表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
91/432

090.それなら弟子が案内しよう

 ガイザスさんは俺やミンミカを見て、「ふむ」と目を細めた。まるで孫を眺めるお祖父さんみたいな……いや、いくらなんでもそこまで行ってる年齢じゃなさそうだけど。


「ちっこいお嬢ちゃんは、さすがに退屈じゃろ。うちの嫁が装飾品作っておってな、そっちの工房見に行ったらええ」

「わっかりましたー」

「ありがとうございます。そちら行ってみます」


 すっかり保護者モードになったカーライルが、頭を下げる。確かに、ミンミカはすぐに退屈しそうだし俺も……そうだよな、外見考えると剣作るとことか興味なさそう、と考えるのが自然だ。うん。


「いやいや。ドートン、案内しちゃれ」

「うぃーす」


 おや。獣人は今の自分もそうだから慣れたけど、顔がしっかり猫の獣人は初めて見た気がする。それも、どうやらガイザスさんの知り合い……というかこりゃお弟子さんとかだな。へえ。


「ついでに預かるもんとかありますか?」

「鞘飾りを頼んどるんじゃ。あと、さっきの輩のような阿呆が来ていないかチェックも頼むぞ」

「りょー。つーわけで、案内しまっさ」


 ドートンだっけ、えらく軽いなこのトラ猫兄ちゃん。ぱったんぱったんと長い尻尾を揺らしながら、こちらに挨拶してくれた。まあ、悪い人じゃなさそうだ。悪い人ならミンミカがまず反応しそうだし。


「おねがいしまーす」

「コータちゃんをよろしく頼む」

「おまかせっす。姐さん、師匠の剣は少々値が張りますが、いいやつですよう」


 俺が答えると、シーラが努めて冷静に声をかけた。あっさり答えてる上にしっかり営業、大変だなあ。師匠ってことはやっぱり弟子か。




 で、俺たちを連れて歩きながらドートンさんは、何というか楽しそうに独り言である。何でだよ。


「あっちからもこっちからも頼まれて、頼りがいあるなあオレー」

「自分で言うんですか?」

「自分で言って、自分の自信にするんす。オレはまだぺーぺーの弟子で、剣どころか原料もほとんど触らせてもらえてませんから」


 何でだよ、と思ったので尋ねてみたら、そんな答えが返ってくる。そうか、下っ端さんなのか。それでお使いとか、俺たちの案内とかやらされてるわけだ。もっとも、本人楽しそうだからまだいいけどな。


「なるほど……大変なんですな」

「ま、一人前になるまでずいぶんかかるのは覚悟の上っすしね。オレも、わかってて師匠の弟子になりましたんで」


 カーライルとは話が合うのか、さっきの独り言より楽しそうに話をする。年齢近いのかな? 猫獣人の年齢なんて分からんけどさ。


「いちにんまえ、じかんかかるですか?」

「大人になる一人前と、剣を作れるようになる一人前とは違うからなあ」

「はあ~」


 ミンミカは、そこら辺をごっちゃにしてたようだ。ま、職人やってたわけでもないようだし、近くに地人族はいたはずだけどそういうのは分からないかもな。鉱石掘りに来てたんなら、ある程度ちゃんと仕事ができないと危ないだろうし。

 そんな会話をしてるうちに、どうやら到着したようである。普通の家ではあるけれど、入り口は広く開かれている。そりゃ、装飾品売ってる工房というかお店、になるわけだしな。

 ブローチや髪飾りなどのアクセサリー、ドアノブや蝶番なんてものが並んでいる棚の間を入って、ドートンさんが声をかけた。


「おかみさーん」

「はい、いらっしゃーい。おや、ドートンちゃん」


 ガイザスさんの奥さんだろうね、地人族の女性が出てきた。こちらは青っぽいグレーのロングヘアを首元でまとめてて、いかにも肝っ玉母ちゃんタイプである。

 ベタなキャラだけど、こういったタイプの方が生活しやすいとかかな。山奥だから、食料とか大変だろうし。


「あのう、人前でちゃん付けは勘弁してくれませんかね。前から言ってるんすけど」

「旦那の弟子になったんだから、うちの子も同然だろ。うちの子にちゃん付けして何が悪い」


 ドートンさんが困ったように頼んでるけど、奥さんはピシャリと返してのけた。ドートンさんの長いしっぽがゆらん、ゆらんと揺れてるのは……多分、困ってるけど悪い気はしない、って感じかな。うちの子同然、って言ってもらってるんだし。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ