082.次は一体どこに行こう
「さて」
あまり難しいことを考えても、今はどうしようもない。何しろ俺は、今んところ神様としての力なんて何も持っちゃいないからな。
思い出せればいいんだろうけれど、それをできないようにってサブラナ・マールがやった結果が今の俺、だろうし。
「結局、配下を増やすしかないんだよなあ」
「そうですね。こちらの勢力を増やさないと、コータ様の御身に何かあったときに守りきれませんし」
「自分はおりますが、多勢に無勢ですから」
カーライルが頷いてくれて、シーラは自身の胸を叩いてみせる。ウサギ兄妹は神妙な顔をしてるし、ファルンもちょっと困った笑みを浮かべた。
なんだよねえ。たとえ俺が全盛期の能力を発揮できたとしても、ほぼ全世界が敵である現状じゃあ、勝てっこない。
なんというか、次は俺自身が偉い僧侶みたいに組み敷かれて終わり、とかそんなことにもなりかねないんだよね。うわあ、考えただけでぞっとする。ありえねえ。
それには、少なくとも配下を増やして対抗するしかない。マール教にバレる前に、できるだけ。
「そうなると、残りの四天王を探すしかないか」
「このソードバルでネレイデシア様を見つけられたのですから、他の方々も関連のある場所におられるのでしょうね」
そうなんだよね、ファルン。
だから、他の三人を探すために、彼らと関係する場所っていうのが、次の目的地になるわけか。
「獣王バングデスタ、翼王アルタイラ、そして龍王クァルード……だっけ。誰が一番近いかな」
「龍王クァルード様は龍人族の長、ということになりますね。そうすると……今活動している龍人族を探すのは、かなり骨が折れるかと」
カーライルに聞いてみるけれど、まず一番強そうなのが外された。そういえば、龍人は水の底だか山奥だかに封印されたとかなんとか、言ってたっけ。ヒントを探すだけでもめっちゃ苦労しそうだよな。
「となると、バングデスタかアルタイラか。シーラ、アムレク、ミンミカ、どっちの方が探しやすそうかな」
「ええと。バングデスタさまは、しんとサブラナちかくでソードバルじゃないゆうしゃとたたかってまけたので、たぶんたいへんです」
バングデスタは獣王、って言うくらいだから、ミンミカたち獣人の大昔のトップだったやつだろう。アルタイラは生まれ変わる前のシーラが実際に仕えてたみたいだし、だからこいつらに聞いてみるのが早いよな、と思った俺のカンは間違ってなかった。
さらりとミンミカが答えてくれた地名は、いやそれラスボスがいる場所っぽいだろというアレ。神都サブラナ、サブラナ・マールの名を冠した都の近くって、それだけのヒントでとても行けない場所だよ。
「アルタイラ様は、北の山地で封じられたと伝わっております。自分が育った村が近いので、もしかしたら」
「北?」
一方、シーラの証言。北の山地、彼女が育った村が近いということなら、そちらで情報が手に入るかもしれないな。山地、ならマール教の勢力もそんなにでかくは……ないといいな。少なくとも、神都サブラナよりはマシだろう。
てか、北?
「カーライル、地図」
「はっ」
出してくれ、と言わなくてもさっと取り出して広げてくれるのはほんと、ありがたい。良いやつだよなあカーライル、傍から見たらこいつのハーレムに近い状態になってるのはちょっと笑えるけど。
「ここですね。メイヒャーディナルの峠です」
広げられた地図の一部、北側の大陸の真ん中へん。本当に山の中にある一か所を、シーラは指差した。しかし、何その長い名前。
もしかして、もしかするか?
「この街の名前でなんとなく想像がつくと思いますが、アルタイラ様を倒した勇者の名前です」
「やっぱりかよ」
ネーミングセンス、あるのかないのか分かんねえな。マール教。人の名前だったり神の名前だったり、そのまま付けるんだもんなあ。
……昔は、アルニムアなんて街もあったのかな。あったとして、今はどうなっているんだろう。
ま、そんなことは置いといて。
「となると、神都サブラナをぐるっと迂回してそっち向かったほうがいいかな。翼の王ってくらいだから、仲間にできれば移動も少しは楽になるかも知れない」
「アルタイラ様は、コータ様の足代わりでもありましたから。ただ、この全員を運ぶのは無理かと思われます」
「無理かー」
ううむ、世の中うまくいかないものである。あとシーラ、ツッコミありがとうな。
ともかく、次の狙い目はアルタイラ、でいいか。




