表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/432

071.いまいち目的分からねえ

 連れてこられたのは、裏通りの奥の奥にある推定元飲み屋。中に入るとすぐバーカウンターっぽいものといくつかのテーブル席があって、でも長く使われていないのはひと目で分かった。カウンターもテーブルも、ホコリかぶってるしな。

 その店の奥に入ってすぐ、小さな部屋にファルンが押し込まれた。レイダが部屋の中を覗き込むようにして、声をかける。


「僧侶サマはこちらに入っておいてくださいな。おとなしくなさってたほうが、身のためですわよ」

「はい」

「ウサギと鳥はそっち。人質の二人は持っておいで」

「へーい」


 ミンミカとアムレク、それに剣を取られたシーラはファルンの入った部屋の隣。で、俺とカーライルはズノッブに担がれたまま、店の奥のおそらくは居住スペースだったちょっと広い部屋まで連れて行かれた。

 他の部屋は知らないけれど、この部屋にはソファとベッドがあった。俺とカーライルは、これまたちゃんと敷いてあったラグの上にぽいと放り出される。


「さて」


 ズノッブを脇に控えさせて、レイダがソファにどっかりと腰を下ろした。

 タコが偉いさんでイカがその側近だか部下だか……刺身で食ったら美味そうなんだけどなあ、とは頭の中だけで考えておく。特にズノッブことイカ兄ちゃん、よく見るとイカなんで白っぽい皮膚がうっすらと透けてたりしてさ、イカそうめんにしたらきっと絶品なんだろうな。

 ま、それは置いといて。


「なぜ、このようなことをするんだ?」

「もちろん、我らが神アルニムア・マーダ様のためよ」


 麻痺が落ち着いてきたらしいカーライルが、何とか上半身を起こしながら問う。それにレイダは、何というかやっぱりな、という答えをくれた。いや、俺のためって言われてもなあ。


「我らが神を貶めたサブラナ・マール、その下僕どもを生贄にすれば神はきっとお喜びになる。そうして、我らのもとに戻ってきてくださるわ」


 もう帰ってきてるけど。

 そんなこと言っても、ウソつけって返されるだろうから黙っていよう。あと、俺そんなもの捧げられて喜ばねえわ。生きてる女の子なら吸えるからいいけどさ。


「具体的に、策はあるのか?」

「ないわよ。マール教のせいで、この近辺からマーダ教の書物は綺麗になくなっちゃってるもの」


 ……てことはレイダ、タコ姉ちゃんのあんたよりカーライルの方が、マーダ教関連の知識はあるんじゃねえか? ま、カーライルがマーダ教の神官だってことも知らないわけだけど、こいつら。

 気づかないもんかねえ。そういうものなのかもな、ミンミカも気づかなかったし。


「お兄さんは、我らが神の好物だから取っといて差し上げたの」


 ふふん、と偉そうに笑いながらレイダは言う。

 そういや昔のアルニムア・マーダって、柔らかく言って男好きだったっけな。カーライルがこっちに持ってこられたのはそれでか。

 いや、俺は女の子のほうが好きなんだが。


 で、俺は何でこっちに連れてこられたんだ?


「では、この子はなぜ?」

「だって、ちっちゃい子は可愛いし」


 カーライルも同じことを考えたんだろう、質問したら答えがそれだった。しかも頬に両手あててうっとり、って。

 お前そっちかー! いや考えてみると俺もあんまり変わりないけど! いやいや俺は自分が外見ロリっ子なだけであって、おっぱいある方が好きっちゃ好きだけど!


「ダメです、コータちゃんは渡しません」

「あんたに選択の余地はないの」

「いきなり拉致っといて選択の余地も何もありませんよ。コータちゃんは渡しませんので」

「だから、あんたは今そういう立場じゃないの」


 すごく不毛な言い合いが始まってるんだが、これどうしよう。

 そんなふうに思ってズノッブに視線をちらっとやったら、ニヤニヤ俺の方見てやがる。あ、これやべえパターンかも。


「レイダ。俺にも分け前くれるはずだったろうが」

「ああ、そうだねえ。でも、この子は駄目だよ?」

「ふざけんな。俺の好みにぴったりだろうが!」


 やっぱりかー。

 いやもう、ピンチの時のイヤボーンに頼るには不確定要素すぎるし、さてどうするかなあ。

 てか、この二人しかいないのかね、ここ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ