは実家なんです」


 しれっと教えてくれた。ああ、実家の向かいで僧侶さんやってるなら、ご近所付き合いとかは大事だよなあ。


「厠は裏の廊下の先にございます。少々遠いので、必ずお二方以上で向かわれますよう。特に、小さなお嬢さんなどは迷うと危ないですから」


 俺だな。

 なお、裏の廊下は学校とかの渡り廊下みたいな感じで、床と屋根だけがあるタイプ。そんなに離れてないけど、夜は真っ暗な気がする。確かに一人で行くのは問題だな。……だから壁作ろうよ。

 そして、ある意味さすがマール教だと思ったのが、風呂はしっかり大きい銭湯レベルのが男湯女湯それぞれ揃ってたところだ。一応、マジで銭湯代わりに他の旅行者や地元の人たちも使ってるらしいけど。


「女性はこちらの大風呂を、男性はこちらの大風呂をお使いください。ドンガタは神の恵みにより温泉が湧いておりますので、ゆったりご利用いただけますよ」

「ご丁寧にありがとうございます」


 大風呂が自慢らしい僧侶さんにファルンも笑って答えたけど、何か頬が引きつってるのは気のせいかね。他にも気を配る所あるだろう、とかそういうツッコミしたいなら俺は大歓迎だぞ。




「では、どうぞごゆっくり」

「お世話になりますー」


 ぐるっと戻ってきて、僧侶さんはお仕事に戻った。

 俺たちのあてがわれた部屋はリビング一つに寝室二つ、あまり広くはないけど男女混合パーティで泊まるには十分である。


「おふろはおっきいですね!」

「あとではいりにいきましょう!」


 ミンミカ、アムレク。気持ちはよく分かるというか山の中の温泉なら今すぐにでも入りに行きたいよな、確かに。

 一応荷物は置いたわけだし……と思ってたら、カーライルが不意に声を上げた。


「そうそう。コータ様から皆に贈り物があります」

「え?」

「コータ様から?」

「まあ」

「おい、俺からって」


 色違いのサッシュのことなんだろうけど、別に俺からってわけじゃないだろうが。金出したのはカーライルだし、それに。


「カーライルやミンミカも一緒に選んだろうが」

「そうですが、でも最終的に決定したのはコータ様ですので」


 いやまあそうだけど。

 そんなわけで、サッシュを奥さんとこの店にいなかった三人、それぞれに渡した。


「まあ。僧服に合う色ですわね、ありがとうございます」

「そう思って選んだんだ。いつも付けててほしいしな」

「ええ、もちろんですわ」


 明るい青のサッシュを腰に巻いて、ファルンはほんわかと微笑んでくれた。


「おいしそうないろです!」

「食うなよ」

「わかってます。ありがとうですー」


 浅葱色のサッシュにぽふと顔を埋めてから、アムレクは耳と尻尾をぱたぱたと揺らした。


「これを、コータ様が自分に?」

「さっきも言ったように、ミンミカやカーライルにも一緒に選んでもらったけどさ。この色が、シーラには一番合うかなって」

「ありがとうございます。この恩は一生、いえ、生まれ変わっても忘れません」


 濃い黄色のサッシュを、シーラは良い剣でも受け取ったかのように捧げ持つ。いや、お前何でそこまで言うかな。


「大げさだよ……俺は、生まれ変わってついてきてくれただけで嬉しいのに」

「なんともったいなきお言葉!」


 いや、だからそこまで言うなってば。

 あとカーライル、感動して涙流すんじゃない。俺たちがマーダ教だってバレたら困るの、お前もだからな。

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