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077.呼び名と口調は考えて

「あー、ところで」


 あんまり時間があるとは思えないので、手早く話を進めることにする。声をかけたらあわあわと全員こっち向いたので、サクサク行こう。


「多分覚えてると思うんだが、今はマール教全盛だ。俺がアルニムア・マーダであることがバレたら、全世界が敵に回る」

「そうでございますね。口惜しや」

「俺はまだ復活して間がないし、配下もこいつらとカーライル、アムレクだけだ。この状況でそんなことにはなりたくない」

「……はい」


 シーラと一緒で、ネレイデシアに復活する前の記憶がそのまま残っているのは大変にありがたい。俺復活した後、カーライルたち大変だったろうなあなんて思いながら事情説明。ネレイデシアは、おとなしくふんふんと聞いてくれている。


「なんで、今俺はコータ、という名を使ってる。今後はネレイデシア、お前もそう呼んでくれ」

「承知いたしました。……では、わたくしもこれまで使用していたレイダの名を、引き続き使いたく存じます」

「うん、それがいい」


 名前について、さっくり了解を得る。特にネレイデシアなんて、表で勇者ソードバルにやっつけられただの屋台のネタだのってなってるもんなあ。冗談でも、名前使えないわ。


「あと、外見がこんなな相手に様付けとか敬語とか使うと、怪しいんじゃないかって疑われるぞ」

「それは困りましたね……」


 これはまあ、うまく呼んでくれればいいんだけど。横にいる、ミンミカみたいに。


「ミンミカとおにいちゃんは、コータちゃまってよんでます」

「コータちゃま……わ、わたくしもそう呼んでよろしゅうございますかっ」

「あー、うん、いいけど」


 何で頬を染めて尋ねてくるかな、ネレイデシア……じゃなくてレイダ。

 やっぱりロリっ子スキーかお前、いや俺に害が及ばなければそれでいいんだけどさ。もしくはただの可愛いものスキーとか。

 まあ、それはともかく。口調……俺が一番偉いので敬語、ってのは分かるんだけどさ。


「表向きは、さっきまでのレイダの口調でいいんじゃないかな。かっこいいと俺は思ったし」

「はっ」


 あ、またタコ足ブワッと開いた。そんなに驚くなよ、あの姐さん口調嫌いじゃないんだよね。

 なのでちょっとワクワクしながら待っていると、レイダはめちゃくちゃ緊張した顔になって、それでも一言やってくれた。


「わ、わかったよ、コータちゃま……こ、これでよろしいですか?」

「俺が良いって言ってるんだから。やっぱりかっこいいな」

「はいぃっ!」


 だから、何でそこで声がひっくり返るんだ。落ち着けタコ姉ちゃん。




 ふと、ミンミカが耳をピンっと立てた。いや、元々たれ耳なんでそんなにピンとは行かないけど。


「コータちゃま、おもてにえいへいさん、きたです」

「マジか。早かったな」

「自分がちょっと派手にやらかしたから、でしょうか」


 かなりの割合で、シーラの自己申告どおりだとは思うけどな。場所が場所なんで、マール教も街もぴりぴりしてるだろうし。

 でまあ、俺たちはいいとして、問題は。


「レイダ、ひとまず逃げろ。ここの連中のボスなんだろ、責任問われるぞ」

「あ」


 そう。俺たち拉致って儀式やらかそうとした連中のボス、その実は俺の四天王の一人だったレイダだ。

 いずれにしろ、衛兵に追っかけられる理由としては何の問題もないというか、うっかり戦闘でもされたらえらいことになるわけで。街吹っ飛んでも知らんぞー……となったら大問題になりすぎる。

 よって、俺はレイダを逃がすという提案をした。逃げた後で衛兵たちがここにたどり着いたら、タコ女は逃げたって言えばいいからな。嘘はついてない。


「それもそうですわね。レイダ様、一度海に戻られてはいかがでしょう」

「むかしのおともだち、いるかもしれないですね」

「魚人族にも、マーダ教信者はいるはずですからね」


 ファルン、ミンミカ、そしてシーラの言葉にレイダは、「確かにそのとおりだね」と俺の好きな口調で頷いてくれた。おお、やればできるじゃねえか。


「それでは、お名残惜しいですがひとまずお暇いたします」

「うん、またな」

「はい。また」


 一度深く頭を下げてから、レイダは思いっきり床に拳を叩きつけた。って、ここ海だか水路だかの上だったのかよ、そりゃ生臭いよ。基礎部分にフジツボやら何やらいろいろ張り付いてるんだもんなあ!

 今度は俺のほうがあわあわしているうちに、海王はそのねっとりとした全身を水の中に踊り込ませた。ざぶん、という音とともに、あっという間に見えなくなる。


 またな、絶対。

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