表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/432

093.山の中だと必要らしい

 結局。

 ファルンには明るい空色、シーラには濃い目の黄色、ミンミカには可愛いピンク。

 アムレクには浅葱色、カーライルは自分で黒を選んだ。


「毎度ありがとうございましたー。いっぱい買ってくれてありがとね」

「いえ。連れの分ですから」


 ここにいない三人の分をそれぞれ袋に入れてもらい、俺が受け取る。カーライルが代金を払いながら、ひどく嬉しそうに笑った。

 ……俺とおそろいだから、かね。こいつのことだし。なおここにいる三人は、既に全員サッシュを腰に巻いている。


「お連れさん、いい同行者に恵まれたもんだねえ」

「お兄ちゃんやお姉ちゃんたちには、いっぱいお世話になってます」

「ミンミカも、いっぱいおせわになってるです!」

「そうかい。そりゃほんと、いいねえ」


 俺とミンミカが奥さんの言葉に答えると、奥さんもとっても嬉しそうな顔をする。それからミンミカを見て、うんとひとつ大きく頷いた。


「その耳飾り、似合ってるよ」

「ありがとうですー!」


 先に購入した垂れ耳用の耳飾りを、ミンミカは両方の耳に付けている。ちょっと重そうなんだけど、これはこれでバランスが良いらしい。

 他にも小物とかちょこちょこ買ってるんだけど、まあちょっとしたもんだからいいやな。


「そんじゃ、行きましょうか」

「はーい」


 ずっと待っててくれたドートンさんが、頃合いと見て声をかけてくれた。うん、すっごく待たせてごめん。

 もっとも、彼いろんな商品を観察してたから、時間つぶしはできてたと思うけど……もしかしたら、剣作るよりこういう装飾品の方が合ってたりしてな。


「ドートンちゃん、この子たちに何かあったらアンタのせいだからね。しっかり送り届けるんだよ」

「んな無茶苦茶な! ちゃんと送るに決まってんでしょうが!」


 ともかく、威勢のいい奥さんの声に叩き出されるように俺たちは、店を出た。




「やかましくてすんません。ウサギの姉ちゃん、うるさくなかったっすか?」

「ちょっとびっくりしただけです。だいじょーぶ」

「そりゃよかったー。オレは慣れてるからいいんすけどね」


 みんなで歩きながら、ドートンさんがミンミカに尋ねてる。ウサギ獣人だから、俺たちより耳が良いのは確実だもんな。って、ドートンさんも猫だけど。

 「あ、そうそう」とドートンさん、言葉を続けた。話題は違ったけれど。


「旅行中だと多分知らないと思うんで。あの店に限りませんけど……この村で売られてるサッシュね、虫よけ効果あるんすよ」

「虫よけ?」

「むし、ってぶんぶんとんでるやつですか」

「それそれ」


 そういえば、地味に飛んでるよなあ。森の中とか街道とか、普通に。つか、スプレーとか蚊取り線香とかなくても虫よけできるんだ。どうやってだろう。


「糸染めてる染料に、虫が嫌がる何かが入ってるらしくて」


 染料か。植物から取ったものだろうから、虫が嫌いな匂いとかするやつを使ってるんだろうか。

 けど、それで虫が避けてくれるなら、地味に助かるよな。顔の前飛ばれるとうっとうしいし、伝染病とかもありそうだし。

 ……ん、あれ?


「ここ山ん中っすから、大きな虫が血を吸いに来たりすることもあるんす。それを近づけない効果があるって」

「へえ……カーライルお兄ちゃん。ナーリアには、なかったですよね」


 山の中の村で、虫をよけるためのサッシュ。

 ドンガタの村ではどうも当たり前のものっぽいけれど、確かナーリアの村にはそういうの、なかったよな。


「そういえば、そうですね。あの村は、虫もあまりいなかったようですし」

「皆さん、ナーリアからおいでで?」


 カーライルもあれ、という顔になった。そこへドートンさんが尋ねてきたのは、まあ当然というか。俺たちが出てきたところ、知ってるわけないもんな。


「ミンミカとアムレクおにいちゃんはちがうですけど、コータちゃまとカーライルさんはそうです」

「ファルンお姉ちゃんがナーリアの教会にいて、シーラお姉ちゃんがその護衛さんだったんです」

「あー、それで皆さんで修行の旅に」


 中途参加であるミンミカが答えてくれて、俺が名前の出なかった二人の説明。これで通じるからこの世界すごいな、と思う。一人でも教会にいた人がいれば、じゃあ修行の旅ですねで通じるらしい。

 そして、ナーリアの村の名前を知ってた、その理由はドートンさんが教えてくれた。


「あそこ、うちの村とはあんまり付き合いないんですよね。昔は鉱石が取れたようなんですが、山奥に禁足地があるとかで取れなくなって。そういや虫が出るって話も聞きませんね」

「あー」


 はは。

 どうやら俺のせいらしい。ナーリア近くの禁足地って、俺の今のロリっ子ボディが封印されてた場所だもんなあ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ